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2024年4月の読書メーターまとめ

ファーラス
読んだ本
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3779ページ
感想・レビュー
11
ナイス
205ナイス

2024年4月に読んだ本
11

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2024年4月のお気に入られ登録
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2024年4月にナイスが最も多かった感想・レビュー

ファーラス
ミステリがと言うより、そうとうに小説が上手いと感じる冒頭。並の書き手はここまで解像度を上げて書けないし、ましてそれをノイズ化しない塩梅で物語化できない。これはすごい作家さんを見逃していたものだと喜んで読み進めるが、サスペンス色が強くなっていく中盤以降は技術もキャラクターも生彩を欠いていき、このミス大賞シリーズによくあるドタバタ狂気の凡作な感じに着地してしまう。犯人の妄想の雰囲気は印象に残って好きだが、実際の標的選びについて納得感は全くない。角田光代先生みたいな物語を書いた方が良さそうな作者。
ファーラス
2024/04/16 12:06

ややネタバレあり注意。 出だしは見事なのだが、冒頭過ぎてからの主人公のウジウジ具合に「好きになれない主人公」をまず感じておや?となる。そこから路悪趣味的にほとんどのキャラがろくでもないのがわかってくるのだが、その内容や明かし方がどれも効果的ではない。実はヤバイやつなんですが並ぶものの「その思考では物語時点まで真人間風に生きていられないだろう」「~の時点で~しているだろう」と感じる者がほとんどで、リアリティがない。呉先生や荻原先生の、カスとして社会に生き残れる説得力を持つ迫真のカスたちとそこが違う。

ファーラス
2024/04/16 13:47

また、叙述トリックは「読者が勝手に誤解しているもの」なわけだが、やはりそれは登場人物らとオーバーラップしていてほしい。『あの子の殺人計画』でも感じたが、「作者が、凝った構成によって読者を欺いている(登場人物らは何も騙されておらずただ真っ直ぐ進んであっさり真相に辿り着いている)」というのは、作家が自らのために苦し紛れに施している盤外の虚飾だ。「強烈にこっち(読者自身)を意識している」と感じるので。各どんでん返しもただの逆張り級で、納得感はない。主人公を狙う犯人の動機も、契機も経過も納得感はまったくない。

が「ナイス!」と言っています。

2024年4月の感想・レビュー一覧
11

ファーラス
再読。やはり面白い。ベテランの唐島と才気煥発テキトー天才肌な永見のコンビが贈る、ジャズ界~創作界隈を舞台にしたミステリ短編集。地味に進みがちな日常の謎モノにおいて、スポーティさもあるジャズの演奏・対決シーンを入れることで場面が引き締まり、アッパー感が加味されて良い。音楽ものは小説にされやすいが、「音楽を描写する言葉」については、自分が読んできた中では圧倒的一位であり、作家として一流の技を持ちジャズ奏者でもある作者の存在に感謝するところ。登場するキャラクター達も良く、作者の高い地力が鳴り響く傑作。
ファーラス
2024/04/26 14:39

二周目なので余談中心。トップバッターであり表題作でもある「落下する緑」は本作より十年以上後に出たペルソナ5の…まあ、ゲーム制作者も使いたくなるだろう。駄洒落に憑かれた作者だが、その駄洒落然とした言葉がストーリーに落とし込まれてる「虚言するピンク」も良い。各創作界隈の闇をスカッと暴くような短編集だが、「実は本作がデビュー作となるはずだった(が、東京創元から何故か放っておかれ、SFの道に進んだ)」という来歴遍歴もあわせて、こうもなるだろう。十数年を経てのシリーズ化となるが、罪深い回り道を強いたとしか感じない。

ファーラス
2024/04/26 14:55

若年時に『ピアノの森』『のだめカンタービレ』などを得てきた者として、ぼざろを除いて音楽ものの一本調子を感じる。野性系であれ悩み深き系であれ、感性キャラが強すぎる。本作の永見も感性系だが、推理解決役を担うことで「こいつはアホだが、常にハッとするような物事の本質を掴んでいる」説得力が生まれており、ただの作者贔屓な天稟付与を抜けている。また、本作の臨場感たっぷりな「『すごい』以上に『伝わってくる』」演奏シーンは、音楽人の言葉だからこその臨場感だ。音楽モノが話題になるたびに、これも読んでくれと言いたくなる作品。

