ネタバレ加賀恭一郎シリーズ最新作は期待を裏切らず面白かった。セレブが集まる閑静な別荘地で起きた無差別連続殺人事件。犯人は動機を語らず事件の真相を見つけるために被害者遺族が集まり検証会を開く。参加した遺族全員に謎の人物から「あなたが誰かを殺した」というメモが送られていたことが判明。鋭い洞察力と嘘を絶対に見破る眼力を持つ加賀さんに嘘はつけない。大ドンデン返しが２度ある終盤はトイレに行く時間も忘れて一気に読んだ。めったに本を読まない妻が１日で読み切り、珍しく読後の感想を語り合った。こんなことは滅多に無いからビックリ❗

ネタバレシリーズ１巻目。15年前に突如失踪した17歳の少女の行方を探る展開。行方不明者の捜索を専門とする部署二係は地味ながらもその目的は遺体なき殺人事件の解決。行方不明者と事件のわずかな端緒を見つけ犯人の手掛かりを探し出す。メインとなるのは二係捜査の信楽京介と森内洸。水谷のかつての同僚だった香田繁樹警部と余命を宣告された義父の菊池和雄。スクープ記事を狙う新聞記者・藤瀬祐里。それぞれの思惑と矜持が交錯して事件の真相に近づいていく。志半ばで病により亡くなってしまった水谷巡査の葬儀場面の冒頭から引き込まれた。次巻へ❗

ネタバレ座布団さえあればどこでも出来るのが落語の利点。老人ホームの落語会の前座では居酒屋での気働きの経験が生きた。聞き手の気持ちを汲んでお客さんとの対話をする事ができたあかね。色々な経験を糧にして落語の面白さに改めて気がつく。父を破門にした阿良川一生が審査委員長を務める学生向けの落語大会可楽杯に出場を決めた。なんと優勝者には一生と歓談できるという。あかねの目的は父を破門にした理由を聞き出すこと。師匠からの出場条件は寿限無で勝つこと。ちょっと無謀すぎないか？兄弟子のこぐまや亨二たちがあかねをナイスフォロー。次巻へ。

ネタバレ星詠みシリーズ第5弾。物語に出てくるカフェメニューの描かれたイラストがとても美しい。今回のテーマは『読書』。 ミヒャエル・エンデ「モモ」、東野圭吾「秘密」、宮沢賢治「銀河鉄道の夜」、恩田陸「夜のピクニック」、重松清「流星ワゴン」、伊坂幸太郎「マリアビートル」、京極夏彦「百鬼夜行シリーズ」森絵都「カラフル」など。既読が少ないのでいつかは読みたいな。各章の間にはホロスコープに関する一覧があり悩んでいる人には参考になるかも。「人生に迷子になってしまった時は、惑星の星座を見るとヒントにつながります」ほっこり読了。

ネタバレ自分の近況などをテキストを書いたり画像を添付したりして友だちに共有する機能「タイムライン」。もし、戦国武将がSNSをやっていたら自分たちのアカウントで投稿していたらこんな感じになるのだろうな。信長のフォロワーが１５３４人だったり、上杉謙信に関するツイートやDMを送ってくる武将はブロックするという武田信玄のプロフィールなんて笑える。各章にあるYahoo!ニュースならぬBusyooニュースで主な出来事がざっくり把握できる親切さ。スマホを活用して勉強する学生にはスワイプするたびに歴史が動く本書はうってつけかも。

ネタバレ進化と変革を続ける世界の美しい５３の図書館が紹介されている。人類史上初めて世界中から集めた知識を１つの屋根の下に収めたアレクサンドリア図書館。イギリスのオックスフォードにあるボドリアン図書館は映画ハリーポッターのロケ地として使われた。厳かな雰囲気ある写真が素晴らしい。世界で最も美しいと謳われるオーストリア国立博物館は息を飲むほどの美しい装飾のフレスコ画が２０万点を超える書物を見下ろしている壮観さに圧倒された。世界の図書館を旅したような気分になれて楽しめた。思想の自由の扉を開く疑似体験が出来るオススメ本。

