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2024年3月の読書メーターまとめ

Koji
読んだ本
5
読んだページ
1304ページ
感想・レビュー
5
ナイス
327ナイス

2024年3月に読んだ本
5

2024年3月のお気に入られ登録
4

  • 碧
  • ふくとみん
  • マイキー
  • 毒兎真暗ミサ【副長】

2024年3月にナイスが最も多かった感想・レビュー

Koji
もみじの古木にすみれが芽吹く春。その二株が運命に引かれ出会う夏の宵山。北山杉の幹まで照らす雷光に心根も晒される秋の夕立ち。妹の背を見送る姉の前髪に宿る粉雪が夜明けに消える。色鮮やかに流れゆく京の四季を、全編を通じて美しい京言葉が彩る。姉の凛とした静けさ、妹のしなやかな溌剌さが情緒たっぷりに響き合い、二人を取り巻く人々の和音が心地よく重なる。川端の文体はとても映像的で且つ、音楽的だ。昔が懐かしいのは今が寂しいからだろうか。その切なさが五感を研ぐ。どんな花でも、見る場所と時によって胸にしみることがあるように。
が「ナイス!」と言っています。

2024年3月にナイスが最も多かったつぶやき

Koji

春は、始まりの季節であり別れの季節でもある。11年一緒に過ごした愛犬を昨日見送った。彼のいないリビング。桜の便りを耳にしても心は濡れたままだ。いつもいた場所に、行ってくるねと声をかける。新しい生活のドアを開ける。鞄に本を携えて。   2023年の読書メーター 読んだ本の数:109冊 読んだページ数:33550ページ ナイス数:6633ナイス ★去年に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/635804/summary/yearly

jam
2024/03/22 07:35

物言わぬ生命の愛おしさ。今年もまた春が巡りますね。

Koji
2024/03/22 09:36

jamさん、ありがとうございます。儚いがゆえに心の中にとどまるのでしょうね。

が「ナイス!」と言っています。

2024年3月の感想・レビュー一覧
5

Koji
町中華で思う。熱々を頬張る醍醐味に劣らず、食べ進めるにつれ深まる炒飯の、冷めた米の外側と温かい内側のコントラストはこの作品みたいだ。心疾しさに別れの予感を揺らしつつ、離れがたい二人の距離が絶妙である。国境を越え殻を脱ぎ捨てるようにつなぐ逢瀬は、雪催いの温泉から立ち昇る湯気のように甘く刹那で、輝く積雪と青い葱、澄み深まる空と淡い日向、虚しい徒労と遠い憧憬の間を物語が行き来する。凛とした三味線の音色が雪山に響き、燃え盛る炎に天の川が降る。抜いた襟から覗く仄かに上気した肌の孤独が、僕の胸の底に白く沈む。
MsGorico
2024/03/29 13:10

町中華と雪国。なかなか思いつかない連想ですね(笑) Kojiさんの感想はいつも素敵でため息が出ます。

Koji
2024/03/29 18:36

MsGoricoさん、ありがとうございます。何かしている時にふと既視感に襲われて、はてこの感じはどの体験だったかなと本や映画や友人との会話の記憶を探ることがままあり、今回は炒飯を味わいながら『雪国』に行きつきました(笑)

が「ナイス!」と言っています。
Koji
戦後間もない日本では、シベが争いなく張り詰めて盛り上がるひまわりのように、家は整って静かであることが美徳とされていた。長年連れ添った妻への労わりの気持ちに偽りはない。しかし主人公はずっと妻の姉の美貌に囚われていた。息子の美しい妻により揺り起こされる既に亡き人への密かなときめき。そこに降り落ちる戦争未亡人が宿す命と、夫婦の関係性で失われる命の明暗。渡世で身を崩す義息から届く離縁状の痛みと、運命に抗い強く生きる女の哀しみが胸を揺さぶる。主人公の老いが進むほど大きくなる、新しい自由と責任の、時代の足音が切ない。
が「ナイス!」と言っています。
Koji
華やかな振袖の肩や袂が、障子に映る若葉の影に瑞々しい。娘らしい所作。桃色の縮緬に白の千羽鶴が舞う風呂敷の令嬢は純潔の表象だ。一方、白く深い手触りが茶碗を思わせる艶やかな母と娘。肩を抱けば背筋が揺らめいて息が細まる。ゆるく甘い匂い。紅葉の濃い影が髪に落ちる。誘う目の色は濡れ、夢心地の波に揺れ、安らいだ瞳には女の気だるさが残る。畏れとも歓びとも知れぬ胸の慄き。すべてを柔らかく赦す涙。愛なのか罪なのか、僕らが主人公らと渡る浅瀬は冷たくて温かい。読後、手の中にある本書が茶の名器のように愛しく思えてくる。
が「ナイス!」と言っています。
Koji
つづら折りの険しい山道を峻烈に白く染め上げる雨足。生気のない水死体のような峠の茶屋の爺さん。踊り子たちを追うトンネルでは冷たい雫が滴り落ちる。トーンの粗い湿っぽさに満ちて物語は幕を開ける。僕の心情や内向きの主人公を示唆するように。宴席の太鼓の音が途絶えると嫉妬の妄想に駆られる若さが初々しい。小春日和の南伊豆で、自虐の息苦しい憂鬱が晩秋の空に薄らいでいく。下田の別れ。踊り子との邂逅で彼の頭の濁り水が澄み涙になってぽろぽろ溢れ、波高い相模灘に揺れる。青春の清々しい成長譚に僕の日常も遠い悔恨も洗われるようだ。
が「ナイス!」と言っています。
Koji
もみじの古木にすみれが芽吹く春。その二株が運命に引かれ出会う夏の宵山。北山杉の幹まで照らす雷光に心根も晒される秋の夕立ち。妹の背を見送る姉の前髪に宿る粉雪が夜明けに消える。色鮮やかに流れゆく京の四季を、全編を通じて美しい京言葉が彩る。姉の凛とした静けさ、妹のしなやかな溌剌さが情緒たっぷりに響き合い、二人を取り巻く人々の和音が心地よく重なる。川端の文体はとても映像的で且つ、音楽的だ。昔が懐かしいのは今が寂しいからだろうか。その切なさが五感を研ぐ。どんな花でも、見る場所と時によって胸にしみることがあるように。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2015/12/14(3059日経過)
記録初日
2015/11/20(3083日経過)
読んだ本
986冊(1日平均0.32冊)
読んだページ
279448ページ(1日平均90ページ)
感想・レビュー
986件(投稿率100.0%)
本棚
12棚
性別
自己紹介

キャッチャーインザライの主人公の判断基準である「イカす」か「イカさないか」。歳を重ねてなおイカしている人はいるし、爽風のようなカッコ良さには憧れる。でもあえて「重々しさ」にこだわりたい。音楽用語ならPesante。うざくて、退屈で、鬱陶しくても、本当に大切なことを知る過程は、そんなところから始まる。

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