家族がそれぞれに新しい環境に変わり、寂しく思う暇もなく日捲りも瞬く間に4月。怒涛のように過ぎていった3月でした。読むペースは相変わらず遅いですがマイペースで今年度もやっていきます。唯一のんびりしていた写真のこの子…猫一匹でした。https://bookmeter.com/users/527652/summary/monthly/2024/3
「幻覚は多分、十二歳で両親を失ったことで満たされなかったものの充填を求めていたわけだが、意識の上では、そのような飢えはあまりないつもりだった。しかし、あの二人に逢っている間の慰撫されているような快感を思い返すと、その種の情愛を意識下で強く求めていたことになる。」
主人公が両親の使った箸をそっとしまうのがよかった。確かに其処にいた証を留めておきたい思いが伝わってきて。後半ホラー展開なのに切ないラスト、楽しみました。
とはいえ前回の「食器棚めぐり」では影響を大いに受けました。我が家の樺の木の低い水屋箪笥には漫画を収納していたけれど(!)著者の小さな食器棚の「お酒を飲む為のグラスを収納」に感化され、漫画を全て追い出しました。綺麗に磨いて「さてここに洋酒とバカラのオールドファッションとリーデルのワイングラスを少しずつ買い集めて入れて…」と夢想ばかりして未だに棚は空っぽのまま(笑)。それでも空間というものには無限の夢が広がります。本好きの本棚にも同じ事が云えますが…。
85「あなたは誰ですか。今から百年後にわたしの詩を読んでいるあなたは。この豊かな春の富から花一輪も、彼方の雲に浮かぶ一筋の金色の輝きも、わたしはあなたに贈ることができません。─あなたの扉を開いて外を見てください。花の咲き匂うあなたの庭から、百年前に消えさった花々の香り高い記憶を集めてください。かつて生きる喜びが春の朝をうたった、その声が、百年の時を超えてあなたに届いて、あなたが心の喜びのままに感じ取ってくださいますように。」
何を言いたいかというと住まいは主人の内面を投影してるのかと思ったこと。外観と内面。肉体を酷使し鍛えあげ常に脆弱な精神を遠ざけようとしていた彼の憧れは健全で清らかなアポローンであり、しかし真の姿は病弱さを嫌悪し過去の自分のコンプレックスと常に対峙しなければならなかった。老いて落ちぶれていく本多の姿と重なる。書斎はかなり見応えがあった。全てを見ることはかなわなかったが。
しかしながら同時にビル・エヴァンスの音楽の軌跡に触れその魅力も再確認できる一冊。マイルス・デイヴィスとのバンド、そしてファースト・トリオ。ヴィレッジヴァンガードでの演奏…インプロヴィゼーション(即興)はその最たる要素だが、クラシックを踏襲し基本が習熟されているからこそできる発見の喜び、セッションの高揚感、敢えて譜面を外し「ジャズに間違った音はない」という見解を毎晩彼と演奏しながら会得するという悦び等々に満ち溢れていた。朝に夕に聴くヘヴィーリスナー。褪せない魅力はいつも無限に広がる。
前作「犬の力」はエンタメ性が強かったが、今回は社会性に富んでいて作者のメッセージ性が色濃く出ていたように思う。戦争や紛争、カルテルの勢力争いが結果夥しい数の殺戮、カルテルとは無関係の、何の罪もない多くの市井の人々が犠牲になった事は現実味を帯びていて中南米のみならず世界中で今もなお終わらない深刻な問題として暗く投影されていた。上巻の冒頭の謝辞にあった数多くのジャーナリスト達の名前にも挙げずにはいられなかった作者の思念と意図が読み取れる。
カルテルは器やその中身を変えながら決して失くなることはなく存在し続ける。読み終えてしばらく放心状態だった。哀しみなのか怒りなのかはっきりしない涙が出た。あまりにも沢山の人を喪ったのだ。命を喪った人、大切な誰かを喪った人、そして自身の心を喪った人…少年のように。退行していった心身が痛ましい。もう戻ることはないであろうと悟りながら、それでも祈るしかない。
先生がこれからもBL小説書きますよ!と言ってくれてうれしい限り。一穂ミチさんも榎田尤利さんもそして凪良さんも一般文芸も本当に優れた作品を出しているけれどやっぱり腐女子としては時々は萌えの燃料が欲しいのだ(笑)。過去の未読を少しずつ手にしてみます。本書を参考にしながら。
丁寧に読む。感想もきちんと。
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…デュボネと読みます。
…乱読です。コミックから純文学まで。
…時々BLも読みます、ご注意下さいませ。18禁あり未成年の方からの登録はご遠慮願います。
…好きな本の感じ方や選書の傾向が似ている方を中心にフォローしています。読書を心から楽しんでいる、そんな読者さんを追いかけたいです。
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なるべく投稿もコメントもチェックしたい考えですが、忙しいとまめではありません。他意はありません。
…当たり前のことなのですがお気に入りに登録するのは「ちゃんと読書している方」です。何やら一方的なつぶやきばかりの方、どうもちゃんと読まれてない方、先方からの登録にもかかわらず交流を持たない方、感想を更新されない方の登録の見直しも少し考えてます。
…皆さんの感想を読むのも愉しみのひとつ。
…メロウな外面(温かく落ち着いた交流のできる大人な方)で気合いの読書をしている方が好きです。
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…仕事上読む本はカウントしておりません。
…感想の流用、転載お断りします。
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おかだんさん、地元ならばより一層楽しめる内容かと思います。郷土愛半端ないですから。すぐに借りることができてラッキーでした。感想楽しみにしています。
dubonnetさんありがとうございます。大賞取った事も相まって書店でお祭り騒ぎです。読んでみようと思います。