ネタバレ初読み作家さん。尿路結石で入院していた病院で16歳の誕生日を最悪の気持ちで迎えた木島道歩。そんな彼に私に世界の汚いところをもっと教えてよ。と声を掛けてきた綿野。彼女は同い年だが不治の病で闘病生活を送っていた。イジメを受ける惨めな自分をこれでもかと揶揄してさらけ出して綿野に笑ってもらうために語りかける「汚れたこの世はろくでなしなんだ」。美しい世界を指を咥えて眺めることしか出来なかった彼女のために、僕は挫折を味わいながらも毒に溢れた今日を生きていく。冴えない高校生と余命を宣告された少女の生きた記録を一気読み。

ネタバレ飛躍的な進化を遂げた生成AIは言葉や画像を扱うあらゆる職業を脅かしていく。これからはAIにはない能力を発揮するか、失業を甘んじて受け入れるかといった選択が迫られる。生き残りを図るには顧客が抱えている疑問や不安を察知してホスピタリティを発揮し優位性を保っていく必要がある。積極的な投資を躊躇させ失敗のトラウマによって日本はAI後進国になった。仕事を奪われる最大の脅威に対して悲観的なことだけでなくAIが普及すれば現役世代とAIが共に高齢者を支えるようになり負担は軽くなる。BIの導入と脱労働社会も提案している。

ネタバレ初読み作家さん。６つの連作短編集で最終話まさかのラストに驚きの展開だった！小学生の双子の兄弟が推理を競い合う展開なのだが全く小学生らしさがない兄の圭司と振り回される助手的な立場でくすぶる弟の有人。顔はそっくりでも性格も全く違う。探偵の真似事をして解決に導く小学4年生から6年生までの事件によって2人の成長していく姿を追うことができる。子供らしさを感じた「サンタクロースのいる世界」が一番好み。殺人事件を推理する会話の内容が大人びていて小学生とは思えないので違和感がある。設定は中高生ぐらいなら良かったかも･･･

ネタバレ栄養士の仕事は献立を考えること、材料の発注、調理指導がメイン。著者が拘った出版の最大の理由は特殊な施設の出来事をもっと一般に知ってもらいたいとの強い思い。受刑者の彼らのウマかったっスという言葉にやりがいを感じるという。給食メニューで使えないものはバナナの皮、みりん、アルミ包装が駄目なのだ。バナナの皮でタバコを作ろうとする輩がいるとは驚き❗刑務所の中の日常の面白いエピソードが満載。こういう世界もあるんだね。刑務所の内側をユーモラスに描いた安部譲二さんの自伝的小説「塀の中の懲りない面々」を懐かしく思い出した。

ネタバレ準大手飲料メーカーの御曹司・成功が別荘の地下室に監禁され半年後に解放される。不在中に辞表が出されてしまっていた。会社に行くと社内の状況は一変しかつての彼のポストには突如現れた異母兄・実行が入れ替わってその地位に食い込んでいた。異母兄弟が火花を散らす社内政治に恋愛問題が交錯していく。監禁したのは誰か？替えの利かない人間にならなければ明日はないと自覚した成功の挽回は？新商品バトルやスパイ疑惑もある。結果的には兄弟の跡目争いには社長の思惑が功を奏する。兄弟にそれぞれの活躍の場を与えた父の思惑通りの結末だった。

ネタバレ前作『黒猫を飼い始めた』に引き続き２９人すべての作家さんが表題の最初の一行から始まる嘘のアンソロジー。他の作品を読んでみようかと思わせる作家さんの力量が問われる。さまざまな作家さん１冊で楽しめる短編は思わぬ作品の発見する宝庫かも知れない。柾木政宗さんと高田崇史さん、潮谷験さん、三津田信三さんは初読み作家だったが楽しめた。櫛木理宇さん、芦沢央さん、阿部暁子さんは安定感があり面白かった。嘘をつかずに生きる息苦しさ。嘘つきは裁かれなくてはいけない。嘘でがんじがらめになる。時には嘘に依るほかは語られぬ真実もある。

