読書メーター KADOKAWA Group

2024年4月の読書メーターまとめ

みつ
読んだ本
33
読んだページ
11980ページ
感想・レビュー
33
ナイス
1564ナイス

2024年4月に読んだ本
33

2024年4月のお気に入られ登録
7

  • 道楽モン
  • ヒロユキ
  • W-G
  • twinsun
  • 禄
  • k5
  • ikomuro

2024年4月にナイスが最も多かった感想・レビュー

みつ
第4巻に続き終わりまで一気読み。犯人の一人とされていた人物について、テレビ番組でも疑義が呈される。そこに現れる無実を主張する友人の大活躍が次第に全面に現れる。ただ、読者にはその正体が予め明かされているため、兄の無実を信じる由美子の身に何が起こるか、不安で仕方がない。彼女の運命に触れているので、裏表紙は見てはいけなかった。ルポを手がける前畑滋子は次第に追い詰められていくが、最後の大勝負に出る。ここからの急展開は、これまでの「真」の犯人像からは少々あり得ない感あり。皆傷つく中で、それでも結びはかすかな希望も。
が「ナイス!」と言っています。

2024年4月にナイスが最も多かったつぶやき

みつ

再雇用期間も含め通算43年のフルタイム勤め人生活も先月で終了。今月からはいきなり無職です。当分は散らかり放題の家の整理をはじめ、溜まりに溜まった身辺雑事に追われそうですが、読みたい本も手ぐすね引いて多数待っている状況。新しい年度もよろしくお願いします。2024年3月の読書メーター 読んだ本の数:11冊 読んだページ数:3770ページ ナイス数:777ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/640905/summary/monthly/2024/3

帽子を編みます
2024/04/01 14:32

みつさん、お勤め生活お疲れさまでした。新生活もお忙しいでしょうが御身体大切にお過ごしください😊

みつ
2024/04/02 13:51

帽子さん いつもありがとうございます。ここでダラけることなく、規則正しい生活を心掛けたいと思っています。今後ともよろしくお願いします。

が「ナイス!」と言っています。

2024年4月の感想・レビュー一覧
33

みつ
『魔の山』を読むのもこれが4回目(過去2回が岩波文庫、1回が新潮文庫)。軍人(少尉)ヨーアヒムが療養中のサナトリウムを見舞いに訪れる造船技師のハンス・カストルプ。3週間の訪問予定であったが・・という筋書きはもちろん覚えていたが、煩瑣極まりない一方で痙攣的なユーモアすら感じさせる人物や観念の描き方には、今回が一番嵌った。文学者ではない青年がかくも抽象的な思考をめぐらすのはマン独特の世界。前半の圧巻はクラウディア・ショーシャへのフランス語を交えた愛の告白。谷崎の『鍵』のようなカタカナ表記が妖しさを倍加する。
棕櫚木庵
2024/04/28 18:12

あのカタカナにはドキドキしちゃいました(^^;).「鉛筆,返シニキテネ」(でしたっけ)で心臓が飛びあがりました(^^;;;).

