再雇用期間も含め通算43年のフルタイム勤め人生活も先月で終了。今月からはいきなり無職です。当分は散らかり放題の家の整理をはじめ、溜まりに溜まった身辺雑事に追われそうですが、読みたい本も手ぐすね引いて多数待っている状況。新しい年度もよろしくお願いします。2024年3月の読書メーター 読んだ本の数:11冊 読んだページ数:3770ページ ナイス数:777ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/640905/summary/monthly/2024/3
➡️自分の読んだ限りでは、宮部作品の特徴として高校生の少年が重大な役割を果たしているということがある。もうひとつの特色は、小規模な店(工場のこともある)を懸命に営む大人に注がれる眼が温かいということ。本作でも少年と老いた豆腐屋の店主が心を通わせる箇所でほっとする思い。その意味で、蕎麦屋の店主である由美子の父がマスコミに報じられた豆腐屋店主の振舞いに対し尊敬の念を表明するエピソード(p399)も、短いながら印象的。
➡️「同級生たち」の章(p291〜)で、3人の少女の観点から、地下出版に身を投じたイリヤの状況も含めもう一度同じ時代が語られることに。ここまでで「読み切った」との感懐を抱いたものの、分量的には全体の半分にも達せず、以降は断片的な物語の印象が一層強まる。中ではミーハの挫折の物語が、この全体主義国家のもとの悲劇(彼の年齢からは1970年代半ばの出来事)として強い印象を残す。最後は、サーニャと音楽家として交流があったリーザとの会話で閉じられる(1996年)。ソ連は解体して久しいが、その後の虚脱感を感じさせる結び
●岩波文庫の表紙には「チェーホフの(中略)最も愛されてきた戯曲」とありますが、これは日本以外でも共通なのでしょうか。日本人の桜に寄せる思いとこの戯曲の声高にならず言い尽くしていない雰囲気は、とりわけ日本人の美意識に合っているように思います。●この戯曲に関連して是非触れておきたいのは、女子高校の演劇部における、桜舞う日の朝から同作の上演までを同じ時間の経過の中で描いた、中原俊監督の映画『櫻の園』(1990年製作の方)。大きな事件は起こらず、賑やかな会話の一方でしんとした空気感も感じさせます。➡️➡️
➡️終わり近く、少女ふたりが互いへの淡い恋愛感情に似た想いを伝え合い喜ぶ一方、ひとりに想いを密かに寄せる少女が立ち尽くしながら離れて見つめる場面で、初めてスローモーションとクローズアップ(特に傍らの少女が手に持った煙草!)という映画特有の技法が登場します。評論家の蓮實重彦氏「風」に言えば、「この場面は、観る者をひどく動揺させる。少女同士の愛が描かれているからではない。作品が演劇的時間を成立させるためこれまで注意深く避けてきた、映画的な手法への快楽に身を委ねたからだ。」とでもなるかも。素晴らしい場面です。
➡️出口の見えない中で懸命に生きていこうとする。終わりの長女のオーリガの「もしわかれば!」とチェブトゥイキンの「どうだっていいさ!」(いずれも繰り返される。神西訳は、記憶では「それがわかったらね!」と「おんなじことさ!」)の対比が、重い余韻を響かせる。 ●この作は実際の演劇でも観ています。特に感心したのがトゥーゼンバッハがイリーナに告げずに決闘に赴こうとして家を出る際「あたしもいっしょに行くわ」の言葉に対する「いけない、いけない!」の反応。実際の劇では、ひとつめの「いけない」が思わず口を出た叫び➡️➡️
➡️➡️であったのに対し、二つ目は彼女に悟られまいとしたのか、軽く彼女の手を握りながら微笑みかけるような「いけない」になっていました。演劇の演出とはかくあるべきものかと、強く印象付けられました。
➡️シリーズの前々作『秋』と思いがけず繋がる。シリーズを通じて現れるというダニエルについては、解説の仄めかしでは登場場面を特定できず。物語後半は、移民に向けられる悪意が焦点に据えられているようで、一筋縄ではいかない語り口。少女とアルダの企みが何であったかもよくわからない。ブリットの手元に残された少女のノートが手がかりになるのか、それは最終作『夏』で明らかになるのか。五年後のフローレンスとの出会いが暗示されている(p265)ので、放り出されたような気分に浸りつつ、最終作は季節が変わるまで待つことにする。
こんにちは。「読書メーター」で皆さんと交流できることを楽しみにしています。
半世紀余り、手当たり次第に本を読んできました。愛読してきたのは、
・「モームの世界の10大小説」とその周辺
・いわゆる黄金時代の本格推理小説
・トーマス・マン
・ヘッセ
・プルースト
・チェーホフ
・O・ヘンリ
・ジャック・フィニイ
・マッカラーズ
・ジェイン・オースティン
・紫式部(数種の現代語訳「源氏物語」)
・夏目漱石
・寺田寅彦
・内田百閒
・中里介山(「大菩薩峠」)
・永井荷風
・谷崎潤一郎
・江戸川乱歩
・石川淳
・尾崎翠
・福永武彦
・北村薫始め「日常の謎」を扱ったミステリ
・恩田陸
・丸谷才一(いわゆる雑文を中心に)
・吉田秀和
・大島弓子(漫画家)
・新幹線網が張り巡らされる前の時刻表(宮脇俊三氏が健筆を振るった頃)
・和漢朗詠集
・新古今和歌集
・「折々のうた」他の詞華集
・歳時記
感想文は遠い昔の学生時代から大の苦手で、これまで記録も投稿も断続的かつ一部に留まっていましたが、皆さんに触発され、以前読んだ作品も含め少しずつでも投稿していければと思っています。(追記。2020年10月頃、遅まきながら読書メーターに参加できる歓びを本格的に知ることとなり、読書のペースが上がるとともにほぼ全ての本に投稿するようになりました。)
読書の他には、クラシック音楽(地味めのものを中心に)鑑賞と、筆記具(インク含む)集めが主な趣味です。
これからに向けて「積読本」「読みたい本(再読したい本・・これがまた多い・・を含む。)」を徐々に整理していたら、まだまだ増えていくことに気付きました。残りの人生でどこまで読むことができるのか、時々不安になります。
これからもお付き合いの程、よろしくお願いいたします。
(2020年11月28日に一部追加修正しました。)
(2021年1月18日から19日にかけ、書き漏らしていた愛読する作者、近況を追加をしました。)
(2021年3月7日に、愛読本としてマッカラーズを追加しました。)
(2023年8月27日に、愛読本としてオースティンを追加しました。)
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