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2024年3月の読書メーターまとめ

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2024年3月に読んだ本
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2024年3月のお気に入られ登録
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2024年3月にナイスが最も多かった感想・レビュー

またの名
「まあ気楽に行け。失敗しても棒に振るのは、高々お前の人生だ」「人ごとだと思って」「実際、人ごとだしな」と古き教養主義的な放言対話を現代風にしたノリで、700頁を超える学習指南書。もちろん放言だけが延々と続くわけではなく独学を支える膨大なマトリクス作成や各種メソッドや心構えを、哲学者ドゥルーズですらが化け物過ぎて恐れたウンベルト・エーコの碩学を思い起こさせる物量で読者に叩き付ける。書かれた文章は辞書や文法通りの一義に定まらず、書き手の側に理解を寄せなければ読めないなど論破時代に重要過ぎる基本中の基本も強調。
またの名
2024/03/06 14:32

「より長く学ぶことは、それだけ長く自分の頭の悪さに直面し続けることだし、より深く学ぶことは、それだけ深く自分の間抜けさと向かい合うことだ。…才能の限界が見えようと、スランプに陥ろうと、若輩者がどんどん自分を抜いていこうと、病気や事故か何かでそれまで得たたくさんのものを失おうと、もうそれを学ぶことなしにはいられないから続けるんだ。コスパの勘定ができないからバカだし、繰り返しバカであることを自覚させられるから(謙遜抜きに)自画像的にもバカだろう。だが〈中級の壁〉を越えて、ずっと先まで行くのは、そういうバカだ」

山川欣伸(やまかわよしのぶ)
2024/03/28 13:57

書かれた文章は辞書や文法通りの一義に定まらず、書き手の側に理解を寄せなければ読めないなど、論破時代に重要な基本中の基本も強調されています。

が「ナイス!」と言っています。

2024年3月の感想・レビュー一覧
14

またの名
元祖ロリコン文学『ロリータ』から得るべき学びは少女に手を出すなという道徳ではなく自分が倒錯的快楽の他には全く無関心な主人公と同類だとの気づき、などと説く現代の禁止コードすれすれの結論でヘイトや虐殺や戦争に立ち向かう哲学者ローティの解説。公と私の二重性を抹消せず引き受けるアイロニーという姿勢を示す哲学者を作った原体験として、意識高い系を遥かに凌ぐ意識超高いトロツキー主義的な家庭に育ちながら「私的でちょっと変わったスノビッシュな、誰かに話すことのできない関心ごと」にも惹かれた葛藤を紹介。100分で名著の本気。
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またの名
タキシード仮面や犬夜叉など架空のキャラに海の向こうから片想いする青春を送った北欧オタク女子が、オタクの国で創作じゃなく実際に経験する恋愛エピソード漫画。家でだらだらネトフリを観る程度のデートが普通だし女性がお洒落も化粧もしない母国との差に戸惑いながらその根本に見つけた、十代の恋愛が異常に美化される日本の経済事情。歳を取ったら恋も結婚も現実的に考えてという常識が全く意味不明に聞こえる北欧女子の故郷において、経済力は国家の福祉が保障してくれるので恋愛結婚とは無関係。離婚も普通なため高齢まで恋愛し続けると報告。
またの名
2024/03/31 14:16

国家が人生を保障するという命題を採用した社会では、経済的制約を考える機会は無くなり、人生は性愛を含め死ぬまで自由にしたいことを追求するプロセスと化す。対して人生は自己責任で作るという命題を導入した社会では、常に経済的理由に制約されるのが人生だと観念され、そんな制約を気にせずに済むティーン学園時代が最高SSSランクの価値を付与される(青春を犠牲にした漫画家とかは永遠に劣等感を拗らせる)。著者が驚愕したセーラームーンや犬夜叉もまた主人公が中高生。ピンクの表紙からは想像できない欲望分析に、不意を突かれた悔しさ。