が「ナイス!」と言っています。
みつ
明治12年2月、当時の新聞の女性踏切番の事故死から記述は始まる。線路工の夫が踏切番もさせられ、家族までそれに従事させられられるという、明治悲惨小説の世界が現実にあった。その後、出札、車掌、運転士と徐々に職種は広まるが、「女性らしさ」の陥穽による採用、さもなくば戦時下の男性不足を補うためと、「社会進出」の一語ではこぼれ落ちる、時代の暗部との関わりが浮き彫りになる、記述は専ら終戦まで。戦後新憲法下の労働基準法が「女子」の保護が主目的にせよ深夜労働禁止を掲げたため、20世紀の終わりまで門戸が狭められたのは皮肉。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
中篇『曠野』とその前後の短編11作を収める。『曠野』では、9歳の少年が遠くの中学校に入学するため商人の伯父と神父とともに馬車に揺られた後、商用のため伯父たちとも別れ、一人で荷物馬車で旅を続ける。情景描写と少年の寄るべない気持ちが淡々とした筆致で描かれる。これより以前の作は、境遇こそ違え子どもたちが主人公の『子どもたち』『ワーニカ』『家庭で』がいい。以降に発表された3作は、自ら選んで15年を蟄居して暮らす『賭け』、老いた棺桶屋の『ロスチャイルドのヴァイオリン』、ペテロの否認を背景にした『学生』と深みを増す。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
下巻では、冒頭近くで6千里を旅したことが述べられ(p11)、航海はまだまだ序盤。インド洋からスエズ地峡の下のトンネル(!この時点では運河はまだ未開通)を経て地中海経由で大西洋に。アトランティス大陸の遺跡、水深16,000メートルまでの潜水、さらには南極点へのノーチラス号による「上陸」などその後の知見で修正されるものもあるが、描写は詳細にして生彩に富む。海底電信の敷設がこの時期であることにも触れられる。登場人物が極度に少なく、専ら海の神秘を当時の情報を駆使して描いた本作。急転直下の結末まで物語性は希薄。
帽子を編みます
2024/04/25 21:32

みつさん、電書版になってます。紙本は9784003256954で打ち込んでみてください。

みつ
2024/04/26 09:55

帽子さん ありがとうございました。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
子どもの頃ジュヴナイル版で読んで以来の本作。学校から行った映画でも観たが、原作を読むのは初めて。1862年7月、世間を賑わす「謎の巨大生物」を追うべく探査船に乗り込んだ教授とお付きの青年、そして銛討ちの名人が船から投げ出され、潜水艇ノーチラス号(であることが後にわかる)に救助されるところから物語は始まる。ネモ船長(ラテン語で「だれでもない」という意味(p143)とは知らなかった)と教授の語らいは、(当時の?)科学知識と海に関する統計が満載。既にラッコが絶滅の危機にあること(p259)も初めて得た知識。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
最終巻では、イザベルの結婚生活の幻滅が描かれる。彼女の親しい人物に対するオズモンド氏の厳しい評価(特にヘンリエッタ。p175)からは、彼の狭量な性格が際立つ。一方でヘンリエッタは「あなたの性格が台無しになってしまう前に」(p196)離婚を薦める。娘パンジーの出自について、意外な人物との繋がりが明かされる。終わり近くのラルフとのやりとりを経て、なおイザベルがこの選択をするのは割り切れない思いも。作者がいちいち顔を出して読者に呼びかけるあたりも含め、古風なイギリス小説風の味わいが強いのはジェイムズならでは。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
この巻ではイザベルたちのイタリア滞在時の出来事が中心。伯父タチェット氏の遺産を相続し、「1年間世界を見る」(p219)。さらには「3か月間ギリシャ、トルコ、エジプトを周遊」(p225)という、有閑階級らしい豪華な日々が綴られる。次に彼女に言い寄るのは、イタリア在住のオズモンド氏。ここでも恋愛心理とやりとりの描写は精緻を極めるが、身を焦がすような恋愛感情は感じられない。それだけに彼女の選択は唐突の感も。終盤ではより若い世代のパンジーとロウジアの恋愛が中心となり、イザベルの変化もラルフの眼を通して描かれる。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
アメリカ生まれのイザベルが伯母を頼ってイギリスにやってくる。伯父のタチェット氏は体調を崩し臨終も近い、その息子ラルフは肺病病み。イギリスでエネルギーを失ったかのように見えるアメリカ人一家に対し、イザベルは、「自分は誰からも独立であるということ」(p299)を好み意気軒昂。イギリス人貴族のウォーバトン卿は愛を告白し、アメリカで彼女に求婚したグッドウッド氏は彼女を訪ねてくるが、彼女はなびかない。友人のジャーナリストの感化も受け、イギリス暮らしが続く。恋愛心理を描きつつ恋愛に至らないのは、いかにも作者らしい。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
第4巻に続き終わりまで一気読み。犯人の一人とされていた人物について、テレビ番組でも疑義が呈される。そこに現れる無実を主張する友人の大活躍が次第に全面に現れる。ただ、読者にはその正体が予め明かされているため、兄の無実を信じる由美子の身に何が起こるか、不安で仕方がない。彼女の運命に触れているので、裏表紙は見てはいけなかった。ルポを手がける前畑滋子は次第に追い詰められていくが、最後の大勝負に出る。ここからの急展開は、これまでの「真」の犯人像からは少々あり得ない感あり。皆傷つく中で、それでも結びはかすかな希望も。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
ここから第三部。時間軸としては第1巻の続き。死亡した犯人の保管するビデオから、大勢の失踪した女性が被害に遭っていたことが明らかに。警察の章では“建築家”と呼ばれる特異な能力を持つ元警察官が初めて登場、他は第一部の人物が次第に絡み合い、展開していく。蕎麦屋の娘高井由美子は、兄が事件にはたす役割を知らされる中明朗さを失い奇矯な行動に出る。お見合い相手の刑事も明らかに。彼女の前に現れる人物の正体に驚愕。長い第二部を通じ真相は読者に予め知らされているため、彼の行動の真意を考えつつ読む手が止まらない。➡️
みつ
2024/04/18 17:45

