他人のものを盗むことさえ必要のなかった人間はむしろ不幸である。人は笑いながら人を殺すこともあるが、また泣きながら盗むこともあるのだから。

嵐寛寿郎「ゲイジュツ、関係おまへんのや。そらまあ、ベスト・テンやら賞をとる俳優さんがいて結構、ワテらのように娯楽専一、お客を喜こばせることに徹する役者もおらな、カツドウシャシンは成り立っていきまへん。」(竹中労『鞍馬天狗のおじさんは』)/ある日、その武田鉄矢とビールを呑みながら喋っていて、思いがけず山田洋次に関してほとんど同じ感想をもっているらしいことを発見したことがあった。それは、ひとことで言ってしまえば、「あの人の映画は、要するに洋画なんだよな」ということである。/若い野呂邦暢は、その剣幕に怖れをなし

僕らはみな固くて縁の鋭い角材のようなものだから、一緒に心地よく収まることができないのです。…誰か友人が混じって緩和してくれないかぎり、僕らが仲良くつきあっていくのは難しい。/閉じた窓から外を見ているから、通行人がどうして奇妙な動きをしているのか説明できないようなものだよ。外で嵐が吹き荒れているのに気づいていないから、通行人が必死にがんばって倒れないようにしているだけなのがわからないのさ。

世の中のあらん限りやスエコ笹