節制や勇気、知識、正義は徳という一つのものの別名であることが示される。つまりは勇気があって知識がないという子もあり得ないし、節制があって正義があるということもあり得ないことになる。正義も勇気も節制も知識も等しいものであると。 また、善い悪いも快楽や苦痛で計るとができるという功利主義的な思想が見え隠れしている点も面白い。小さな苦痛が大きな苦痛を防ぐために必要であれば小さな苦痛は善いものなのである。2000年以上前にこのような地点まで思想が極まっていたことに驚きを隠せない。

ミルもまえがきですこし触れているが、プラトンの『プロタゴラス』の議論を彼は受け継いでいることは明らかです。正義とは完全義務を果たすこと、また完全義務を果たさないものを不正とみなすことであると考えられます。不完全義務は当事者を特定できないものですから正義とは当事者を特定できる際に生じるということになります。正義の観念を補強するのが功利主義であるということをミルはこの本の第5章で示そうとしています。現代は功利主義を超えることは出来るのかできないのか。はたまた超える必要が無いのか。

節制や勇気、知識、正義は徳という一つのものの別名であることが示される。つまりは勇気があって知識がないという子もあり得ないし、節制があって正義があるということもあり得ないことになる。正義も勇気も節制も知識も等しいものであると。 また、善い悪いも快楽や苦痛で計るとができるという功利主義的な思想が見え隠れしている点も面白い。小さな苦痛が大きな苦痛を防ぐために必要であれば小さな苦痛は善いものなのである。2000年以上前にこのような地点まで思想が極まっていたことに驚きを隠せない。

第9章と第10章は面白くないけど、第8話までは抜群に面白かった。日本でエロスと言うとあまりウケが良くないので愛と言ったほうがいいかもしれない。しかし、プラトンが表現するエロスは恋愛的な愛ではないことに注意したいが。エロスは統一性であり美と一体となることを望むものだと思う。それが後にフロイトによって平和への概念へと結びつけられる。エロスとは調和であり、人間の生き別れた片割れへの飽くなき欲求であるとともに魂の永遠化である。

『してみると、たんに法律習慣の上のことだけではないのだね、不正を行うほうが不正を受けるよりも醜いとか、また、平等に持つことが正しいとかいうのは。それはまた、自然の本来においても、そうなのだね。』152 優れている、そして個人よりも強いものである多数者が平等を求めているということ、また、多数者が不正を行うほうが不正を受けるよりも悪いことだと考えているのは明らかであるので強いものが不正を行うことができるという理由で不正を行うことは正当化され得ないと。

1000年後も2000年後も読まれているとおもう。 ホワイトヘッドが西洋哲学はプラトンの注釈に過ぎないって言ってたけどそれはこの本を読むとよくわかる。要所要所にホッブズやルソー、モンテスキュー、カントらが顔を覗かせたりする。この本がなければルソーの『人間不平等起源論』も『リヴァイアサン』、『法の精神』などの名著も世に生まれてこなかっただろう。それだけ重みのある本だし、一生付き合っていきたい作品。