読書メーター KADOKAWA Group

2024年5月の読書メーターまとめ

tenori
読んだ本
8
読んだページ
2815ページ
感想・レビュー
8
ナイス
774ナイス

2024年5月に読んだ本
8

2024年5月のお気に入られ登録
2

  • ダイキ
  • Yama#カウンセラーですぅ。

2024年5月にナイスが最も多かった感想・レビュー

tenori
1981年、母親とその恋人の振る舞いから逃れ、理佐18歳にして妹の律8歳を連れ家を出る。蕎麦屋の求人票に記された「鳥の世話じゃっかん」山あいの街で姉妹とヨウムのネネが育む長い物語の始まり。人と人との関わりが希薄になり、相互監視の風潮すら漂う時勢。誰かに頼る、それを誰かに還元する。そんな利他の連鎖は形式上の家族よりも強い繋がりを作る可能性がある。制約は時に自由であること以上に道を示す可能性がある。可能性があるならば生きるべきだ。姉妹とそれに関わる人々の40年間を描く長編は、そんな示唆と勇気をくれる良書。
が「ナイス!」と言っています。

2024年5月の感想・レビュー一覧
8

tenori
これは何なんだ、何なんだと読み進めていたら終わってしまった。終盤の匂わせに期待を寄せる読者に対して事実を求めることの拒否。梯子を外されるとはこのことだろう。ダンボールをかぶり街を徘徊する世間から抹消された存在。素顔を隠し箱の中から世界を覗き見する箱男による手記が『箱男』である。一般的に他者から「見られる」ことへの嫌悪に対し「見る」ことへの欲と興味は果てしない。コロナ禍での自粛警察、情報化社会でのSNSを通じた攻撃や圧力。そういった現代を風刺するかのような作品が1973年に書かれていたことに驚く。
が「ナイス!」と言っています。
tenori
『ほとんど死ぬことだけを考えて生きていた』冒頭の一節と巡礼という言葉が示すように、ある意味で宗教的な要素を感じさせる内容。多くの村上作品がそうであるように、深読みしようと思えば解釈に果てはないのでしょう。完璧な調和を構築していたはずの仲間から疎外された一人の男性が喪失から再生へ向けて自己探求する過程を描いた作品と要約できるのですが、肝となるのが登場人物の名前に由来する光の三原色との関連性。色彩に人格を持たせる発想が文学でありながらアートの領域だなと感服。
が「ナイス!」と言っています。
tenori
今週三冊目のエッセイ集は長濱ねるさん。彼女は私の半分も生きてはいない。若いのに硬い言葉を選んでくるなという印象。それが『自分が何者で何を目指しているのかはっきりせず、世間と足並みがそろっていない』ことに抗うための鎧のようにも感じるが臆するな。私など未だに自分が何をしたいのか明確でないままだが「みんなと同じ」よりはよほど健全だ。たゆたうと言えば無責任と感じる向きもあるかもしれないけれど、言葉として表現した瞬間に生じる責任を彼女はしっかり理解しているだろう。ほどよい距離感を保った共感性のあるエッセイ。
が「ナイス!」と言っています。
tenori
じんわりと脳に効いてくる感じのエッセイ集。【人と関わることは恐いが、関わらないと意思表示することは更に強い恐怖をもたらす】と前置きした上で【自分にとって『心』と『想像力』を放棄した者は例外を認めず『豚』なのである】と綴る。この作品で唯一とも言える過激な表現に又吉直樹という人物の矜持を感じとることができる。東京での生活を記録していながらノスタルジックな印象を受けるのも不思議で、言葉のセンスだったり、喩え方が独特で楽しく、ここで彼が芸人だったのだと自分の中でオチをつける。
が「ナイス!」と言っています。
tenori
2021年の「ひみつのたべもの」以来となる待望のエッセイ集は小説トリッパーへの連載プラス書き下ろしで表現者・松井玲奈の内面が伝わってくる内容です。一人で過ごす時間が好き。食べるのが遅く興味がないことには無関心。時に激しく落ち込み、プリッツを愛する彼女は自分の好きなことにはひたすら真っ直ぐ。そういう人が演じ、書くことを生業としているのだから、多重人格的な落差が出てくるのも必然で、作家としての彼女を推している私としては「カモフラージュ」や「累々」のような妖しげな作風の小説が待ち遠しくて仕方がないのです。
が「ナイス!」と言っています。
tenori
著者デビュー作。秀才だが引きこもりの探偵役・嗄井戸と留年の危機に直面した助手役・奈緒崎(どちらも大学生)がさまざまな映画を背景にした事件を解決していくライト感覚のミステリー。全編にわたって映画が事件解決の鍵になっているが、単に場面をなぞるだけでなく興味深い蘊蓄がちりばめられているところも魅力的。大学在学中に著者が置かれていた状況(文学への傾倒と留年)が登場人物に投影されているのが面白い。客観的に描かれる第1話から第3話までと探偵が引きこもる理由が明かされる第4話との温度差に斜線堂有紀の原点を感じる。
が「ナイス!」と言っています。
tenori
「黄色い家」は高校生世代で主人公の花、そして蘭と桃子の三人がその瞬間を生き抜いた青春小説だ。結果的に破綻してしまう彼女たちの行為や善悪を論じること以上に、登場人物たちの生きざまやその背景にあるもの、時間の流れを想像するべきだろう。貧困やヤングケアラーなど格差の問題。昼夜働いても貧しさに追われる者と、労せずに富を持つ者との『カネ』に対する価値観。必要悪とも言われる反社会的勢力の存在。在日外国人への偏見と差別。そもそも家族の定義とは何なのか。そういった問いかけに向き合わされる重厚な作品。装幀も印象的。
が「ナイス!」と言っています。
tenori
1981年、母親とその恋人の振る舞いから逃れ、理佐18歳にして妹の律8歳を連れ家を出る。蕎麦屋の求人票に記された「鳥の世話じゃっかん」山あいの街で姉妹とヨウムのネネが育む長い物語の始まり。人と人との関わりが希薄になり、相互監視の風潮すら漂う時勢。誰かに頼る、それを誰かに還元する。そんな利他の連鎖は形式上の家族よりも強い繋がりを作る可能性がある。制約は時に自由であること以上に道を示す可能性がある。可能性があるならば生きるべきだ。姉妹とそれに関わる人々の40年間を描く長編は、そんな示唆と勇気をくれる良書。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2019/01/01(1986日経過)
記録初日
2019/01/02(1985日経過)
読んだ本
627冊(1日平均0.32冊)
読んだページ
159021ページ(1日平均80ページ)
感想・レビュー
627件(投稿率100.0%)
本棚
14棚
性別
年齢
54歳
血液型
B型
職業
技術系
現住所
岩手県
自己紹介

年間100冊は読みたい。読んだ本は少しでも感想を残すこと。気にいったフレーズは記録しておくこと。
そんな目標から2019年、読書メーターをスタートさせました。
通勤時間を利用して実用書(←車通勤になったのでできなくなってしまった)を、就寝前や休日は小説・文芸書を。平行して読み進めるようにしていますが、速読派ではありません。
たまにFBでも発信。

読書メーターの
読書管理アプリ
日々の読書量を簡単に記録・管理できるアプリ版読書メーターです。
新たな本との出会いや読書仲間とのつながりが、読書をもっと楽しくします。
App StoreからダウンロードGogle Playで手に入れよう