「薤露行」テニスンの詩を元に漱石が描いたアーサー王の世界。ランスロットは王妃ギニヴィアと密会し、シャロットを恋に狂わせ、エレーンを自殺に追い込む。ウォーターハウスの絵画「シャロットの女」と違い、薤露行ではエレーンの亡骸が舟で流されカメロットに流れ着く。肝心のランスロットは闘いで怪我を負い、発狂してどこかへ行ってしまう。シャロットの呪いなのか！「細やかに斑を流したる大理石の上には、ここかしこに白き薔薇が暗きを洩れて和かき香りを放つ」何とも不思議な話だったが漱石の美文は堪能できた。

「良いことも悪いことも過ぎ去ったことには執着しない。無駄なことや余計なもの=執着心は手放す」この手の本は、どなたが書かれても同じ内容のような気がする。でも疲れた時に無性に読みたくなる。そしていつのまにか心が軽くなっている。

池央耿さんの訳にしては読みづらかった。主人公である亡命貴族のダーネイより、身を持ち崩した弁護士カートンの存在感が光っている。ダーネイの妻となるマネットは優しく美しく、カートンは自分の身を捧げると誓った。この後嫌な予感しかしない…。カートンにも幸せになって欲しいのだが。

期待外れだった。純粋にホームズとワトスンを楽しみたい読者にはお勧めしない。あれこれ盛り込み過ぎ。

「薤露行」テニスンの詩を元に漱石が描いたアーサー王の世界。ランスロットは王妃ギニヴィアと密会し、シャロットを恋に狂わせ、エレーンを自殺に追い込む。ウォーターハウスの絵画「シャロットの女」と違い、薤露行ではエレーンの亡骸が舟で流されカメロットに流れ着く。肝心のランスロットは闘いで怪我を負い、発狂してどこかへ行ってしまう。シャロットの呪いなのか！「細やかに斑を流したる大理石の上には、ここかしこに白き薔薇が暗きを洩れて和かき香りを放つ」何とも不思議な話だったが漱石の美文は堪能できた。

看板に偽りなし。心が軽くなった。自己啓発本を読んで自分を奮い立たせたい時もあれば、疲れてホッとしたい時もある。そんな状況の時に読むとスッと入ってくる。【さぞ苦しいだろうから「大したことのない自分」を生きればいい】【生きるか死ぬか以外は大したことではない】【自分が、自分がと考えない】そんなのでいいの？と思わなくもないが、頑張り過ぎてしまう人には丁度良いのかもしれない。お勧め。

「倫敦塔」三十頁にも満たないが味わい深く何度も読み返したくなる。改めて英国の血塗られた歴史に恐怖を覚えた。冒頭「塔の見物は一度に限ると思う」と書いた心情が分かる気がする。特に好きなのは漱石が有名な絵画を思い描きながら想像を膨らませる場面。【エドワード王の息子たち】今も謎に包まれた幼いエドワード五世と弟リチャードの幽閉と暗殺。「朝ならば夜の前に死ぬと思え。覚悟をこそ学べ。見苦しき死に様ぞ恥の極みなる…」ああ胸が痛い。英国王室の黒歴史－圧倒され恐怖を覚えずにはいられない。なのに強く強く惹かれるのは漱石だから。

格言や名言について五木寛之先生が思いを語ったもの。【人生の目的は魂の世話をすることだ】ソクラテス　【苦手な人を必ず仲間に加えておく】石岡映子/グラフィック・デザイナー　【働く女性の美しさなどというものはない。働く人間の美しさがあるだけだ】福田恆存　小林秀雄が言っている「美しい花がある。花の美しさというものはない」を思い出した。五木先生、これからも長生きしてさらに作品を書いて下さい。