読書メーター KADOKAWA Group

2024年4月の読書メーターまとめ

buchipanda3
読んだ本
11
読んだページ
3369ページ
感想・レビュー
11
ナイス
1615ナイス

2024年4月に読んだ本
11

2024年4月のお気に入り登録
2

  • もんらっしぇ
  • うさみん

2024年4月のお気に入られ登録
2

  • もんらっしぇ
  • うさみん

2024年4月にナイスが最も多かった感想・レビュー

buchipanda3
苦悶と覚悟に満ちた語りが読み手の心を揺さぶる。それは終わりのない問いのようで、しかし語りが終わる時、彼女は閉じられ、全ての希望も閉ざされるのではという憂慮に駆られた。それほど著者の気概を感じた作品。死が現実となると知った時、カレンは自分の中にある愛への信頼が揺らぐ。自分に唾を吐いた浮浪者の敵意の眼差しは実は自分の眼差しと同じと気付いたから。目の前の社会に属する自分の恥、母親として白人として人間としての恥、まがい物の愛。手探りでいい。ただ自分の本当の愛を取り戻そうとする。その姿に生きる意味と強靱さを感じた。
が「ナイス!」と言っています。

2024年4月の感想・レビュー一覧
11

buchipanda3
シェイクスピアの「テンペスト」をセゼールが翻案した作品。原作、評論も併録され読み応えがあった。原作は既読だったが、今回ネグリチュード(アフリカ黒人固有の文化風土意識)を念頭に再読してから本編へ。元々、プロスペローによる復讐劇の印象が強かったが、改めて読むとキャリバンとエアリアルの二人の隷属的な姿と台詞に目がいく。それこそがセゼールの視点。翻案作では、奪われていた彼ら自身の言葉で主張させる。さらに結末も違う。永続する植民地主義、科学主義への反抗。それにしても多様な切り口で解釈できる原作の奥深さにも感服した。
buchipanda3
2024/04/27 16:08

併録された評論では、「テンペスト」が脱植民地化の観点で議論されるようになった歴史の流れが語られる。大航海時代から始まった植民地主義はシェイクスピアの時代には英国でも高まり、原作で先住民の造形を為すキャリバンの存在はやがて時を経て非植民者の目線により注目を集めた。そして西洋的価値観となる古典の内部に入り込み、排除された文化風土を取り戻すために活用したことが印象的なものとして残る。また植民地化による父権制への転換に着目して、原作を植民者の女性と被植民者の女性の物語として捉えようとした評論も興味深い内容だった。

buchipanda3
2024/04/27 16:20

訂正、非植民者→被植民者でした。

が「ナイス!」と言っています。
buchipanda3
下巻はオッペンハイマーを失脚させるための聴聞会が主軸。戦後、水爆開発に反対した彼に冷戦ヒステリーが襲いかかる。ソ連の水爆独占という不安にかられた陣営が、彼の影響力を消すために徹底的に個の尊厳を破壊。その背景には両側の相性の悪さもあったが、悪意ある策略に閉口した。結果として彼は政治力を手放すが主義分断の象徴となる。本作は膨大な資料を元に緊迫した歴史の転換点の細部を描き出し、舞台に立った一人の学者の内面にある人間性の実像に深く切り込んでいた。それは善悪の区分ではなく、人間自身の姿を改めて見つめるためと思えた。
が「ナイス!」と言っています。
buchipanda3
ロスアラモスでの核開発が進む中、欧州戦線の終結が見えてきて、研究所内では核の日本投下への疑義が唱えられる。元々、ヒトラーに先んじて所有することが原動力で、学者らはその意義を失っていた。しかしオッペンハイマーは将来の戦争抑止を念頭に軍に異論を挟まず方針に従う。彼は戦況を知らなかったが、その事実は変わらない。核投下前の様々な人達の議論や日記から当時の米国の思惑が読み取れる。また投下後の所内の高揚から恐怖、その複雑な空気感が伝わってきた。戦後、核管理の案が理想通りにならない中、彼の周囲に危うさが近づく。次巻へ。
が「ナイス!」と言っています。
buchipanda3
表紙はロスアラモス研究所のID写真だそうだ。40歳頃だろうか。理論物理学者としての地位を確立して自信に満ちた風貌に見える。その聡明さから研究者として順風満帆な経路を辿った彼だが、それ故か自我形成や周囲との関係性で苦悩することもあった。興味深かったのは彼は理数のみならず哲学や文学にものめり込んだこと。彼の人間性の転換期をもたらしたのはプルーストの本だった。その成長は彼を自信へ導く。量子力学界隈の裏話も描かれるが、後半は政治思想面の影響に焦点が当てられる。それは後の彼への処遇を問う鍵となるのだと思う。次巻へ。
buchipanda3
2024/04/18 20:28