➡️自分の読んだ限りでは、宮部作品の特徴として高校生の少年が重大な役割を果たしているということがある。もうひとつの特色は、小規模な店(工場のこともある)を懸命に営む大人に注がれる眼が温かいということ。本作でも少年と老いた豆腐屋の店主が心を通わせる箇所でほっとする思い。その意味で、蕎麦屋の店主である由美子の父がマスコミに報じられた豆腐屋店主の振舞いに対し尊敬の念を表明するエピソード(p399)も、短いながら印象的。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
この巻も第2部にまるまる当てられる。蕎麦屋を親とともに切り盛りする兄妹の話になり、妹の由美子が兄和明の行方を追うところから始まり、兄の「友人」たちの計画が詳細に述べられる。そこから第1部の最終場面に戻るまでの「犯人」の心理描写が長く、少々うんざりしたことも事実。最終場面で車に乗っていたのがこのふたりになる経緯も、なぜあのような終わりになってしまったのかも、なかなか腑に落ちない。姉が幼くして死んだ真相も、自分には唐突な割には衝撃を受けなかった。第2部はようやく終わり(多分)、ここから改めて物語は始まる。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
第2巻は全く異なった観点から物語が始まる。「犯人」の過去に遡り念入りな心理描写が続く分、第1巻の怒涛の展開を脇に置いたような、なかなか進まない様子にはいささかの戸惑いもある。この巻は犯罪者の視点に立ってもう一度事件を反芻した趣があり、未だ本名が明かされない登場人物の正体など、大きな謎は次巻以降に完全に持ち越される。読んでいて気が滅入るような記述ばかりの分、かえって次が読みたくなってくる。なお、裏表紙の梗概は、第1巻の内容の一部になっている。ネタバレをしないための苦肉の策か。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
読み出すと止まらない第1巻。冒頭で猟奇的な事件を仄めかし、失踪した若い女性の行方を追う家族や警察の捜索の様子が続く。ここにルポを手がける女性、過去の痛ましい出来事を抱える発見者の高校生の物語が絡み合っていく。登場人物は多く場面も頻繁に切り替わり、次第に事件の状況が明らかになっていく様に緊張感は高まるばかり。被害者家族と接触する犯人と思しき人物の薄気味の悪さの一方、孫娘の身を 案じる豆腐屋主人の対応が苦悩に満ちながらも背筋の伸びる思い。終わり近くで場面は急激に展開するが、決着はついたのか不分明のまま次巻へ。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
下巻にはいり俄然面白くなる。「事件」の「謎」が提示され、関係者が絞られている様も、この日の出来事と密接に関連。そこからの人間関係が徐々に炙り出されていく様も見事。ミステリ的興趣よりもこちらの方が上回る。主人公がひた隠していた時間旅行についてとんでもない事実が明らかになるのは、強引な展開なようでいて読む方としては加速度がついているので頓着しなくなってくる。春たけなわの終章がまた切ない余韻を残す。この本が執筆された当時に近い「現代」の1994年と1936年、58年の隔たりというのも、この物語の成立に不可欠。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
歴史上の重大事件を絡めたタイム・トラベルもののSF。主人公は受験に失敗して予備校を受けるために改めて宿泊したぱっとしないホテルで火事に遭遇。ここから思わぬ形で過去に降り立つことになるという設定。完全に巻き込まれたもので、一方時間旅行のできる超能力者はやたらに暗く、最重要人物ふたりはこの時点では魅力に乏しい。降り立った先でも、人物よりむしろ当時の寒々とした描写の巧みさが目を惹く。一番興味深かったのは、この種の話では禁忌とされていた「歴史の改変」について時間旅行者が語る話(p229)。事件の渦中からは下巻で。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
自由奔放な教師と彼女を慕う10歳の教え子たちの織りなす爽快な学園もの・・かと思いきや、読み進むにつれて次第に不穏な空気をはらんでゆく。自己肯定感がとことん強くムッソリーニの賛美者でもあるブロディ先生とお気に入りの「ブロディ隊」が学園の中では浮いた存在。当時から十数年を経て第二次対戦後に再会した生徒たちのやりとりが、彼女たちの必ずしも幸福ではない成長ぶりと先生から距離を置ていく様を明らかにする。最後、学校時代最も影響を受けたものとの問いかけへの答えが「青春に光輝く先生」というのは、苦い反語的な意味を帯びる。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
シリーズの完結編。第2作の時点で、「ミステリなのにカタルシスは少ない」と感じたもの。この最終作では色調が明るくなるどころか、冒頭から大学入学を控えたピップのもとに忍び寄る不審な影に精神が追い詰められ、精神安定剤に頼る姿があからさまとなる。「敵」の姿を思い描きながらリストを作成する箇所(p128〜)では憎しみの感情が表面化し、第1作の爽やかな世界はもはや取り返しのつかないものであることを思い知らされる。その後の真の敵への対峙と彼女のとった行動は予想外で、終わりまで割り切れない気持ちを残したまま読了。
mitu
2024/04/14 15:54