ネタバレあとがきによると今どきの60～90代の男女を数多く取材したすべて実話とのこと。39編の超短編小説集で各話５〜１０ページ以内で字も大きいので老眼でも心配ない。５０代以降は光陰矢の如しで時間の経過はとても早く感じる。無駄に運がいい夫の死を待つ妻、死んでしまえば、ああ、いい夫だったと偲ぶようになるわよ（死んでしまえば最愛の人）そんな風に言われないよう今から気をつけよう。親孝行も金次第、仲間という１０匹狼より１匹狼が気楽。人生の先輩方の老いらくの恋、連れ添った夫婦の本音や高齢者を巡る家族の在り方がリアル感満載❗

ネタバレシリーズ第4弾。今回は落語のネタが多い。夏目漱石、芥川龍之介、松本清張、池波正太郎など錚々たる文豪にに関する謎を編集者・美希のお父さんの知恵を借りて謎を解く。夏目漱石が英語のI love youを月が綺麗ですねと訳したエピソードは根拠のない伝説だったというのは驚いた。オチに寅さんの「寅次郎恋歌」が出てきたのは嬉しいね😀。松本清張の話『点と線』が本格ミステリマニアからは不評でアリバイ崩しとしての穴が多いというのも意外だった。実は清張自身もかなり気にしていたと言う。お父さんが物知りで知識が豊富なのが凄い。

ネタバレ１９歳の尚美は猛勉強してアメリカに留学するが英語での会話に苦戦し、寮のルームメイトとも上手くいかず孤独を嚙みしめていた。隣室のアンドレと親しくなりマイノリティの学生が持ち回りで調理運営する食堂サード・キッチンを紹介される。様々な差別と偏見にさらされるマイノリティ学生たちにとってサード・キッチンは安全地帯で尚美にとっても心地よい居場所になっていく。彼女の悩み抜く姿が誰の心にもある差別感情と向き合うことが出来る。ステレオタイプのレッテルを貼り、植え付けられた価値観と思い込み、無知もまた差別である。心に刺さる。

ネタバレ子犬のときの姿がジャガイモにそっくりだったからオイモと名付けられた。ちょっとかわいそうな名前だ。怖がりなオイモは時々いなくなる。脱走したオイモを小学３年生のモモヨが探しに行く。天真爛漫で食いしん坊のモモヨのえらいこっちゃえらいこっちゃという独り言がツボだった。お屋敷に住んでる住んでいるレオンさんとの交流が微笑ましい。レオンさんは独特で白い犬はシロ、黒い犬はクロ、それ以外はジョンと区別していてオイモのことをジョンと呼ぶ。夢と現実が混じり合う優しい気持ちになること間違いなし。オイモとモモヨの散歩場面が可愛い。

ネタバレ徳川家康の足跡を辿るお忍び旅の途上で元老中の松平定信が戯作者・栗杖亭鬼卵に興味を持ち、鬼卵が営む日坂宿の煙草屋・きらん屋を訪れる。そこで定信に請われて人生の来し方を語るという構成。鬼卵の半生はいろんな人との出会いと別れ、喜びと悲しみに満ちている。楽しく生きる一方で厳しい取り締まりに対する反骨心を持ち志のままに生きる。鬼卵と定信は身分も立場も異なって決して交わることのなかった二人。表現者と為政者として迷い・悩み・葛藤も抱えながらも風月を愛で人生を楽しむ共通点が。作中で何度も登場するキーワードは文人墨客。