ケンブリッジに留学中、オッペンハイマーは友人たちとコルシカ島を旅行した。その際に彼はプルーストの「失われた時を求めて」を読む。このことを彼は人生最高の経験と語ったという。そして本の中の残酷さについて述べた一節を暗記していた。それについて本作の著者は、オッペンハイマーが「自分が他人に与えた苦しみに対して無関心であったことに気づいたため、この節を暗記したに違いない。それは、痛みを伴う内省であった」と記述している。オッペンハイマーはその一節を長い間、暗記していたのだそうだ。

が「ナイス!」と言っています。
buchipanda3
"力の信奉者"という章から始まる今回。いやあ新九郎、すっかり威厳が。龍王丸側(新九郎)と範満側、双方、互いに戦になる備えをしながら、相手の出方を窺う。ただ龍王の方は幕府の認証を受けており、外部勢力からの見限りや範満の病状と野心の迷いから範満陣営は無茶をし始める。結果としては新九郎の想定内か。龍王と竹若は相性が良さそう。昆虫談義、得意分野から相手の懐にに近づくとはやるな。そして龍王の己の弱さを偽らず、情勢を見て何とか平和裡に事を済ませようとする胆力は見事。次回は決着がつくようだが最後までジリジリと読めそう。
アーちゃん
2024/04/14 17:16

ここのところ登録&レビューは書いていないけれど、昨日購入して読みました。龍王丸がいかにもゆうきまさみさんらしいキャラで、跡目争いという生臭い内容の中唯一ほっとさせてくれますね。次巻も楽しみです。

buchipanda3
2024/04/15 20:07

アーちゃん、龍王丸のキャラ、いいですよね。皆が争うしかないと考えている時に、別な目線も持ち合わせている。仕方がないからと流されずに、取りあえず正直に言ってみる。伊都の子ですからね。ちゃんと当主としての資質がありそう。次巻以降、どんな姿を見せてくれるか楽しみです。

が「ナイス!」と言っています。
buchipanda3
吹きさらう風の下に広がる不毛の地。そこで照りつく陽の渇きに喘ぎながら無骨に生きる人々の姿を描いた短篇集。どれも短い話だが、余計な飾りのない実直な文章が朴訥な登場人物たちの存在感を研ぎ澄ませ、その者たちの叙情ある思いが胸に刻まれた。特に父親と息子が交わす愛憎の妙味が印象深い。山賊に身を落とし傷ついた息子を背負う老父、人殺しの罰に怯えた父親の末路、憎んだ父親と憎まれた息子の決着。騒擾の世、先の見えぬ日々に憂う中でも、いやだからこそあっけらかんと見せつける粗野な人間味ある欲望と家族への情感にリアルな生を感じた。
が「ナイス!」と言っています。
buchipanda3
ルルフォの小説を読み、その原風景となる1920年代のメキシコの歴史に興味が湧いたのでこちらを。当時、かの国では革命の混乱が続いていた。スペインからの独立後も列強から干渉される中、独裁政権が立つ。近代化は進むが貧富の差を助長し、民主制と農地改革を訴えて革命が起きる。政権は倒したが護憲派と農民派が対立し、指導者が幾度も交代。「ペドロ・パラモ」でも皮肉めいて描かれていた。やがて革命は実る。中でも西欧主義ではないメスティソ(混血)文化の施策が目を引く。抑圧と闘う姿や革命の影などを描いた壁画運動をもっと知りたい。
buchipanda3
2024/04/10 20:58

「ペドロ・パラモ」を改めて読むと、確かに多くの場面に革命の余波が描かれていた。現地の農民たちの革命に対する本当の事情、空気感が見えてくる。「どうして武装蜂起したんだ?。よその奴らもそうしたからさ」。「いまカランサ派の連中と組んでるんですよ。今度はオブレゴン将軍と一緒なんですよ。和睦なんぞ長く続くものか」。「神父はゲリラになっちまいましたよ。手を貸しますか?政府の側につくんだ。だけどおれたちゃ反乱軍。勝手にしろ」。神父が反乱に参加した背景も知れた。歴史の陰に見える人々の姿。ルルフォの作品をまた読もうと思う。