読みましたが、違う版のようです。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
第3巻まで一気読み。こうした短編集は本当は毎日少しずつ読むべきなのだろうが、ひとつを読むとつい次の作品に手を伸ばしたくなる。とりわけこの巻は小説としてのまとまりを備えたものが多い。「花婿とパパ」は結婚したがらない男の言い訳探し。終わりが辛辣。「薬剤師の女房」は男二人連れの滑稽さと女房の侘しさが同居。「注文原稿」は書き上げようとする原稿と隣の客間の会話が並行して進む。「新年の拷問」は年始の挨拶のため心ならずも訪問をしていく話。「郊外の一日」は、「乞食娘」兄妹と靴屋の老人の聖性すら感じる物語で集中の最高傑作。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
チェーホフ初期の短篇集の第2巻。この頃の作品は会話が主ということもあるが、登場人物たちはよく喋る。後年の静かな世界とは大きく違うようでいて、いじましい人物たちの描き方には通じるものがある。音楽家を描いた「二つのスキャンダル」と「聖歌隊」は戯画であってどこか物悲しい。ジューヌ・ヴェルヌ作を訳したという「飛ぶ島」は、最後の注にあるようにパロディなのだろう。「極寒」の零下28度の世界、その後の「川のほとり」は氷が解け出す春の川の情景描写に続き筏乗りの生活が述べられる。厳しいロシアの風土のもとでの生活の縮図。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
この新潮文庫版は昔購入したものであるが行方不明になったため、図書館にあった単行本で読了。文庫化の際の「傑作短編集」の惹起文句は単行本にはない。後年の名作と同水準の傑作を期待すると肩透かしを食う。ユーモア小品集といっても、滑稽ではあるがどこかもの悲しさもあり、笑いを誘うものは少ない。ほとんどが20歳台の前半に発表されており、今後書かれるべき小説や戯曲のための覚書のようにも読める。「男爵」「復讐」「偏見のない女」「策を弄する人」「簡約人体解剖学」「読書」「変人」「ポーリニカ」など、題材も語りの手法も多彩。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
1936年初版の岩波文庫。当然旧字旧かなであるが、この時期の本としては字が大きい(1ページ15行)というのがありがたい。そして何より神西清の訳が古びていない。『決闘』は解題によれば「チェーホフの芸術作品中では量的に最も大きな小説」とのこと(p290。なお、彼の初期作『狩場の悲劇』はさらに長いが、こちらは推理小説)。『決闘』は、無為な生活を続ける役人の話。決闘の相手となる人物との思想の違いが浮き彫りになるが、最後は希望を感じるもの。『妻』は、困窮する農民たちへの援助を巡る年の離れた夫婦の対立と再出発を描く。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
この著者の本を読むのは、およそ30年前に読んだ『日の名残り』以来。出版時と日本でのドラマ化の際に話題となったが、幸い(?)当時の記憶は曖昧で筋書きも忘れていた。冒頭から静かに始まる中「介護人」「提供者」などの謎めいた言葉が提示され、少年少女時代の回想へ。当初寄宿舎かと思った場所の意味はp127で明かされ、さらにp213に示される「ポジブル」と結びつくことで、彼らの置かれた衝撃的な環境が突きつけられる。異常な設定ではあるが苦に満ちた現実社会の縮図のようであり、一方で人間の尊厳についても問いかけられている。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
戦争のときの話を集めにジュリエットはガーンジー島に赴く。手紙のやりとりは続くが、彼女のロンドンへの報告が中心となる。その中、「ガーンジー読書会のメンバーの方へ」という手紙が届き(p29)、島の人とジュリエットは戻れないエリザベスを襲った運命を知る。ここからジュリエットと共にいたフランス人女性レミーが加わり、戦争の影をより濃くしつつロマンスも意外な方向に。最後は好奇心旺盛なイズラ(「私立探偵」は自称?)「捜査ノート」の形を取り、思わぬ幸福な結末へ。そのうえでジュリエットからシドニーへの手紙で締めくくられる。
きゃれら
2024/04/09 16:41

