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2024年4月の読書メーターまとめ

月音
読んだ本
6
読んだページ
1664ページ
感想・レビュー
6
ナイス
67ナイス

2024年4月に読んだ本
6

2024年4月にナイスが最も多かった感想・レビュー

月音
著者が散策で見つけた言葉と、詩人たちの言葉が響きあい、きらめく結晶となる。夜明けの光が射しそめたかのように眠っていた感覚が目覚め、静かな喜びに満たされてゆく。声も時間も白い光に包まれる雪の朝の森、氷の下に馬の蹄の音を封印した川、小鹿島の道とハンセン病の老女の歌、丘の庭園の桜の花影に集う傷ついた猫たち。ここでは、移ろいやすくとらえがたいゆえに美しいもの、小さく弱いもの、あらゆる場所の片隅で生きるものたちに、愛情と慈しみのまなざしが向けられる。ページを繰りながら、エミリ・ディキンスンとその詩を思った。⇒続
月音
2024/04/20 09:50

⇒著者自身も認めているが、二人の魂は似ている。心に、自分だけの草原を持つ人たち。今、私はその草原のクローバーの幾本かを手にしている。

が「ナイス!」と言っています。

2024年4月の感想・レビュー一覧
6

月音
収録の三作とも人妻が不倫の恋をし、思い悩んだ末に夫にすべてを告白、あるいは秘密のまま逢瀬を重ねて、その結果どうなったかが語られる。三角・四角関係のよくあるパターン、文章は説明文を読むようで、二流どころか三流といっていい。にもかかわらず、物語に引き込まれるのは、クレーヴ夫人の夫への貞節か、恋人への情熱かに懊悩する感情の機微が細やかであり、家の内外で抑圧される女性の自己解放など時代を越えた普遍的な問題もはらんでいるからか。⇒続
月音
2024/04/30 15:25

⇒主観的に見るなら、彼女の理性と情熱の相克は夫と恋人、自身に正直であろうとしてのことで、理解も共感もできる。ある意味、尊敬も。が、不倫の恋を夫に告げるのは賛成しかねる。無意識に罪悪感を減らそうとして夫に余計な重荷を負わせたわけで、クレーヴ公におおいに同情してしまった。

が「ナイス!」と言っています。
月音
『イリアス』は抄訳、古代悲劇はソポクレス一作を読んだ程度。それでも、様々な比較がされて面白い。大きな違いは、もはや人間の運命に神々の意思が関与しないことだ。『フェードル』は神からの呪い、神への祈願、それらの発動と神話的要素が見られるが、親世代が創造した無慈悲な神への心理的隷属こそが主人公夫妻の真の呪いという見方もできる。また、物語の劇的効果を高め、観客を作家が意図する解釈・感情へ誘導するコロス(合唱隊)もない。このため物語そのものから、登場人物それぞれの個性・役割など細部に目を向けやすくなった。⇒続
月音
2024/04/23 13:03

⇒過去の因果から起こる呪いと“ケガレ・清め”思考、戦死した夫への貞節、歌舞伎にあるような口説き、道行の誘いなど、フランス人より日本人になじみそう。女性の怖さ、ずるさ、浅慮が前面に出され、嫌悪より哀れを覚える。彼女たちは神々の権威から解放されても、なお地上の権力によって恋すらも支配されねばならないのだ。

が「ナイス!」と言っています。
月音
著者が散策で見つけた言葉と、詩人たちの言葉が響きあい、きらめく結晶となる。夜明けの光が射しそめたかのように眠っていた感覚が目覚め、静かな喜びに満たされてゆく。声も時間も白い光に包まれる雪の朝の森、氷の下に馬の蹄の音を封印した川、小鹿島の道とハンセン病の老女の歌、丘の庭園の桜の花影に集う傷ついた猫たち。ここでは、移ろいやすくとらえがたいゆえに美しいもの、小さく弱いもの、あらゆる場所の片隅で生きるものたちに、愛情と慈しみのまなざしが向けられる。ページを繰りながら、エミリ・ディキンスンとその詩を思った。⇒続
月音
2024/04/20 09:50