が「ナイス!」と言っています。
buchipanda3
苦悶と覚悟に満ちた語りが読み手の心を揺さぶる。それは終わりのない問いのようで、しかし語りが終わる時、彼女は閉じられ、全ての希望も閉ざされるのではという憂慮に駆られた。それほど著者の気概を感じた作品。死が現実となると知った時、カレンは自分の中にある愛への信頼が揺らぐ。自分に唾を吐いた浮浪者の敵意の眼差しは実は自分の眼差しと同じと気付いたから。目の前の社会に属する自分の恥、母親として白人として人間としての恥、まがい物の愛。手探りでいい。ただ自分の本当の愛を取り戻そうとする。その姿に生きる意味と強靱さを感じた。
が「ナイス!」と言っています。
buchipanda3
「科学は客観的なふりをしているが、しばしば人間の偏見にもとづいて形づくられる」。オーストリア出身の物理学者リーゼ・マイトナーの生涯を描いた伝記。彼女は核分裂の事象を初めて正しく解釈した研究者として知られる。その才は著名な学者達が認めるものだったが性別と人種の差別から地位も環境も不当に扱われてしまう。どこに行っても属していないと思わされる孤独、相手の都合で存在を否定される辛さ。それでも探究心を持ち続けた姿に感服。科学の行方と人間性、その関係を彼女の信念を交え考え、そして彼女の名が冠された元素に思いを馳せた。
buchipanda3
2024/04/05 22:19

先日読んだ「恐るべき緑」で語られたハイゼンベルクやハーバーも登場し、当時のドイツの研究所の盛況ぶりが分かる。本作では彼らの印象に違う面も見出すなど、人物像というのを掴むことの難しさを感じた。また別の本を読んで多面的な視点で捉えてみたい。

が「ナイス!」と言っています。
buchipanda3
写真家・安井仲治の作品集。モノクロームの世界が醸し出す雰囲気に惹き付けられた。かつて存在していた光景、現実ながら異世界のようで、それでいて見れば見るほど現実感の度合いが増してくる。そして現代の洗練され過ぎたものへの慣れからか、その裏表のない確かさに惹かれた。特に人物の写真は写っている人間の存在とその瞬間の空気が甦るかのよう。少女と犬の微笑み、猿廻しを囲む光景、夏の妻の生活、サーカスの女の現実と非現実の境目。生きるための憂いと過ぎ去りの愁いが重なる。資料では印画師の考察とネガから見えるもの等が興味深かった。
が「ナイス!」と言っています。
buchipanda3
量子力学、天体物理学、数論幾何学、合成化学、20世紀の科学の進展に寄与した学者達の数奇な人生を描いた小説。実名で功績も史実通りだがその人間性を露わにする挿話は主に創作語り。でもそれは実際にそうだったのではと思わせるほど緻密で、人の認識を超越した世界を見出した者の異色な価値観と奇矯な人物像が刺激的だった。波動関数、不確定性原理、既存の概念を解体し、違和感を乗り越える時の人間は不安と狂気に包まれる。女神カーリーの夢の解釈が印象的だ。超越に伴う破壊性、精神の特異点の不可知性への警鐘。ただ、探求は人の業でもある。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2013/11/25(3813日経過)
記録初日
2012/08/16(4279日経過)
読んだ本
2238冊(1日平均0.52冊)
読んだページ
621592ページ(1日平均145ページ)
感想・レビュー
2152件(投稿率96.2%)
本棚
63棚
性別
自己紹介

アイコン付けました(^^)。
一応ブチなパンダです。(2018.11.1)

ミステリや歴史ものが好みです。
最近は初読みの作家さんを増やすことと
読みたいジャンルを開拓することが
楽しみになっています(^^)。

参加コミュニティ1

読書メーターの
読書管理アプリ
日々の読書量を簡単に記録・管理できるアプリ版読書メーターです。
新たな本との出会いや読書仲間とのつながりが、読書をもっと楽しくします。
App StoreからダウンロードGogle Playで手に入れよう