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またの名
テレポート装置や人工冬眠や空飛ぶ車の代わりに手にした未来は愚痴と炎上と大喜利を書き込む140字とかのスペースという、実現し損ねた夢と実現した悪夢の歴史書。心理学者スキナーが構想した刺激反応の連鎖から精神&身体を管理する環境設計と賭博産業が構築した遊び手から徹底的に個人データを収集する技術は新自由主義の下、依存状態の脳を量産するガチャゲーに著者の脳も侵食される事態を招く。家具を呼び掛け一つで動かす技術への人間身体の組み込み実用化が迫り、バーチャル美少女VTuberが肉体を脱した新プラトン主義的な世界を語る。
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またの名
公然猥褻罪で捕まった伝説のストリッパーの裁判に東大講師が証人として「彼女の生き方に感動した、私なんかより正直で人間的」と熱烈な文学的弁護を展開し、それを受け戦後を代表する哲学者は日本神話論まで著述。動きも激しく躍り多分美人とは言えないが、天照らす太陽が隠れ世に漂う不吉な空気を賑やかな丸出し脱衣ダンスの披露によって吹き飛ばした女神アメノウズメを、バフチンのカーニバル論も交え神話時代からこの国で他の原理とは別の力を及ぼし続けた原理と本書は見る。一つの系譜が絶対無謬化される時こちらの系譜は抑圧されてきたという。
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またの名
医師なのに作家ジッドやジョイスにブルトンや画家ダリとも若くして親交し、ピカソを診てたというドン引く程の行動力の化身。夢が表現する願望の重視ではなく例えば試験に合格した夢なら、なぜこの試験会場であって他ではないかの細部に願望こそが隠そうとする欲望を探るフロイトの洞察を、見逃さず再強調する精神分析家のイラスト多め解説。学生運動に靡かなかった点より運動参加者から支持され大学当局から排除された点に触れ、苦痛の反復で得られる享楽を言語と分けて考えていく変遷や父の名からサントームへの移行等も載せた、充分過ぎる情報量。
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またの名
見た目の外観だけがすべてに勝り永久に供給され消費される社会を、プロレタリア革命の古式ゆかしき語彙を用いつつ自分達も見るからに派手な文体で批判した運動の、書。商品が社会全体を完全に占領し商品同士の関係以外に何も見えなくなった世で、宗教的幻想は物質主義のやり方で再導入され労働者は、労働者には手の届かない最高クラスの生産の成果を遥か彼方のスターがスター自身も制御できないまま味わう見世物の続行のため労働する。訳が分からないことそれ自体が商品として流通し、偶像に跪く物神崇拝=フェチの宗教的絶頂の瞬間を擬似的に仮想。
またの名
2024/03/20 15:04

まず真っ先に置かれたフォルエルバッハからの引用が、とりわけ印象的だし核心的。「しかしもちろん我々の時代は…事象よりもイメージを、オリジナルよりもコピーを、現実性よりも表象を、本質よりも外観を好む…。それどころか現代人の眼の中では、ちょうど真理が減り幻想が増えるに比例して、神聖さが高まってゆく。そうして現代人にとっては、幻想の絶頂こそが、同時に聖なるものの絶頂ともなる」『キリスト教の本質』

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またの名
「だってひとりの相手を見つけるのにも大騒ぎしたり、彼氏いない歴〇〇年などというフレーズもよく囁かれる時代に、いったいどうしたら複数男性にモテるのだ!と、同性たちに反感を抱かれても仕方あるまい」みたいな感じで諸言説を斬ってく本書自身が、色恋沙汰を豊富に語り浮世離れしてそう。遊びに走るのが当然視されてきた男性と比べても女性に浮気を思い止まらせるような本性的気質なんか存在しない、という論旨を精力的に撒き散らすため奮迅してるのは理解できるけど、二十年後の目線では貞節不貞問わず恋愛がそんなに頻発してたのかすら疑問。
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またの名
チン音を奏でる電子レンジと犬種の狆が出会う詩を読み連想した「二つのチン」に脳内快楽物質が溢れ、独語でNeigeは傾斜だが仏語として見ると雪を意味する等と、日常言語の意味連鎖から脱け出し=exo言葉を眺め返す本。「わたしたちの無意識がどれほどこのような他人のそら似的な単語間の関係に支配されているかということは、フロイトの『夢判断』などを読めばよく分かる」。虫が何か知らせたり居所が悪かったり歯や腹に棲み着く日本語や著者が使いこなす独語の世界を少しズレた所から見るための方法は、別の世界つまり他言語からの見返し。
またの名
2024/03/15 15:01

ロシア出身の作家ナボコフが英語の慣用句「to cut a long story short手短に言えば」をちょっとだけイジり非母語話者らしい感覚で遊んでいた逸話を読み、動画で見た非英語ネイティブの哲学者ジジェクの話術を思い出す。ジジェクが討論中に無理矢理ねじ込んだ表現:「I'll try, if you are stupid enough to believe me, to be brief手短に、と私が言うのをあなたが信じるほど間抜けだとすればの話だが、述べてみましょう」

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またの名
「よく知られてる幼児向けアニメ『それいけ!アンパンマン』を素材に、異投射としての腐女子の妄想、虚投射としての腐女子の二次創作を分析してみましょう」と特級危険物をさもマイルドな一般向け事例かのように提示。単なるファン心理を越えた対象への没入を行う推し活動をプロジェクションという概念から説明するけど、心的表象を外部に投影する事象ならば古くから研究されてるので新しくない一方、映画『娼年』のベッドシーンで動きに合わせ上映空間に持ち込んだ楽器を打ち鳴らし狂喜するとかの行動の過剰さが目を引く。その分析が読みたかった。
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またの名
「世界中全部やると言われたら、そうする気なの?」「世界中と言ったら、ずいぶん大きゅうございますよ、そんなえらい御褒美が、わずかの罪で貰えるとなればね。…御大層な話ではございませんか、間男くらい、どこの誰が厭だと申しましょう、見す見す、亭主が王様になれるのでございますもの?」「そんな女はいないでしょうよ」「おりますとも、1ダースくらい、いいえ、それどころか、自分でいたずらをして手に入れた世界が、こしらえた子宝で一杯になってしまう、そのくらいたくさんおりますよ。でも、妻が堕落するのは夫のせいだと思います」
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またの名
夫を裏切って別の男に不倫する妻というメタファーにより聖書が説明する、真なる唯一の神から離れた偽の神への崇拝を禁止するロジックの研究。寝取られるのが絶許なので神は嫉妬深いなどの話もできるがそれ以外にも、哲学者や神学者ごとに様々な見解が提出され統一的ではない偶像idolを巡る議論を、タルムード注釈やベーコンにヴィトそしてニーチェまで召喚して検分。ユダヤ人からすればキリスト教徒もまた偶像に跪いてると見え、中世の博識マイモニデスからすれば「神は賢い」「神は慈悲深い」のような命題も偶像の崇拝になる、諸視点の競合。
またの名
2024/03/10 13:38

