ああ。成瀬はやっぱり成瀬だった。前作から一年弱、続編と言えど『天下を〜』と時系列がごちゃ混ぜになってる部分もあるので、ふたつでひとつ方式で読んでも問題なし。ブレずに我が道を突き進む成瀬あかりと、その周囲の人たちの連続短編集。成瀬のこの人間力と地に足をつける体幹の強さは、一体何処から来たのだろう。大学での成瀬も、社会人になった成瀬も、何ならその先も、ずーっと応援し続けたい！ 読後、私の中の隠れた成瀬が、「やってみれば良いじゃないか」と囁きかけてくる。

面白い！ Aカップにコンプレックスを抱く女性たちの短編4篇。読友さんのご感想に惹かれて手にした初読み作家さん、奇妙さもありつつ何処か幻想的でとても良かった！ 推しとグラビアアイドルとの結婚に心掻き乱される女性を描いた『EあるいはF』、変質者は自分だと名乗り出た主婦の意図『ブラ氏の告白』、偽物だと言われ続け授乳室に籠ることになった女性が何故か感動的な結末を飾る『授乳室荒らしの夢』、とある女子高生の厄介で歪んだ恋心『胸は育たない』。 ゾワゾワ感は無いけど、何となく今村夏子さんの作品を思い出す。癖になりそう。

ああ。成瀬はやっぱり成瀬だった。前作から一年弱、続編と言えど『天下を〜』と時系列がごちゃ混ぜになってる部分もあるので、ふたつでひとつ方式で読んでも問題なし。ブレずに我が道を突き進む成瀬あかりと、その周囲の人たちの連続短編集。成瀬のこの人間力と地に足をつける体幹の強さは、一体何処から来たのだろう。大学での成瀬も、社会人になった成瀬も、何ならその先も、ずーっと応援し続けたい！ 読後、私の中の隠れた成瀬が、「やってみれば良いじゃないか」と囁きかけてくる。

『生きづらさを克服しようの会』略して『生きづら会』。子どもは欲しいが恋人はおろか友だちすら出来ず職場でも浮いている奈月が提案した会に集った人たちの物語。ハゲの非モテ男、不倫の末のセクハラ犯罪者、マウント取りたがり泥棒女。それぞれがただ語る会が、それぞれの心を軽くし、不思議な関係性を生み出していく。それで生きづらさが消えるわけじゃないけど、折り合いをつけて日々を乗り切る為に絶対必要なのは、笑い合える仲間、「死にたい」と言える仲間、それを全力で心配してくれる仲間。これ、家族じゃ無理なんよね。

ドラマも知らず予備知識ゼロで読み始めたもんだから、タイトルと装丁から想像してた物語とはどんどん違う方向に転んでいって驚いちゃった。私たちと何も変わらない何処にでもいるはずの小さな家族が、ただ"家族である"という事実を守るために国と戦う物語。あまりにも理不尽で一方的。悔しくて切なくて読むのが辛いほどだったけど、"わたし"と"きみ"との間に確かな愛情があるのを感じ取っていたので、絶対にハッピーなラストになるはず！ と信じてた。でも…これは物語だからこの結末を迎えられただけで、実際は？？ 人権って何なんだろう。

ティーンズの新刊棚より、好きな作家さんだらけで思わず手に取る。各作家さんの他作品集に収録されたものの中から、編者の瀧井朝世さんがテーマを決めて厳選した4篇。4分の3は既読だけど、何度読んでも心揺さぶられる良い作品ばかり！ チョイスが良過ぎる！！ タイトルには『恋の物語』とあるけど、どちらかと言えば家族の絆に重点が置かれているものが中心。装丁と内容が一致していないのは気になるところ。 唯一の初読み、木村椅子さんの『ウミガメみたいに飛んでみな』も、人間の可愛らしさが溢れ出ていてとても好きだった。満足！

世界記録を出すという夢を怪我で諦めた伊澄と、同じく挫折経験を持つ車いすユーザーの六花。入学式の朝に出会ったふたりの成長記＆胸きゅん初恋物語。あまーーーーーい！！ 障がい、自覚のない差別意識、人付き合い、知らない事に出会った時の戸惑い。高校生たちが積極的に意見する様子はなかなかの見もの。私なら…など、彼らと共に考えることで少しは視野が広かったかも。私たちが暮らす場所には、色んな人がいて色んな考えがあるのが当たり前。読み終えればきっと、「カラフル」という言葉が好きになる！

350年の歴史を持つ老舗「三越百貨店」を舞台にした、6名の作家さんによるアンソロジー。超豪華！ その上最終話であの湯川先生にまで会えてしまうとは！！ 全体的にファンタジー要素強めなのは、三越が持つ夢の舞台感と歴史や伝説、重厚さを意識したためかしら。 スーパーヒーロー登場⁈の『Have a nice day!』（伊坂幸太郎さん）と、お茶目な母の迷子騒ぎを描いた『雨あがりに』（阿川佐和子さん）がお気に入り。

30歳を超えた売れない芸人・御子柴が、番組企画で棒高跳のマスターズ競技会優勝を目指す物語。相方の富永、裏がありそうなオリンピック代表候補・犬飼、日本初のポールを開発中の狐塚、番組プロデューサーの綿貫。それぞれに事情を抱えながら、軽やかに楽しげに問題を乗り越えていく。夢の、その先にあるものとは。 爽やかなラストもめちゃくちゃ好み！！ 案外簡単なことで、人生は面白く転がっていくのだ。この先の彼らのドタバタも見えるようで、なんだか心が温まる。

戦中から戦後、元槍投げ選手の小学校教員・悌子を中心にした心温まる家族小説。読みやすく面白く、泣いたり笑ったりしながら560ページを軽々読了。核家族しか経験がない私には眩しいと感じる部分の多いこと！ 家族が煮詰まっても他の誰かが気をかけてくれる。足りないところを補ったり弱みを見せられる相手がいたり。悌子をはじめ権蔵も清太も富枝もケイも朝子も、どのキャラも実に人間味があって良い…大変なことばかりの日々を共に過ごす誰かがいる有難みを、ひしひしと感じた。最高！