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2024年4月の読書メーターまとめ

Fumitaka
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2024年4月に読んだ本
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2024年4月のお気に入られ登録
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2024年4月にナイスが最も多かった感想・レビュー

Fumitaka
ドラマ版では「貧乏神との戦争」と表されていた窮乏生活のほか、水木しげるが受け取っていた傷痍軍人の恩給は母を安心させるため境港の実家に全額送っていた(p. 58)とか出征時に受け取った沢山のお守りは「神様が喧嘩するかもしれない」という理由で海に捨てた(p. 82)など、本人の著書の中では触れられていない貴重な証言も含まれる。仕事の落ち込みを受けて妖怪など「いないのかもしれない」(p. 201)と大作家が弱音を吐いたこともあるなどの話も。ここだったのか。
Fumitaka
2024/04/09 23:50

しかしこう克明に極貧生活を描かれてくれるのはありがたい一方、これを読んで選択肢の自由や機会の平等みたいな話題に多少考えを及ばせる人間は豊葦原中津国ではどれくらいいるだろうか。水木しげるという巨人が生き残ったことには、本人の才覚も当然あっただろうが、「運」も相当にあったであろう。「新自由主義」という言葉の定義に曖昧な部分も含まれることはすでに指摘されているが、それを「平等や再分配を重視しない、もしくは軽視する資本主義」と仮に定義するならば、水木しげる当人はそういったものに明確に否定的であったように思われる。

が「ナイス!」と言っています。

2024年4月の感想・レビュー一覧
8

Fumitaka
かつて我がロシア史の先生も「『ロシアらしさ』のようなものがあるとすればモンゴル帝国からの独立の過程で形成された」と講義で述べられたことがあり、まさにその経緯を平易かつ詳細に記述。『ボスニア内戦』では「民族と宗教の問題は後から来た」と述べられていたわけですがモスクワ大公国のロシア統一は、モンゴル帝国の後ろ盾がウラジーミル大公やモスクワが同じロシア人の競争相手を排除していく上で不可欠であったことなど、少なくとも「民族」は国家の統一や権力の統合には明確に関係がないことを再確認しているように思います。
Fumitaka
2024/04/10 23:30

ロシアの「強大な君主制」もまたモンゴルからの独立の過程で形成されていったことが記述される。ルーシの諸公国の間で合従連衡や謀殺が入り乱れる様は非常に込み入っていて凄惨でもある。しかしそれは関ヶ原の戦いや戊辰戦争とも共通しているのではないだろうか。あとどこかでイヴァン三世のリアリズム路線が、父親が捕縛されて目を潰されたりしたことに由来するのではないかと書かれていた。すでに確立したシステムが代表者を作り出すこともあるが、同時にパーソナリティが後の出来事に作用することもある。

Fumitaka
2024/04/10 23:31

「ジュガシヴィリが独力でことを始める前に、ラド・ケツホヴェリは彼にとって、大胆な職業的革命家の模範となった。……スターリンは、ラドの独立した革命的偉業と存在──他のすべてはほとんど、独裁者か、その他の人物に結びつけられるよう修正されさえした──とを抹消しなかった(ラドの生家は、ソヴェト・グルジヤを特集するニュース映画の中に含められることになる)」(S. Kotkin, “Stalin: Paradoxes of power, 1878-1928”, Penguin Press, 2014, p. 55)。

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Fumitaka
ドラマ版では「貧乏神との戦争」と表されていた窮乏生活のほか、水木しげるが受け取っていた傷痍軍人の恩給は母を安心させるため境港の実家に全額送っていた(p. 58)とか出征時に受け取った沢山のお守りは「神様が喧嘩するかもしれない」という理由で海に捨てた(p. 82)など、本人の著書の中では触れられていない貴重な証言も含まれる。仕事の落ち込みを受けて妖怪など「いないのかもしれない」(p. 201)と大作家が弱音を吐いたこともあるなどの話も。ここだったのか。
Fumitaka
2024/04/09 23:50