不貞なNTRの比喩はマルクスにおいて、貨幣崇拝を解剖する比喩として使われる。「貨幣は、その前では他のいかなる神も存在しないかもしれない嫉妬深いイスラエルの神である。貨幣は人類のあらゆる神々の品位を汚し、それらを商品に転換する。…それゆえ、貨幣は全世界から、自然はもとより人間世界からそれにふさわしい価値を奪った。貨幣は人間の労働と生活の疎外された本質であり、このよそよそしい本質は、人間がそれを崇拝するとき、人間を支配する」『ユダヤ人問題に寄せて』

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またの名
「彼女は八年ぶりにこれまでの心の重荷をおろした筈であるが、ものを言えばその言葉がみんな一つずつ小さな記号みたいなものに変形して、この(?)の記号や(!)の記号の形にかたまるような気がしていけない。そしてぱらぱらと霙のように幾つぶも、その記号を撒きちらしたような心持ちで、きっとその(!)の記号や(?)の記号は私の肩や胸に降りそそぎ、それは彼女が汽車で発ってしまってからも消えないかもしれない。けれど記号の霙を撒きちらしたわけは、彼女の胸の中にその記号の大きな母体が八年前から発生していたからだというのであった」
が「ナイス!」と言っています。
またの名
「まあ気楽に行け。失敗しても棒に振るのは、高々お前の人生だ」「人ごとだと思って」「実際、人ごとだしな」と古き教養主義的な放言対話を現代風にしたノリで、700頁を超える学習指南書。もちろん放言だけが延々と続くわけではなく独学を支える膨大なマトリクス作成や各種メソッドや心構えを、哲学者ドゥルーズですらが化け物過ぎて恐れたウンベルト・エーコの碩学を思い起こさせる物量で読者に叩き付ける。書かれた文章は辞書や文法通りの一義に定まらず、書き手の側に理解を寄せなければ読めないなど論破時代に重要過ぎる基本中の基本も強調。
またの名
2024/03/06 14:32

「より長く学ぶことは、それだけ長く自分の頭の悪さに直面し続けることだし、より深く学ぶことは、それだけ深く自分の間抜けさと向かい合うことだ。…才能の限界が見えようと、スランプに陥ろうと、若輩者がどんどん自分を抜いていこうと、病気や事故か何かでそれまで得たたくさんのものを失おうと、もうそれを学ぶことなしにはいられないから続けるんだ。コスパの勘定ができないからバカだし、繰り返しバカであることを自覚させられるから(謙遜抜きに)自画像的にもバカだろう。だが〈中級の壁〉を越えて、ずっと先まで行くのは、そういうバカだ」

山川欣伸(やまかわよしのぶ)
2024/03/28 13:57

書かれた文章は辞書や文法通りの一義に定まらず、書き手の側に理解を寄せなければ読めないなど、論破時代に重要な基本中の基本も強調されています。

が「ナイス!」と言っています。
またの名
急に出てきて助言する奴(人語をしゃべる鳥)のかなり古い原型バージョンが確認できたりする、神々と英雄の織り成す戦記および帰国譚を漫画化。自分が一番と互いにマウティングして譲らない三女神の象徴する性質のどれが最高かを人間の男に選ばせた結果、権力でも戦闘力でもなく美女の愛をチョイスし残った二神やら巻き込まれた他国の住民やらから沸き上がる嫉妬と怒りが戦乱を引き起こす、単純に聞いても立派なところが全くないけど最強の西洋古典になった物語。通しで見ると発端がしょうもないのに高潔な夫婦と親子の絆で終わり、美談にまとめる。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2012/11/18(4180日経過)
記録初日
2012/05/18(4364日経過)
読んだ本
2432冊(1日平均0.56冊)
読んだページ
689128ページ(1日平均157ページ)
感想・レビュー
1765件(投稿率72.6%)
本棚
27棚
現住所
東京都
自己紹介

「この画像をよく見てください。
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ここに投影されているのは、
最高度に純粋なファンタスムの原理、
すなわち、
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あらゆる思想家、哲学者、文学者、作家、芸術家、音楽家、映像監督、心理学者、分析家、批評家…
.
といった人々の、最も真実な願望なのです」

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