ネタバレ歩き方の特徴を解析して個人を特定する歩容解析システム「ラミダス」は顔認証よりも精度の高い人探しのシステム。開発者の能勢の真の目的は売春をして暮らしていた母親を殺害して幼少期に蹂躙された男を探し出し復讐すること。表向きはラミダスを使って鉄道会社の社員である笹本と石倉や警視庁捜査支援分析センターの吉岡・香田と協力し、未解決事件を解決していく。人を見つける技術を正しく使おうとしても人権や個人情報の壁にぶつかってしまうのが現実。幸せな人探しは見つけた人を世の中からもう一度消しかねない危険性を孕む諸刃の剣かも･･･

ネタバレ大学時代にカニザノビーというバンドを組んだ４人の軌跡。ギターの伊勢航治郎、ベースの堀岡知哉、ドラムの永田正道、ボーカルの古井絹枝。それぞれ一人称で語る連作短編集。バンド名カニザノビーの由来はメンバー２人が蟹座のB型ってダジャレじゃないか😊。ベースの知哉と妻の里奈の関係と距離感がいい。かつてバンドを組んで将来を夢見たが解散した後の歩む人生はバラバラだけど、過去を後悔しないで未来に向けて一歩踏み出していく。小野寺作品のタクジョの夏子っぽい女性も登場にニンマリ。カニザノビーメンバーで合唱の再結成するのかもね。

ネタバレ３年前から行方不明になっていた将来を嘱望されていた歌姫の並木佐織が火災現場から焼死体で発見された。取り調べを受けた容疑者の蓮沼は状況証拠しかなく黙秘を貫いたことで不起訴。さらに彼は２３年前の事件の被告でもあり黙秘を貫き無罪の判決が出ていたのだ。胸クソが悪い根っからの悪党だ。警察に期待できない司法も罰しないなら被害者家族と佐織を愛していた人々は蓮沼に罰を与える壮大な計画を練る。彼に敵意を抱きパレードの当日に蓮沼が殺される事件が起きる。容疑者の黙秘、被害者側の沈黙。犯人はいったいどんなトリックを使ったのか？

ネタバレ著者の文章に触れたのは若者に観てほしい映画を案内している「14歳からの映画ガイド」が初めて。ルーマニア映画との出会いが人生を変えたという。引きこもりだったが外の世界へと導いたのがルーマニア語だった。何故に東欧の最貧国と呼ばれる国に興味を持ったのか？生きたルーマニア語を習得したいという能動的な思いで、SNSを駆使して1000人を軽く超えるネイティブと交流を図る行動力が凄い❗徐々に周りと違う自分に酔いしれていくのが玉に瑕。プロの作家でも小説を書いても金を稼げない兼業が当たり前のルーマニアの文学世界で輝け〜🌞

ネタバレストーリーテラーのいる洋菓子店の月と私を舞台にした連作短編集。甘いお菓子と一緒にストーリーを持ち帰ってもらう謎の店員・語部九十九。美味しそうな洋菓子のウンチクを流暢に熱く語りだす。最初のイメージは胡散臭いと感じてしまった。諭すような語り口と素敵なお菓子で癒されるお客さんたちの話しが続くのかと思ったら恋愛要素が絡んでくる。語部の素性が明らかになっても店主の美人のシェフ糖花に対して「仕事以外では私に近寄らずに話しかけないでください」との態度は大きな謎のまま、エピローグまで引っ張られてしまった。次巻も読むかな❗

ネタバレジャンプで人気の落語をテーマにした人気作品。噺家・阿良川志ん太が一門の真打昇進試験に挑むがまさかの全員破門で落語家を辞めた。父の落語が大好きだった娘の朱音は落語界の最高位「真打」に上がることを目指して阿良川一門に押しかけ弟子入り。父の仇を討つ成長する主人公という王道の展開にワクワクが止まらない。兄弟子に気働きが足りないと指摘された。相手の状況をみて相手のころを想い相手に合わせた機転を利かすって大人でも難しい。描き下ろし番外編「あかね小噺」も面白い。若い人が落語に興味を持つきっかけとなる漫画だと思う。