しかしこう克明に極貧生活を描かれてくれるのはありがたい一方、これを読んで選択肢の自由や機会の平等みたいな話題に多少考えを及ばせる人間は豊葦原中津国ではどれくらいいるだろうか。水木しげるという巨人が生き残ったことには、本人の才覚も当然あっただろうが、「運」も相当にあったであろう。「新自由主義」という言葉の定義に曖昧な部分も含まれることはすでに指摘されているが、それを「平等や再分配を重視しない、もしくは軽視する資本主義」と仮に定義するならば、水木しげる当人はそういったものに明確に否定的であったように思われる。

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Fumitaka
トリハダただのノリのいい兄ちゃんなのかと思ってたらそんなに有名人だったのか。エレナ様の取り巻き二人は、僕は勝手にドラクエ5になぞらえて「ジャミとゴンズ」と呼んでましたが黒髪の方には「しずか」という名前があると判明。一巻のいじめの場面が強烈すぎて俺が気がついてなかっただけかもしれない。お前らなんでいつまでも女王様に従ってるんだ? 僕は野蛮ですからすぐ「反乱を起こせ」とか思っちゃうんですが、エレナ様の親の会社で親が働いてるとかですかね。独裁体制は無関心と諦観によって支えられる(ハヴェル)というのも事実である。
Fumitaka
浜岡先生は春巻が高速道路で遭難する話が気に入っているとのこと(p. 169)。俺も生まれて初めて読んだ巻に入っているので印象に残っている。それにしてももう数十年連載しているのであり、すごい色んなキャラクターというかネタを使って来たんだなと改めて圧倒される。サブキャラと初登場時の話がリスト化されている「ALLキャラ図鑑」は圧巻だが、田中さんがサブキャラ扱い(p. 104)なのは少し意外。花子と同程度にはレギュラーだと思ってた。大鉄の幼馴染のアベベは初登場の話が描かれる前に出版されたらしく収録されていない。
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Fumitaka
『ゲゲゲの女房』より先にこっちを読んでしまった。前半部では水木しげる御大の死の前後状況について詳しく触れられている。最晩年には頑健な肉体にもいくらか不調が現れていたとのこと。冗談のつもりで「昼間に眠い」と言ったら重度の睡眠時無呼吸症候群だった(p. 26)というのは怖い。お恥ずかしながら僕もつい先日お墓参りに出向かせていただきました。今日『『ガロ』掲載作品集』が手元に届いたんですが、京極夏彦先生が監修されたという葬儀場の花輪は確かに短編『丸い輪』に登場した輪に似ている(p. 63)。
Fumitaka
2024/04/09 19:40

猫娘が最新型に変貌していたことで有名な2018年のアニメ版鬼太郎について届いた感想で「顔芸」という言葉が用いられている(p. 134)。この表現を自分は半分ネットミームではないかと思っていたので「今はこの言葉も市民権を得たのだな」と妙に感慨深い心地になった。同じ章では鬼太郎が相手の妖怪を殺さない(p. 133)という点について触れられている。確かに自分が覚えている限りのアニメ版では、そういった展開も皆無ではなかった気がするが、直接的に相手の滅びを描く場面は確かに少なかったように思われる。

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Fumitaka
加瀬くんの本命はお姉さんのようにしか見えないというかお姉さんの幸せが彼の幸せであるように見えるが、主人公にちょっかいを出してもいるのは本当に単なるちょっかいだけのつもりなのだろうか。ところでこないだ『機動警察パトレイバー』という古典文学に本当に生まれて初めて触れた訳ですが、近藤店長がパトレイバーに登場する後藤さんというキャラを思わせるとどこかで言われていた理由をやっと理解した。しかし店長の方はハゲとか(p. 91)も微妙に描かれているあたり「おっさんを描きたい」という眉月じゅん先生の決意を感じる。
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Fumitaka
いま再放送中の『ゲゲゲの女房』にも登場した戦後日本における表現規制推進派の活動をまとめられている。「善意」や自主規制から始まった民間の行動がとにかく規制を強め介入の機会を増やしたい行政当局に利用される(p. 90、p. 116)という構図が繰り返されてきたのであって、その根源は「国家主義、権威主義、刑罰主義、モラルの強調」(p. 258)が支配的な日本社会にあるとする。とにかく「青少年への悪影響」を必ず規制推進派が主張して来たということは繰り返し指摘されている。東欧圏でいう「風紀紊乱」という奴だ。
Fumitaka
2024/04/09 03:32