これ未読ですが、映画が良かったです。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
第二次世界大戦がようやく終了した翌年の1946年、ロンドン在住で執筆を続けるジュリエットのもとに、フランスにほど近いガーンジー島の住民から手紙が届く。以下、物語すべてが書簡(と電報)から構成されていく。出版業を営むシドニー、彼女の賛美者であるマークとのやりとりも交えつつも、戦時ナチスの占領下にあった島民たちが会うためのカモフラージュとして始めた読書会に興味を惹かれ。次第に多くの島民との文通が始まっていく。書簡体小説のまどろっこしさがあるものの、そこから島民たちの占領下の生活が浮き彫りになる。以下は下巻。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
表紙に描かれるのは、長い髪を持つインド風の若い女性。明るい色調で描かれた絵で、希望に満ちた物語が展開するかと思いきや内容は真反対。インドの不可触民のスミタ、家業の毛髪加工会社が倒産の危機に瀕するイタリアのジュリア、エリート弁護士だったカナダでの弁護士サラの3人が、大きな社会的な壁の前で苦闘する様が描かれる。とりわけスミタの物語は、経済発展著しいインドにこんな現実もあるのかと階級差別の残虐な現実に胸が塞がる思い。3つの物語は髪の毛で繋がってゆくが、とりわけスミタと娘ラリータの希望に満ちた明日を祈るしかない
が「ナイス!」と言っています。
みつ
既読の『自由研究には向かない殺人』の前日譚。架空の殺人の犯人当てゲームという設定で、その後の事件で探偵役を務める高校生ピップの視点で物語は進む。当初は登場人物の名前と彼らが演じる役柄の名前がごっちゃになり、何度も作品中の配役表を見返すことになる。ゲームの考案者から参加者に向けて、あるいはピップ個人に向けて手がかりが提示され、読者は彼女とともに犯人を考えていくことに。彼女の到達した「真相」は、果たして考案者の解答と一致していたのか。結びで彼女が感じるモヤモヤが、自由研究のテーマを選んだ動機を明らかにする。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
700ページを超える新潮クレスト・ブックス。冒頭で1953年のスターリン死去を知る3人の少女(タマーラ、ガーリャ、オーリャ)が簡単に紹介され、そこからイリヤ、サーニャ、ミーハの物語になる。少女たちは1944年生まれ(p333の記述)で少年たちもほぼ同年代(p367のイリヤの述懐)。1957年の世界青年学生祭典やそこに流れる「モスクワ郊外の夕べ」の音楽が若い幸福な日を飾る。表題と同じ名の章(p152)でイリヤとオーリャが出会い、80年代の終わりまでの長い時間経過の物語となる。このあたりから時間が入り乱れ➡️
みつ
2024/04/05 12:40

