ハードボイルド文体というのか、短く事実と直感を切り取った文体が良い。「太陽は圧倒的だった」などの風景の描写がどれをとってもすてき。ムルソーは人を慮って思ってることをそのまま言わないが、それが全部裏目に出て、実はそれって私たちの生活のあるあるオブあるあるでとてもとてもハラハラした。最後の5ページくらい、覚醒した後にまくし立てるセリフが訳分からんけど迫真で圧巻のこの世界の真理。理論的には訳分からんけど魂の部分ではめっちゃ分かりました。川上未映子っぼくもあり遠野遥っぽくもある。順番逆か。

緻密すぎて一文ずつ何回も読み返さないといけなくて、ページ単位で何が起こってんのかわかんなかったんだけど、私頭悪いんかな

人の気持ちって推し量っただけでは分からないよね。直接聞くことってないし、っていうテーマだと思った。それをもし直接聞いてみたら・・というストーリーが多かった。話してみると「え？そこ？」っていうポイントで相手のことをめちゃめちゃに嫌っていたことが判明して、「いや、待って違うの、あの時のあれはそんなつもりじゃなかったの」と後から説明して見せたところで、人間の感情だけは不可逆で戻れない。人に対する印象を覆すのって無理そう。

『奥さん、犬は大丈夫だよね？』がとてもよかった。女性がちょっとずつめちゃくちゃして狂っていくのが面白かった。『本当の旅』も語調が軽くて一気読みした。

池澤夏樹さんの解説の「天使目線」という言葉が良かった。

太宰が女子学生のファンから受け取った手紙のリライトというけど、彼もまた女生徒と同じように永遠の思春期の中にいたように、親への反発も世間への反発も、きわめて彼に近しい感覚だったのでは。訥々と区切られた言葉のリズム、繰り返し、コロコロ変わる話題、唐突に出てくるハイカラな固有名詞が、とても思春期。とても中二。小説じゃないのに小説。今でもとても挑戦的。大人になってから読んだ方が見えることが多い。

ハードボイルド文体というのか、短く事実と直感を切り取った文体が良い。「太陽は圧倒的だった」などの風景の描写がどれをとってもすてき。ムルソーは人を慮って思ってることをそのまま言わないが、それが全部裏目に出て、実はそれって私たちの生活のあるあるオブあるあるでとてもとてもハラハラした。最後の5ページくらい、覚醒した後にまくし立てるセリフが訳分からんけど迫真で圧巻のこの世界の真理。理論的には訳分からんけど魂の部分ではめっちゃ分かりました。川上未映子っぼくもあり遠野遥っぽくもある。順番逆か。

相変わらず過去と現在が入り混じり、鮮やかな情景と哲学的な思考が入り混じり、記憶と事実が入り混じる。分からないものや考えても分からないことを浅いところで変に説明して終わりにするのではなく、分からないものを分からないまま置いておいてその複雑さを解かずにできる限りそのまま提示することのできる勇気と技量が本当に憧れの作家さん。

小説に関する自分の美学とかなり通じるところがあった。エンタメ小説の書き方講座にうんざりしていたので。良かったです。