が「ナイス!」と言っています。
ファーラス
再読。もっと書いて欲しかった作家。もう11年も前になる。連作短編集。やはり1篇『砂漠を走る船の道』は「ジャンル:デビュー作・短篇」の中では史上最高打点のクラスだなと。デビュー作にて直木賞ノミネートとなった宮内悠介『盤上の夜』に匹敵する。一方、再読すると2篇目以降の「何をドキドキしながら読めばいいか」のリードはイマイチに感じる。海外の創造を超える「常識」がそのままミステリという一冊のコンセプトは素晴しいのだが、どれも良くない意味で読み味が違うため、乗り出すのに心理的な苦労があるというか。再挑戦してほしい。
が「ナイス!」と言っています。
ファーラス
『化石少女』の続編。1000点だ。公開している小説登録では1200冊目だが、『猫の地球儀』と並べて1位か2位か悩むという所。他のS級にも差をつける特S級が来た。特S級と会える日がまた来るとは思っていなかった。生きていてよかった。書き続けている作家たちの中では、本邦でトップなのではないかと確信めいたものを感じさせる腕と試み。「青春・学園・ミステリ」は人気ジャンルで多かれど、そのエッセンスを200%果たしながら同時に新境地、だが一発芸ではない超高品質を実現している。同業者たちは絶対に広めたくない本だろう。
ファーラス
2024/04/17 02:14

前作『化石少女』は、ある意味、麻耶先生らしい諧謔に終始した一冊だった。貴族探偵の一作目、神様ゲームの一作目、ちょくちょく出るメルカトルのような、ミステリ文化に対する諧謔の軽い読み物シリーズ。ところがこの2作目では、そのエッセンスを持ちながら、伸ばしながら、大人気ジャンル「青春学園ミステリ」に正面から挑み、圧殺を計り、成功させている。このジャンルは新人賞でもよく見るが、本作と比べられればデビューを辞去するほどだろう。麻耶雄嵩先生は前進し続ける作家だが、ここまで研ぎ澄まされていたとは予想を遙かに超えていた。

ファーラス
2024/04/17 14:21

あと1冊出ないかな。出るでしょう。徳間書店という出版社も編集者も、これを前に「次」の話を持ちかけなければただの遺体であり、勝負をかけるはず。3冊でカタストロフまでやりきれば、もう時代に棹差し語り継がれる伝説的な作品になるのは間違いない。前作と合わせて、30分アニメとして1クール12話でいけないかな。で気をもたせて3冊目を劇場アニメでフィニッシュは普通に勝ち筋あって通る。正直、7月からアニメが始まる小市民シリーズよりもこちらの方が圧倒的に勝算は高い。とはいえ、心の底から広く知られたくない作品の一つ。

が「ナイス!」と言っています。
ファーラス
ミステリがと言うより、そうとうに小説が上手いと感じる冒頭。並の書き手はここまで解像度を上げて書けないし、ましてそれをノイズ化しない塩梅で物語化できない。これはすごい作家さんを見逃していたものだと喜んで読み進めるが、サスペンス色が強くなっていく中盤以降は技術もキャラクターも生彩を欠いていき、このミス大賞シリーズによくあるドタバタ狂気の凡作な感じに着地してしまう。犯人の妄想の雰囲気は印象に残って好きだが、実際の標的選びについて納得感は全くない。角田光代先生みたいな物語を書いた方が良さそうな作者。
ファーラス
2024/04/16 12:06

ややネタバレあり注意。 出だしは見事なのだが、冒頭過ぎてからの主人公のウジウジ具合に「好きになれない主人公」をまず感じておや?となる。そこから路悪趣味的にほとんどのキャラがろくでもないのがわかってくるのだが、その内容や明かし方がどれも効果的ではない。実はヤバイやつなんですが並ぶものの「その思考では物語時点まで真人間風に生きていられないだろう」「~の時点で~しているだろう」と感じる者がほとんどで、リアリティがない。呉先生や荻原先生の、カスとして社会に生き残れる説得力を持つ迫真のカスたちとそこが違う。

ファーラス
2024/04/16 13:47

また、叙述トリックは「読者が勝手に誤解しているもの」なわけだが、やはりそれは登場人物らとオーバーラップしていてほしい。『あの子の殺人計画』でも感じたが、「作者が、凝った構成によって読者を欺いている(登場人物らは何も騙されておらずただ真っ直ぐ進んであっさり真相に辿り着いている)」というのは、作家が自らのために苦し紛れに施している盤外の虚飾だ。「強烈にこっち(読者自身)を意識している」と感じるので。各どんでん返しもただの逆張り級で、納得感はない。主人公を狙う犯人の動機も、契機も経過も納得感はまったくない。