➡️「同級生たち」の章(p291〜)で、3人の少女の観点から、地下出版に身を投じたイリヤの状況も含めもう一度同じ時代が語られることに。ここまでで「読み切った」との感懐を抱いたものの、分量的には全体の半分にも達せず、以降は断片的な物語の印象が一層強まる。中ではミーハの挫折の物語が、この全体主義国家のもとの悲劇(彼の年齢からは1970年代半ばの出来事)として強い印象を残す。最後は、サーニャと音楽家として交流があったリーザとの会話で閉じられる(1996年)。ソ連は解体して久しいが、その後の虚脱感を感じさせる結び

が「ナイス!」と言っています。
みつ
ツルゲーネフの最初の長編小説とのこと。最初は登場人物が多いくせに主人公の登場が遅く、途中からはまるで戯曲のように会話だけで進行するせいもあって、なかなか頭に入らなかった。口を開けばその発言は立派であり、当初は誰もがその博識に魅せられるがやがて距離を置かれ、愛した娘からもその母親からも信頼されなくなっていく。主人公ルーヂンは、頭でっかちの知識人の典型を示しているよう。「ルーヂンの言葉は人を動かすことができない」(p178)とは長く彼を知る友人の言葉。『浮雲』を書いた二葉亭が訳したのも、何となく理解できる。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
何度も読んだ作を今回は比較的新しい小野理子氏の訳で。桜の時期に手に取るべくチェーホフの四大戯曲を発表順にまとめて読んだ。通じて改めて感じるのは、本作がドラマの不在という点で、先行作よりも一層徹底しているということ。桜の園の競売を題材に、失っていくものへの哀惜と新しい生活への戸惑いが、ラネーフスカヤ夫人の世代と娘アーニャの世代を対比しつつ、曖昧に静かに進行する。アーニャとトロフィーモフの台詞「さよなら、古い生活!」「こんにちは、新しい人生!」は、若くして世を去ったチェーホフの未来への希望だったろうか。➡️
みつ
2024/04/03 12:33

●岩波文庫の表紙には「チェーホフの(中略)最も愛されてきた戯曲」とありますが、これは日本以外でも共通なのでしょうか。日本人の桜に寄せる思いとこの戯曲の声高にならず言い尽くしていない雰囲気は、とりわけ日本人の美意識に合っているように思います。●この戯曲に関連して是非触れておきたいのは、女子高校の演劇部における、桜舞う日の朝から同作の上演までを同じ時間の経過の中で描いた、中原俊監督の映画『櫻の園』(1990年製作の方)。大きな事件は起こらず、賑やかな会話の一方でしんとした空気感も感じさせます。➡️➡️