⇒著者自身も認めているが、二人の魂は似ている。心に、自分だけの草原を持つ人たち。今、私はその草原のクローバーの幾本かを手にしている。

が「ナイス!」と言っています。
月音
芥川の死の前年から直前までの評論、エッセイなどを収録。例の「唯ぼんやりした不安」の全文を初めて読む。この『或旧友へ送る手記』も他作品も、心身が衰弱していたとは信じられないくらい、理知の光に陰りはない。けれど、心はすでに彼岸へと歩を進めている。『歯車』『河童』などで見られた混迷と焦燥が『手記』では消え、冷静な自己分析はすがすがしさすら感じる。芭蕉、斎藤茂吉、イエス・キリスト…、彼が興味を持った人物はストイックに己の道を探求し、その道に存分に生きた。⇒続
月音
2024/04/17 13:41

⇒ただし、リスペクトはしても、誰かに思考を預けることはプライドが許さなかっただろうし、熱狂するより懐疑的である方を好んだだろう。天才的ジャーナリストとしてのキリストと、プロパガンダの一翼を担った人々を書いた『西方の人』はそうした意味で興味深い。『三つのなぜ』のソロモンとシバの女王の話は芥川と片山廣子のようだが、彼も彼女のように理知と狂熱がバランスよくあれば、あるいは『西方の神の子』を書いていたかもしれない。

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月音
小沼丹エッセイでの著者のエピソードがほのぼのでいいと先頃記したが、さて、こちらは?と手にした。著者が小沼に葉書を書くが、庭の草木のことばかり書くうちに余白がなくなった。投函してから、テッセンを植えて、それが紫の花だと書くべきだった、だって。もう、自然に頬がゆるむ。意外に舞台やテレビの撮影などルポ的文章があるが、正直、義務感だけで書いているかのようだ。やはり、著者が大切に思う人、物について書いてこそ、文章にぬくもりが宿る。確かな文学観の背景に、作家への敬慕があるのもいい。
が「ナイス!」と言っています。
月音
日本と中国が舞台の再話小品集。怪談、奇談を主に、日本は知恵・才覚に優れた者、愚直に己の信じる道を貫く者など、人物の性質や生き方がにじみでる話、中国は素朴で縹渺とした趣き、人を食った可笑しみなど物語の面白さが際立つものが多い。それぞれの国の民族性、時代の思考が現れ、著者の好み、研究が生かされている。思わずニヤリとしたのが、赤穂浪士討ち入りの朝、事件に盛り上がる武士たちの会話を書いた笑話。⇒続
月音
2024/04/04 09:59

⇒舞台は府内どこでもよさそうなところ、水戸邸の史館──つまり、のちの時代に尊王攘夷を旗印にする水戸学の牙城にした点が皮肉というか、芸が細かい。覚えのある話がちらほらあるが、原典を思い出せない。解説に、著者自身も忘れたものがあるとあった。博覧強記で聞こえた学者もキャパオーバーかと妙に安心しかけて、いや待て、原典なしでも執筆できるのだから、やはりその記憶力おそるべしである。

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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2022/05/17(725日経過)
記録初日
2022/05/01(741日経過)
読んだ本
187冊(1日平均0.25冊)
読んだページ
48158ページ(1日平均64ページ)
感想・レビュー
187件(投稿率100.0%)
本棚
14棚
性別
自己紹介

〇拙文を読んでくださり、ありがとうございます。

〇ナイスや登録してくださった方、コメントを下さった方にもお礼申し上げます。登録・削除はご自由にどうぞ。ご連絡なしで構いません。

〇タイムラインに情報があふれるとパニックになるので、申し訳ありませんがこちらからのお気に入り登録は基本的にしておりません。交流するのが嫌というわけではなく、コメントいただければとても嬉しく、間違いのご指摘も含めてお返事させていただきます。

〇“どれだけ”読んだかより、“何を”、“どのように”読んだかを大切に、「面白かった」だけではない気持ちを伝えられたらいいなと思います。

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