結局、サクマの抱えるもどかしさは、制度の代替として寄りかかれるような芯が自身の中にないことが原因なのだろう。繰り返しの生活が制度のように自分を縛るようになってきた時、サクマは自らの意志によるのではなく、感情的な爆発の結果でしかそこから抜け出すことができない。中盤で大きく道を踏み外してしまったサクマが、刑務所という極度に単純化された制度の中ではじめて「立ち止まって」考えることができるようになったのは皮肉な話だが、社会というシステムの強固さも感じる。↓
繰り返しの日々の中、制度に呑み込まれた生の中で、それでもいつの間にか自身の中に積み上がっていたものがあることにサクマが気付くシーンは、少し説明的すぎるが感動した。それが自分とは「ブツ切れ」の結果を招くこともあるにしろ、それは自身の中にあるものとは違って長続きしないわけで、制度に摩耗されない生に希望を感じる、不思議にも後味の良い終わり方だ。
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