が「ナイス!」と言っています。
ファーラス
2021年刊行の短編集。この時代にまずノベルスで出してくれることが嬉しい。スマホもある令和に現れたメルカトル鮎。デビュー作(1993)の途中に現れ本名や来歴を明かされあっさり死んだという事実込みで美味しいヤツである。「密室荘」から生還(?)してるので何を言っても野暮、それも少し触れられて微笑。本作はもはや名手となった麻耶先生、どれも安心して読める。まるで書き手の未熟のようなご都合すら、書き手のミスのような自身のキャラブレすら、銘探偵には意味があるはず――事件が先か探偵が先か、まさに悪童作者による悪戯帖。
が「ナイス!」と言っています。
ファーラス
新旧の差を味わいたくて再読。当時20歳だった作者のデビュー作。最後まで読める文というだけで、エンタメとしてはかっこいい言葉で虚を突こうとして滑り続けている素人ラップのように低質だが、それが今では超絶技巧の作家であり、自分の最も好きな作家の一人なのだから面白い。この1作目を読んだ時点では、そんな未来が来るとはまさに予測不可能だった。30年にわたり常に前進する成長性が群を抜いている作家なので、いつの時代でも最新作から読むべき作家。つまり本作は作者にとっても大抵の読者にとっても読まれない方がいい。
ファーラス
2024/04/12 11:52

デビュー作は野心もヘイト創作も大いに結構だが、本作は逆張りというよりも可能性を捨てて低質な内輪ノリへと向かう本格ミステリへのヘイト創作である。いわゆる「お約束を、全部真逆にしたって成立する」を皮肉たっぷりに書いたのであるが、あくまで既存の(低質に向かう)ミステリの枠内でそれをしようとしたために読み物としてのつまらなさもトレスしてしまっている愚がある。今の氏がまったく同じ筋と舞台で書けば、この450頁もの小説は100頁に満たない短篇で「より面白く・切れ味よく・さらに痛烈に」仕上がるだろう。

ファーラス
2024/04/12 12:01

オタク語り。1993年刊行の作だが、翌年には京極夏彦『姑獲鳥の夏』が出ており、デビュー時点での筆力の差は赤面級である。だが、2023年で比べれば完全真逆のことが言える。この才能と努力、もてはやされたあぐらと評価されぬ不倶戴天の逆転劇は並の純文学どころではない。また、本作文庫版巻末には作者への「新本格としての各項目の採点」などという抱腹絶倒なものが残っているが、新本格なんてブランドこそクソくらえだと進み続けた氏だけが、その新本格作家たちの中で実質ただ一人生き残り、特A級の現役にあるという生き様が美しい。

が「ナイス!」と言っています。
ファーラス
いい加減読めと言われて。この作者は「美少女に唯一アクセスできる主人公」「無遠慮なエロ目線・ルッキズム」「時代錯誤な女性の人格」「みんなガラスハートな善人」…と私の苦手山盛りなのは『午前零時のサンドリヨン』『小説の神様』などで知っていて、敬遠していた。サンドリヨンのセルフリメイク的な本作もやはりそうで、ドぎつい…と思いながら読んでいたが、一つの工夫で道を見出したと思う。執筆の弱点や書かずに居られない業は、それ自体が有機的に機能するように内包させる…というのはベテランたちもやってきた手だ。過去一の作ではある。
ファーラス
2024/04/10 00:16

アイデア型に多くいる長編の論理が組めない作家は、連作短編集を書くといい。人間が書けない作家は、常識が異なるからという言い訳がたつ海外舞台の作品を書くといい。女子高生をいじめることだけが執筆の目的ならば、監獄実験を模した社会派を書けばいい…などなど、編集者のアドバイス一つで作家が飛翔することはままある。それは弱点克服を目指した時の成功率の低さ、投入する時間の膨大さを受けての転用だ。本作はまさにそれで、作者の少なくない問題点を一つの工夫でちゃんとエンタメにしている。持ち上げられすぎに思うが、進歩は確かである。

ファーラス
2024/04/10 01:41

趣味と仕事の区別がついていない甘い創作家に、区別をつけろと言うのではなく甘い趣味浸りのまま商品となる可能性の枠へ導くのが、値千金の編集者なのだろうな。ただ自分の好みを押し付け、何も書けもしないのに先生したがる哀しき凡俗たちとは、プロデュースにおける視座が違う。正直この作者が「ちゃんと書けている風に見える道」は思いついておらず、業界が何度も不自然に御輿に担ぐ今までの謎の力学からも変化無くあぐらをかくものだと思っていた。本作の方向性を示した仕掛け人たちの腕前は尊敬に値する。