ネタバレせりかさんの実験成功を喜ぶ六太。どれだけの人たちに希望を与える快挙だ。さあ、次はいよいよジョーカーズがシャロン月面天文台を建設する番だ。月の裏側へ進出する歴史に残る第一歩はエディの役目。世界中が注目するミッションは想定外のトラブルが起きてしまう。宇宙での六太たちを支えるロボット•ブギーが登場。ちょっと小生意気だが憎めない存在だ。月の洞窟はカルロム洞窟と命名される。玉虫色の決着でスッキリしない。だって第一発見者は六太なのにカルロが先に入ったからってひどいな〜。歴史に六太のムが刻まれから良しとしよう。

ネタバレＡＬＳ治療薬の研究に励むせりかさんを貶めようとするデマが拡散してしまう。一方的な悪意は許し難い。世論の批判をJAXAが抑え込めず何の罪も無いせりかさんの研究が中止の憂き目にあってしまう。今まで苦労してやってきたことが無駄になってしまう理不尽な仕打ちに悔しくて想い悩む姿は辛すぎる。せりかさんの代わりは誰にもできないと励ます。仲間が苦しんでる時こそ遠い月から応援して支えになろうとする六太は素晴らしい‼️父を苦しめた難病ＡＬＳを治すために諦めずに実験を成功させたせりかさんが流したラストシーンに感動。

ネタバレ打ち上げが成功して六太は今、宇宙に🚀いる。日々人からも楽しいだろ宇宙ってというお祝いのメッセージが届く。せりかさんとの宇宙での接近（ランデブー）を妄想する六太は笑える😂週刊六太は本人が一番楽しんでいる。シャロンの手術と同時間帯に念願の月面着陸だったのにアクシデントが発生❗️六太の冷静な判断と咄嗟の行動で無事に着陸成功してホッとした。でもさ、転けちゃって最初の一歩が手になるなんて彼らしい。月に降り立った六太は弟の日々人に会えた気分だったんだね。大なり小なり宇宙でのトラブルは付きものだけど頑張れ👍

ネタバレ五味京介が率いる警視庁53教場シリーズ作品と一味違う教場＋女性教官の新シリーズ第一弾。甘粕仁子は見当たり捜査員だったが、半グレ組織の幹部を追跡中に大怪我を負い戦線離脱。その後、警察学校の教官になった。甘粕教場の助教官・塩見圭介にも心を開こうとせず学生にも冷たくよそよそしい。そんな矢先、教場内で人の右脚が発見される事件が発生し、いよいよ五味が警視庁捜査一課の刑事として登場❗次から次へと出る学生たちが起こす問題と仁子が抱えている秘密は一体何なのか❓興味が尽きない展開。仁子を支える塩見の活躍がまた見てみたい。

ネタバレ人のもとにあるべきではない石、ひどく傷つき二度と主人を持ちたくないと願う石、しばしのまどろみを必要としている石など、さまざまな理由から魔石館に来ることを拒む石たちの知られざる秘密にせまる5話。理科室から持ち出された石が次々と小学生たちの手にわたっていくスモーキークォーツは怖さを感じた。和名は煙水晶で邪気を払う効果がある反面目まぐるしい変化を求める一面も併せ持つ。この石にとって持ち主は自分が彩り豊かになるための素材でしかない。手に入れたものは別人のようになってしまう。良い結果を生むか悪い結果を招くかは運か？

ネタバレキッチン用品メーカーを舞台にしたお仕事小説。新社会人の新津七雪は憧れていた株式会社シェフ工房に新卒で就職し、企画開発室に配属される。誰でもシェフの腕前にをコンセプトにしたアイデア満載のキッチン用品との出会いによって人生を変えた七雪は豊富な商品知識を駆使して奮闘する。自社商品を使ったことのない営業マン茨戸くんと結成した情報交換部によっておたがいのに有益な休日を過ごす。前向きに先輩と学び合う姿にほっこり。天才発明家の先輩・出町さんは頼もしい。企画開発室に厳しい製造部の主任にも臆することなく向き合う姿に好感。

