常日頃感じていた日本社会への違和感の正体が明確に示されており、非常に共感を覚えた。客観性や数値が重要視される現代社会では、人間は個別性を消され序列化され、有用性・経済性で価値が測られる。そうした中で容易に排除されるのが弱者なのだが、筆者はその打開策として個別の経験の尊重・ケアを軸とした小コミュニティによるボトムアップを提案する。思うにそれを実現するには、国家目線で弱者に厳しく当たるマジョリティの意識改革こそが必要不可欠であり、そこが現代日本社会において最も困難な高いハードルであると哀しくも思う次第である。

常日頃感じていた日本社会への違和感の正体が明確に示されており、非常に共感を覚えた。客観性や数値が重要視される現代社会では、人間は個別性を消され序列化され、有用性・経済性で価値が測られる。そうした中で容易に排除されるのが弱者なのだが、筆者はその打開策として個別の経験の尊重・ケアを軸とした小コミュニティによるボトムアップを提案する。思うにそれを実現するには、国家目線で弱者に厳しく当たるマジョリティの意識改革こそが必要不可欠であり、そこが現代日本社会において最も困難な高いハードルであると哀しくも思う次第である。

芝居好きのわりに今まで本書を読んでこなかったという片手落ち。さすがの名作、そしてさすがの難解さ。いや難解だと思ってしまうことが既に「意味という病」に取り憑かれている証拠である。時間の連続性や言葉の確実性、存在の実体性を信じて疑わない人間たちに、そんなものはないのだという事実を突きつける、意味を徹底的に解体したところに生まれる喜悲劇(おかしみと哀しみ)。そして確実なのは、ゴドー(God)を待ち続けるという行為のみであるという、これまた終わりを目的化しない不条理。あらゆる意味で革新的な切り込みを見せた戯曲。

映画『マイフェアレディ』の原作と聞いて、あまり気乗りせず読み始めたのだが、映画とは結末が全く真逆であったので愉快痛快！厳然たる階級社会がもたらす人間および人間関係の歪みや複雑さもさることながら、愛・結婚・家族についての男女の認識のズレなども「まさに！」と思いつつ面白く読んだ。芝居後の後日譚として書かれた部分がまた面白く、ヒギンスの独身主義は完璧な母親ゆえであるという話や、イライザがヒギンスと結婚しない(であろう)ことは必然であるという分析等が、自身の経験に照らして眺めると、ことさらに興味深い。

ただ餌を得て生き延びることだけを目的とする生の虚しさ。生きることのさらなる高みをフィジカルに追求するジョナサンは、やがて肉体や時空を超えた究極の何かに昇華されてゆく。それは通俗的に言えば、悟りということになるかもしれない。まるでキリストやブッダの軌跡を目の当たりにするような物語ー特に後に加えられたPart Fourは、極めて現代的な問題提起を感じるーは、今我々が世界とどう対峙すべきかを考えるきっかけを与えてくれる。肉体を持って地球に生きる我々のあるべき方向性を、いま一度見直してみたいと思う一冊である。