が「ナイス!」と言っています。
ファーラス
残念。会話表現、話の構成、軸への意識が素人の作品。令和に山田悠介級がヒットするとは驚いた。そして思いついたままに溺れかけの息継ぎでつないでいくので、ホラー・サスペンス・ミステリが薄味のまま迷走し、どれも落第点。賢くない人の賢ぶりたさが勝っているので、山田悠介よりもネタ感がない。地理や不動産や社会慣例の知識も、実際に家を買おうとしたことがある読者たちに大きく劣っていると感じる。本業はネット系の人であり、テキストとストーリーで一流になることは無理であろう。もし読むならハードルを下げに下げてをおすすめする。
ファーラス
2024/04/09 00:29

こんなメモ書きどころか付箋のようなもので不動産ミステリだの家ミスだの言うのなら、すべてにおいて10倍以上の力を持ってひたすら家ミス家ホラ家サスをやってきた三津田信三先生から黒い焔が立ち登るだろう。あっちは表紙怖すぎるのがマジでよくないのだが。本作は出来損ないを売りにするMMRの、もっと都合がいいしかも出来損ないであり、MMRって案外ちゃんとやってくれてたんだなと思わされる発見がある。頭良さそうに見せたいキャラが出てくるが、全員が事実と推測の区別がつかないで「推理」し、なぜか全部事実なのでとにかくキツイ。

ファーラス
2024/04/09 00:56

・「ここからは僕の推測です。」そう言う直前までも全部推測しかない ・敷地面積いっぱいに増築は無理 ・単品の「え!?」「あ…」での改行が多すぎ。さすがに会話が下手 ・登場人物全員の論理が滅茶苦茶。そんな大層な計画をしていて「東京に転勤になったから」とか ・推しの子みたいに軸ブレして興味ない方面へ本筋が寄り道るツギハギ ・マイホームヒーローの宗教村編が本作より数年早く出ており、ちょっとこれは… と、非常に残念な出来。企画職が自信満々に自作して経営層からストップ食らう脚本に、質や構造が酷似していると感じた。

が「ナイス!」と言っています。
ファーラス
1965年の雑誌掲載が初出。文量のわりに書籍化は遅く1984年が書籍刊行の初。『点と線』『壁の眼』が当たるまでは元々歴史小説を書いていた筆者の、時代小説×社会派ミステリ。キャリアの総決算となるか半端なものとなるかで言えば後者に近い、まだ迷走が見える時期の作品。正直、科学捜査やそれを見越した隠蔽が一切ないと言える江戸時代・岡っ引きのミステリで350頁級は間が持たない。現代なら短篇で刊行される事件だろう。ただ、筆者が現代物で捨て置いたキャラ性に対し、岡っ引きたちのキャラ性は色気と人情味があふれ読み進めやすい。
が「ナイス!」と言っています。
ファーラス
1962年の雑誌連載が初出。しかしこの文量にもかかわらず書籍刊行は1981年が初出と間が空いている。1958年に社会派ミステリの代表作『点と線』が出ており、1959年の乱歩・清張共編の『推理小説作法』では乱歩によって社会派の強さが恐々と語られているので、清張が大清張となる上り坂を駆け上がっていた頃の作品。…だが、書籍まで空いていることが示すように、生彩を書く内容。清張は定期的に当たりを出すものの、実は自身に課せられた「社会派ミステリは何が求められているか」という解答へは真っ直ぐと進まず、迷いが続く。続
ファーラス
2024/04/05 21:25

いわゆる社会や人間性から切り離されたロジックパズルの「本格」、そのカウンターパートとして現れた「社会派」の切り口だが、黎明期の社会派は、現代の社会派とは異なっておりあまりに乾いている。初期の清張が社会派と信じたものは「社会の中で事件が起きる」「社会に対し批判的な目線がある」だけであり、本格が擁立していた「キャラクター性」までオミットしてしまっている。本作の主人公となる刑事二人は社会派小説でありながら社会に生きる人間とは見えないほどの無味乾燥具合で、はっきり言って読んでいて面白くない。

ファーラス
2024/04/05 23:07

振り返れば、1960年代に社会派を大きく引き継ぐ山崎豊子の『白い巨塔』も、清張晩年の作となる『黒革の手帖』も、強烈な主人公のキャラクターがある悪漢小説である。結局の所、本格も社会派も「キャラクターは捨てられない」という、後のキャラクター小説の核心へと迫る。

が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2009/12/12(5255日経過)
記録初日
2009/11/22(5275日経過)
読んだ本
1202冊(1日平均0.23冊)
読んだページ
421840ページ(1日平均79ページ)
感想・レビュー
1042件(投稿率86.7%)
本棚
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自己紹介

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