ネタバレ伝言猫のふー太が活躍する第二弾はまさかのミステリーとの融合で雰囲気がガラリと変わっていた。舞台はクリスマスイブの閉ざされた雪の山荘に会いたい人からの伝言を待っている５人が集められた。登場人物全員が大雪に見舞われた山荘に閉じ込められたこの設定はクローズドサークル。外界との接触ができなくなったため今回はあの世に帰ることができない。想像力を働かせてふー太は名探偵になれるのだろうか？ 読者への挑戦状もあり楽しめた。殺人事件も起こらないのでご安心を❗都内でカフェを経営する猫好きの標野さんならではの意欲作だった。

ネタバレ前作の『じい散歩』は読んだはずなのに既読の履歴が残っていない❓ちっちゃいことは気にしない、それ、ワカチコ～♪ワカチコ～♪　続編は問題山積みの明石家のその後を描く。９０歳を過ぎて脳梗塞と認知症を患った妻・英子の介護を一手に引きうける夫の新平。大正生まれの矜持と健気なほどの一途さ。新平を奮い立たせるには当てにならない３人のバカ息子の存在。金を無心する三男の雄三の言動には呆れてしまう。本当にどうしようもないクズだ。いつまでも親離れをしないせいで全員が揃って老いていく。困難を笑い飛ばす御年９６歳の心労は続くな〜。

ネタバレ誰もがコロナによって自由を奪われていた時に気晴らしになればと始めた企画物。有川さんが「物語の種」を募集し読者からの投稿を短編小説に纏めた１０編は甲乙つけがたい。どんなお題でも有川さんがの手にかかればほっこり＆胸キュンするに違いない。レンゲ畑の写真から人生の折り返し地点を過ぎた夫婦を描いた「レンゲは赤いか黄色か、丸は誰ぞや」、 結婚４０年に妻に贈った４０本の薔薇の写真から着想を得た「百万本の赤い薔薇」、「胡瓜と白菜、柚子を一添え」のおだやかな夫婦と祖父母の歩みが好みだった。さくっと気軽に読めて楽しかった。

ネタバレ作者の描く多くの主人公は自分を卑下して悲観的な感情を抱えている。最初はとっつきにくい感じも同様で読むペースが遅くなった。職を失い生きる意味を見いだせなくなった槐と心を閉ざしたままの綸。草木染めや織物には人の心持ちがあらわれる。人の手で織りあがった布には命の名残がある。死ぬのが怖いから生きていた若き二人は一緒に暮らし染織をすることを通して成長していく。人にはまぼろしを追う自由がある。今作は二十代の女性・槐とその従兄弟・綸が抱える葛藤と人生の生きる意味を問う物語だ。ほしおさんの文庫人気シリーズとは一味違う。

ネタバレ両親から虐待され孤独な日々を送っていた１４歳の少女・沙耶。児相職員の渡辺と名のる男に誘拐され一軒家に監禁されてしまう。人質に対して美味しい食事と暖かな部屋、清潔な衣服と寝具が与えられる。身代金として二千万円要求する犯行声明を両親宛ではなく警察に送るのはなぜ？娘の危険よりも、身代金が奪われることが心配な両親は最低だ。正体不明の誘拐犯・渡辺は一体何者で真の目的は？紳士的な対応をする彼を信頼する沙耶が提案したクリスマスの一夜は幸せな夜だった。15歳のシンガーソングライターtuki.さんの晩餐歌の歌詞が浮かんだ。