みつ
2024/04/03 12:52

➡️終わり近く、少女ふたりが互いへの淡い恋愛感情に似た想いを伝え合い喜ぶ一方、ひとりに想いを密かに寄せる少女が立ち尽くしながら離れて見つめる場面で、初めてスローモーションとクローズアップ(特に傍らの少女が手に持った煙草!)という映画特有の技法が登場します。評論家の蓮實重彦氏「風」に言えば、「この場面は、観る者をひどく動揺させる。少女同士の愛が描かれているからではない。作品が演劇的時間を成立させるためこれまで注意深く避けてきた、映画的な手法への快楽に身を委ねたからだ。」とでもなるかも。素晴らしい場面です。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
これも高校生の時以来、約半世紀ぶりの再読(当時は旺文社文庫版)。今回の岩波文庫版は戦前の訳ではあるが、仮名づかいも改められ、文字も大きくなって、より読みやすくなった様子。『外套』は、極寒のペテルブルグにおける冬の必需品である、外套の新品を何とか手に入れた九等官の身にふりかかった物語。明治日本の悲惨小説のようにも読めるが、ここに滑稽みと風刺と幻想性が加わる。『鼻』は、あり得ない出来事に右往左往する様を淡々と描く奇妙な味わいの作。主人公は八等官であるが少佐なので、当時のロシアでの一等級の違いの大きさを感じる。
が「ナイス!」と言っています。
みつ
チェーホフの四大戯曲の中でも最も好きな作品。これまでは神西清訳の新潮文庫版で何度も読んできた。将来を嘱望されながら「やっと生活しはじめたばかりで、退屈な、灰色の(以下略。p102)」日々を送ることになる兄。次女マーシャは夫に愛を感じない(『かもめ』の同じくマーシャの夫婦関係も彷彿)。モスクワの都会生活に憧れる三女イリーナ。理想を語りながら妻子ある生活に疲れ果てているヴェルシーニン。人生を優しく達観するトゥーゼンバッハ。皮肉屋のチェブトゥイキン。それぞれの登場人物たちが噛み合わない会話を繰り広げながら➡️
みつ
2024/04/02 16:49

➡️出口の見えない中で懸命に生きていこうとする。終わりの長女のオーリガの「もしわかれば!」とチェブトゥイキンの「どうだっていいさ!」(いずれも繰り返される。神西訳は、記憶では「それがわかったらね!」と「おんなじことさ!」)の対比が、重い余韻を響かせる。 ●この作は実際の演劇でも観ています。特に感心したのがトゥーゼンバッハがイリーナに告げずに決闘に赴こうとして家を出る際「あたしもいっしょに行くわ」の言葉に対する「いけない、いけない!」の反応。実際の劇では、ひとつめの「いけない」が思わず口を出た叫び➡️➡️

みつ
2024/04/02 16:53

➡️➡️であったのに対し、二つ目は彼女に悟られまいとしたのか、軽く彼女の手を握りながら微笑みかけるような「いけない」になっていました。演劇の演出とはかくあるべきものかと、強く印象付けられました。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
前半は17歳年上(p63)の恋人(女性脚本家)を喪った演出家(女性の訃報から計算すると多分1949年生まれ)リチャードの物語。キャサリン・マンスフィールドとリルケの交流を描く架空の小説『四月』のドラマ化が底流にある。失意の彼に駅で声をかける少女の登場で一旦中断、移民収容所の保護官ブリットと謎の少女フローレンスの旅の物語に移る。この物語が合流しコーヒートラックを運転するアルダがさらに加わる。終わり近く(p277)、少女時代に別れたまま会えない娘の名がエリサベス(「ザ」ではなく「サ」)であることが明かされ➡️
みつ
2024/04/02 13:35

