2024年このミス国内第8位。 大御所ミステリー作家の遺稿を探す物語である。ひどく叙情的な語りが新鮮である。 『世界でいちばん透きとおった物語』という 遺構を探す僕の行動を通して　知らなかった父の想いが明らかになっていく… 編集者の霧子さんとのコンビが 頼もしい、軽妙な筆致の物語だった。

僕と怪しげな友との日々を描いた短編集である。どの作品にも僕の断面が盛り込まれており、面白い。理屈ぽくて　少し面倒な僕が 青春らしく愛おしく読める、そんな作品だった。

レーエンデの聖母と呼ばれたユリアと 射手トリスタンの物語である。 ユリアの父も含め、国を愛する気持ちが 心地良い。 定番だが、国のために生きた人々の 恋と冒険の王道ファンタジーだった。

十八歳と八歳の姉妹の成長の物語である。 親元から独立して　二人で暮らす水車小屋の 風景がのどかに描かれる。 1981年から2021年までの日々を 10年単位で描く。ネネを介して、 成長していく日々を温かく描いた 作品だった。

版画家森真希と僕の物語である。 僕の君への語らいで物語は進む… 異次元へのトリップが静かに語られる。 君しかいない世界での風景はどこか 映像的だが、長編では少し辛い。 正直よくわからないまま　終わってしまった、そんな印象の作品だった。

四谷怪談を基盤に著者独自の脚色を入れた 作品である。お岩と伊右衛門の人物造形が 面白い。 四谷怪談とは全く別の展開ではあるが、 ある意味著者らしい絢爛たる魍魎の世界を 楽しめる。やや伊右衛門のキャラが 弱いのが残念だが、漆黒の闇が染み渡る… 新四谷怪談作品だった。

沖縄の伝承文学とも言うべき内容だが、あまりに長すぎて　正直入り込めなかった。武志と ピシャーマの交流は微笑ましいが、それだけであった。 豚との交流も含めて、一体何を読まされているのかという印象が強い。 老婆三代に渡る長寿の島での会話だけが微笑ましい…よくわからない物語だった

喜知次という魚に似た義妹　花哉と 小次郎の物語である。 藩の将来を憂える若者たちの心根が清冽で心地よい。武士としての生き方への苦悩と 喜知次への想いが　小次郎の成長とともに 描かれる。やや強引な辻褄合わせが気になるが、清冽さが印象的な時代小説だった。

江戸を題材にした短編集である。 表題作は　遠山の金さんの落とし胤の英助の 物語で　ホンノリとあたたかい。 表題作ほか、葛飾北斎の娘などを題材に、 江戸の文化を情緒豊かに描く… やや著名人との関わりが薄く、強引な 感じもするが、江戸の雰囲気満載の 作品集だった。

2024年このミス国内第8位。 大御所ミステリー作家の遺稿を探す物語である。ひどく叙情的な語りが新鮮である。 『世界でいちばん透きとおった物語』という 遺構を探す僕の行動を通して　知らなかった父の想いが明らかになっていく… 編集者の霧子さんとのコンビが 頼もしい、軽妙な筆致の物語だった。

下巻に入っても、金俊平の凶暴な生き方は続く。凄まじいばかりの暴力と自己中心的 生き方は　破壊的に周りの全てを壊していく。 金と酒と暴力に生きた金俊平の姿は 昭和の在日朝鮮人たちの底辺を描いたものなのだろうか？その影に生きた英姫などの儚い人生が心に残る、そんな印象の作品だった。