書名や表紙のお堅い印象とは裏腹に、第一章から、『オデュッセイア』をじわじわイジりつつ、『旧約聖書』に勢いよくツッコんでおり、翻訳の影響かも知れないが、コミカルですらある。しかし、過去の様々な作品について、一見、何でもないような文体や題材の特異性や革新性を、ほかのテクストと比較することで次々と明らかにしていく、その手際は鮮やかというほかない。読んだことのない作品ばかりだったので、とりあえず、ダンテの『神曲』とボッカチオの『デカメロン』を買った。ホメロスも読みたい。 2024-04-01/2024-04-08

フローベールの『ボヴァリー夫人』を扱った第十九章に「エンマ・ボヴァリー」なる文字列を見つけた時、蓮實重彦が『「ボヴァリー夫人」拾遺』で、その固有名詞が「テクストには書かれていない」ことを無視する「フィクションの理論家たち」を痛罵していたのを思い出した。しかも、続く第二十章は、『「赤」の誘惑』で、「意識の流れ」以外の部分に関する複数の見落としを鋭く指摘されていたのだった。とはいえ、本書全体は「何ともみごとだというほかはない」と評されており、この点、全く同感である。 2024-04-09/2024-04-28

書名や表紙のお堅い印象とは裏腹に、第一章から、『オデュッセイア』をじわじわイジりつつ、『旧約聖書』に勢いよくツッコんでおり、翻訳の影響かも知れないが、コミカルですらある。しかし、過去の様々な作品について、一見、何でもないような文体や題材の特異性や革新性を、ほかのテクストと比較することで次々と明らかにしていく、その手際は鮮やかというほかない。読んだことのない作品ばかりだったので、とりあえず、ダンテの『神曲』とボッカチオの『デカメロン』を買った。ホメロスも読みたい。 2024-04-01/2024-04-08