未完なら未完と書いてほしい。帯で「幻の遺作」と煽っておいて、実際には断章が二つあるだけ。素直に読んだら二つは矛盾しているし、短編として相応に楽しめるわけでもない。思わせぶりなエピソードではあるものの、著者がどんな物語を描こうとしていたのか掴みきれない。物足りなさが残るだけ……。仮にこの本で初めて著者に触れたら、「安部公房」にろくなイメージを抱かないのでは？　ほとんどの版権を押さえているだろう老舗が、なぜこういう売り方をするのか疑問。むしろ若い世代に代表作を読んでもらえるよう、アピールしてもらいたいが……。

見慣れぬ固有名詞を滅多やたらにぶっ込んでくる。それでいてストーリー展開もすっ飛ばし気味なので、気を抜いてると何がなんだかわからなくなる。ぼーっと読んでた箇所が、実は重要な伏線だったことに気づかされたりする。一気読みができるほど暇じゃない人間には、なかなかにハードだった……。速読は許さん！　無知はお断り！と言わんばかりの態度に、むしろ惹かれてしまう。これに比べたら殊能センセーの「黒仏」なんて、十二分に親切だったりする。三重帝国といわれると「都市と都市」とか思い出すが、主人公の持つ権威と人柄が殺伐さを許さず。

未完なら未完と書いてほしい。帯で「幻の遺作」と煽っておいて、実際には断章が二つあるだけ。素直に読んだら二つは矛盾しているし、短編として相応に楽しめるわけでもない。思わせぶりなエピソードではあるものの、著者がどんな物語を描こうとしていたのか掴みきれない。物足りなさが残るだけ……。仮にこの本で初めて著者に触れたら、「安部公房」にろくなイメージを抱かないのでは？　ほとんどの版権を押さえているだろう老舗が、なぜこういう売り方をするのか疑問。むしろ若い世代に代表作を読んでもらえるよう、アピールしてもらいたいが……。

途中までは刺激的だったのだが、最後に語られるチクタクさんの目覚めちゃうきっかけがどうも……。序盤はジム・トンプソンばりのピカレスク・ロマンなのだが、回想の散りばめ方が秀逸なので飽きさせない。思わず読み返してしまう固有名詞をダラダラと積み重ねていくあたりも、いかにもロボットのモノローグらしいし、メリハリを利かせるアクセントになっている。まあ、イマイチ納得できない注釈があったり、ボタンズが２度だけボタンになるのも果たして原文どおりなのかどう……。とはいえ、持ち込んだ翻訳者と出版した竹書房には、感謝に耐えない。