人間が新しいメディアを「性的乱倫」を理由に侮蔑するという伝統的な偏見の形をどうしても克服できない様を克明に記されるのは自分としても人間をやめたくなって来るが、こういった経緯を記録していただけるのは有意義であり感謝したい。あと民間の漫画排斥運動に宗教団体が関わっていた事例もあることが指摘される。みんな大好き統一教会も登場(p. 236)。漫画や出版業界が攻撃されやすい理由としては、テレビや新聞と違いOB政治家の後ろ盾がない(pp. 78-9)という指摘は重要。コネの有無が生死を分けるのは西側でも同じらしい。

Fumitaka
2024/04/09 03:34

自民党は一貫して規制に賛成の姿勢であったようだ。あと枝野幸男が曖昧な条文のまま通されそうになった単純保持を禁止する法案に抵抗した(p. 25)という指摘は重要。もうイラク戦争に反対していたイギリスの音楽家が児童ポルノを送りつけられ逮捕された(p. 66)という、政敵を黙らせるためにそういう法律を使うというのがある訳で、それはどう考えても悪用であり恣意的な運用を許す法案は危険でしょう。昔の東ヨーロッパ圏で異論派が次々に精神病院に放り込まれて、国連から「何かおかしい」と突っ込まれたような奴です。

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Fumitaka
恐らく沼野充義先生は日本では唯一の「スラヴ文学者」であり、「アカデミックな論証」(p. 197)と、あえてそれを踏み越えたエッセイ的な部分が混ざる「越境者」の文学論集となっている。リモーノフはロシアの極右の親玉としか知らなかったがアメリカ亡命経験のある元文学者(p. 32)らしいことは知らなかった。沼野先生が訳されているようで目を通しておきたい。スターリンの故郷については『ロシア文学の境界』(p. 485)までは「グルジア」表記が採用されている。
Fumitaka
2024/04/09 01:34

本書で知った文学者の中でも面白そうなのはドヴラートフで、収容所の警備員などを努めつつもソ連から追放されアメリカで没し、言語と言語圏という領域を奪われたのちはこの世に「世界文学」(p. 33)しか存在しないという真理を悟ったというド根性の持ち主である。前に映画をやってるのは知っていたが知らない作家なので見なかった。惜しいことをした。彼も1970年代に出国を許されたユダヤ系の一人(p. 310)だといい、ベニオフの『卵をめぐる祖父の戦争』で主人公の祖父母がソ連を出てきたというのはその辺が元ネタかもしれない。

Fumitaka
2024/04/09 01:57

あと帝政時代のロシアにはフレデリック・トーマスという、アメリカ南部からわざわざ世紀末のモスクワに出向いて行き、最終的に革命の動乱で築き上げたものを失いイスタンブールで没したという「冒険小説」のような人生を送った黒人がいたらしく(pp. 227-8)、『蝶と帝国』という日本の作品にはロシアでレストランを開いているアメリカ出身の黒人という人物が登場し、ひょっとして元ネタだろうか。沼野先生のアメリカ時代の恩師が書いた本の和訳があるそうで確認せねばならない。

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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2018/11/23(2008日経過)
記録初日
2018/10/31(2031日経過)
読んだ本
1661冊(1日平均0.82冊)
読んだページ
392230ページ(1日平均193ページ)
感想・レビュー
1644件(投稿率99.0%)
本棚
13棚
性別
年齢
35歳
血液型
O型
URL/ブログ
https://www.pixiv.net/member.php?id=6253073
自己紹介

東ヨーロッパとか吸血鬼とか好き。(25. 11. 2020)自分が始めるきっかけになった先達の人々にページ数が追いついたので、試験的に漫画も登録開始。途中で「反則」と感じたら消すかもしれません

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