➡️シリーズの前々作『秋』と思いがけず繋がる。シリーズを通じて現れるというダニエルについては、解説の仄めかしでは登場場面を特定できず。物語後半は、移民に向けられる悪意が焦点に据えられているようで、一筋縄ではいかない語り口。少女とアルダの企みが何であったかもよくわからない。ブリットの手元に残された少女のノートが手がかりになるのか、それは最終作『夏』で明らかになるのか。五年後のフローレンスとの出会いが暗示されている(p265)ので、放り出されたような気分に浸りつつ、最終作は季節が変わるまで待つことにする。

が「ナイス!」と言っています。
みつ
約半世紀前の高校生時代、旺文社文庫(函に入った凝った造本)で読んで以来の再読。勘違いが生んだドタバタ喜劇との印象が強かったが、権力ある役人に取り入ろうとする人々を戯画的に描くことで切実さが滑稽さに直結する世界を強烈に印象づける。自分が勤め人生活を終えた直後でもあり、よからぬ目的をもって様々な献金が横行する昨今の社会の写し鏡のようにも見えてくる。また、どう見ても怪しげな人物であるのに皆信じきってしまうというのも、今日のフェイク・ニュースに通じる。真相を知らされ、1分半続く「だんまりの場」で幕というのも斬新。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2016/01/02(3063日経過)
記録初日
2014/12/29(3432日経過)
読んだ本
934冊(1日平均0.27冊)
読んだページ
311684ページ(1日平均90ページ)
感想・レビュー
697件(投稿率74.6%)
本棚
11棚
性別
年齢
65歳
現住所
三重県
自己紹介

こんにちは。「読書メーター」で皆さんと交流できることを楽しみにしています。
 半世紀余り、手当たり次第に本を読んできました。愛読してきたのは、

・「モームの世界の10大小説」とその周辺
・いわゆる黄金時代の本格推理小説
・トーマス・マン
・ヘッセ
・プルースト
・チェーホフ
・O・ヘンリ
・ジャック・フィニイ
・マッカラーズ
・ジェイン・オースティン
・紫式部(数種の現代語訳「源氏物語」)
・夏目漱石
・寺田寅彦
・内田百閒
・中里介山(「大菩薩峠」)
・永井荷風
・谷崎潤一郎
・江戸川乱歩
・石川淳
・尾崎翠
・福永武彦
・北村薫始め「日常の謎」を扱ったミステリ
・恩田陸
・丸谷才一(いわゆる雑文を中心に)
・吉田秀和
・大島弓子(漫画家)
・新幹線網が張り巡らされる前の時刻表(宮脇俊三氏が健筆を振るった頃)
・和漢朗詠集
・新古今和歌集
・「折々のうた」他の詞華集
・歳時記


 感想文は遠い昔の学生時代から大の苦手で、これまで記録も投稿も断続的かつ一部に留まっていましたが、皆さんに触発され、以前読んだ作品も含め少しずつでも投稿していければと思っています。(追記。2020年10月頃、遅まきながら読書メーターに参加できる歓びを本格的に知ることとなり、読書のペースが上がるとともにほぼ全ての本に投稿するようになりました。)

 読書の他には、クラシック音楽(地味めのものを中心に)鑑賞と、筆記具(インク含む)集めが主な趣味です。

 これからに向けて「積読本」「読みたい本(再読したい本・・これがまた多い・・を含む。)」を徐々に整理していたら、まだまだ増えていくことに気付きました。残りの人生でどこまで読むことができるのか、時々不安になります。
 これからもお付き合いの程、よろしくお願いいたします。

  (2020年11月28日に一部追加修正しました。)
  (2021年1月18日から19日にかけ、書き漏らしていた愛読する作者、近況を追加をしました。)
  (2021年3月7日に、愛読本としてマッカラーズを追加しました。)
  (2023年8月27日に、愛読本としてオースティンを追加しました。)

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