ネタバレ加賀恭一郎シリーズ最新作は期待を裏切らず面白かった。セレブが集まる閑静な別荘地で起きた無差別連続殺人事件。犯人は動機を語らず事件の真相を見つけるために被害者遺族が集まり検証会を開く。参加した遺族全員に謎の人物から「あなたが誰かを殺した」というメモが送られていたことが判明。鋭い洞察力と嘘を絶対に見破る眼力を持つ加賀さんに嘘はつけない。大ドンデン返しが２度ある終盤はトイレに行く時間も忘れて一気に読んだ。めったに本を読まない妻が１日で読み切り、珍しく読後の感想を語り合った。こんなことは滅多に無いからビックリ❗

ネタバレ畑井は気の毒なくらいのお人好しで真面目なサラリーマン。勤務する会社の解散を言い渡され、辞令によっておよそ畑違いの総務部長に任命されてしまう。貧乏くじを引いてしまった畑井には心から同情する。解散に向けた手続きや残された社員の再就職の斡旋など誰もがやりたくないだろう。倒産に必要なのは胆力で解散に必要なのは忍耐力。心労が半端ではないはず。下手したら責任を追い込みすぎて悩み自殺しかねない。さらに元部下による２億縁持ち逃げ疑惑と元営業部長の非業の刺殺事件のWトラブルが発生。総務経験があるのでリアルに身につまされた。

ネタバレ自分では見ることができない位置にある耳。色んな角度から耳について知ることができる。幼少期は中耳炎になったり２０代でメニエール病になった経験もある。耳の複雑な機能や難聴、耳鳴り、聴覚過敏などの症状など知ることが出来て良かった。難聴によって認知症の発症リスクが増加する。補聴器を使用することで認知症の予防につながり一定の効果を示すらしい。健康保険の適用がない補聴器は補聴器外来で補聴器診断医に相談するのが良い。今まで分からないことも多くあったがわかりやすく書かれていて勉強になった。耳に関するコラムも興味深い。

ネタバレ離婚事件専門の弁護士・松岡紬。お互い話し合いで納得した離婚であったら紬のような弁護士は必要ではない。世の中にはすんなりと行かないケースは多い。解決するのは半年から一年もかかる離婚調停で８％、さらに一年以上かかる裁判で争うのが３％という。結婚の何十倍も労力がかかる。子供の親権と慰謝料や養育費の請求などの泥沼トラブルを断つためには頼りになる存在だ。３組に１組が離婚する時代。男女共通の離婚原因第一位は性格の不一致でストレスを感じて生活するよりも、離婚して自立したいと考える女性が増えている。縁切り弁護士続編希望。

ネタバレ冒頭からこれはヤバい感あり。２８年前の平成７年３月３０日に起きた長官狙撃事件は未解決の屈辱の７３３０と呼ばれており、すでに公訴時効を迎えている。犯行に使用されていたものと同じ銃弾が発見された。妻の沙月がこの未解決事件を追っていたことも明らかになる。妻の失踪との関連を疑う青井は公安の斉賀の協力得て行方を追う。現在の桐原警察庁長官が銃で打たれる事件が発生。主犯格の動機は？封印されたUメモの存在と公安部と刑事部との軋轢に隠された真相など次から次と事件の闇が明らかに。狙撃手の祈りの意味は本当に知るべきだったのか。

ネタバレ初読み作家さん。古典ミステリーが好きな小学校教師の楓が主人公の６つの連作短編集。レビー小体型認知症を患っている祖父の介護をしている。祖父は幻覚が見える症状がありながらも楓が持ち込むミステリー相談をいとも簡単に解いてしまう凄腕の名探偵。話を聞いただけで謎を解いてみせるという安楽椅子探偵物ではあるのだが超高齢社会の世相を現している。こんな謎解きの方法は新鮮。楓の同期の岩田先生と劇団員の四季の会話が軽妙で楽しい。物語は面白くなければなんの意味もない。ミステリー愛に溢れた作品で面白かった。とくに装丁が素敵だね。