名物も食べず行き当たりばったりで肩の力の抜けた旅。というか散歩の延長。沢山詰め込まねばとか言ったからには元を取らなきゃとか、そういうのは無し。これならできるかなという感じがする。個人的には我が故郷浜松では不親切な目に遭われたようで失礼しましたと苦笑。

きれいごともお説教もなく、不都合もやるせなさもそのままある、誰かの人生の隣を通り過ぎるような心地よさ。

映像が眼に浮かぶ文章。そのせいか、映画にしてみてみたいなと思った。キメラの数々。そしてあの少女の姿と鳴き声。あのシーンは文字から立ち上がるように私の目と耳に届いたよ。

主人公は言わずもがな、心がイカツイキャラクターばかりで、読むのに少々難儀しました。レイモンド・チャンドラーの強くなければ生きられない、優しくなければ生きていくのに値しない、のフレーズをリフレインしながらページを繰りました。

往復書簡、というとバシッとミットにキマるキャッチボールのイメージだが、本書は少し違って、ブレイディさんが腕をぐるぐる回して投げたボールが少しそれ、谷川さんがヒョぅっと投げたボールが足元に転がってヨテヨテと進み、そうして二人の投手が相手のボールに駆け寄りながら、位置を変え腰を落としたりジャンプしたり。何だかそんな光景の往復書簡なのである。

名物も食べず行き当たりばったりで肩の力の抜けた旅。というか散歩の延長。沢山詰め込まねばとか言ったからには元を取らなきゃとか、そういうのは無し。これならできるかなという感じがする。個人的には我が故郷浜松では不親切な目に遭われたようで失礼しましたと苦笑。

「縁食」という概念が面白かった。ドライに距離感を保ったまま人と人が同じ場所同じ時間に同席してものを食らう自由。関西のお店も紹介されていたらもっと嬉しかったな。

常に死を学べ、というセネカの教え。長く生きるのではなく、満たされて生きよ、そしてその為には、一日一日を「人生最後の日」(であっても後悔しないように生き尽くせ)と考えよという助言。これもまた禅の「一瞬を生きよ」、武士道の「死ぬことと見つけたり」に通じるものを感じた。