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2024年5月の読書メーターまとめ

カノープス
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2024年5月に読んだ本
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2024年5月のお気に入られ登録
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  • Kircheis

2024年5月にナイスが最も多かった感想・レビュー

カノープス
初読み作家。言葉への怒り。欺瞞的な社会、軽々しい言葉への怒りに打ちのめされる。【日本では社会に障害者はいないことになっている】【その特権性に気づかない『本好き』たちの無知な傲慢さを憎んでいた】。この著者からの投げかけは読者の安易な言い逃れを許さない。決然とした態度とユーモア…というよりチャーミングな悪態と言いたくなるキレキレのテクスト。とにかく表現が巧みであり、次に何を書くのか非常に楽しみになる。個人的には原寮の引用をしている時点で、もうこの人を信用したくなる。これだけ強い小説は久しぶりだ。
山川欣伸(やまかわよしのぶ)
2024/05/14 13:55

この作品は言葉の力強さと切れ味の良さに惹かれますね。障害者の存在を無視する社会への批判は痛烈で、読む者の心に強く訴えかけてきます。ただし、その言葉の鋭さは決して単なる攻撃性ではありません。むしろ、作者の思慮深さとユーモアが作品全体に溶け込んでいる点が印象的でした。

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2024年5月にナイスが最も多かったつぶやき

カノープス

2024年4月の読書まとめ 読んだ本:19冊 読んだページ:7242ページ ナイス:157ナイス #読書メーター https://bookmeter.com/users/957397/summary/monthly/2024/4

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2024年5月の感想・レビュー一覧
17

カノープス
初めて一冊の本としてまとまったものを手に取ったが、『Number』連載のエッセイなどで書き手としての力量を示していた著者なので、内容は保証付き。映画製作に関するとっかかりから細々した現場の苦労まで、これは映画好きや映画づくりに関わりたい人には非常に参考となるのではないだろうか。自分はそれほど映画に興味は無いが、それでもこのコロナ騒動と同時並行で進めた映画づくりの貴重な記録としてもひとつの映画論としても面白く読んだ。そして、監督が語る役所広司と八千草薫の凄み。プロの役者論として、とても興味深く読んだ。
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カノープス
水を巡るイメージ。これは恐怖についての話ではない。ペットボトルからバスタブを満たす湯から雨になり川になり豪雨による氾濫に至る。清潔で平穏な生活に訪れる【耐え難い体臭】をフィルターに少しずつ世の中とズレていく流れが秀逸。登校する児童を見て【列を乱さず一列で進んで行く。二列にならないよう厳しく言われ、それをきちんと守っているのだろう。わたしたちもそうしてきたように】という衣津実のモノローグは象徴的。この列からズレた時、世間はどう反応するかの興味深いショーケースだろう。この人の持つ哲学的な思考の面白さは貴重だ。
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カノープス
初読み作家。どんな人生にも雨の日はある。振り返れば辛いことばかりと思っていたもの、自分は損ばかりして他人は勝手で世の中は冷たくて…。すべては思い上がりで勝手なのは自分であったことを人生の最期に思い至る。本書はある痴呆症の老女が辿り着いたSecret Samadhi。老女の意識が作り出す世界の見え方の絵解きがされる毎に切なさは募る。この精神世界と現実の溶け合い方の上手さに唸った。加えて繰り出すエピソードの並びの良さ。AがあってBがきてCになる。この語り方の順番の妙。早く次が読みたい書き手だ。
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カノープス
久しぶりに読んだ志水辰夫は変わることない志水辰夫だった。一切説明無く始まる書き出しから徐々に話の背景と全体が見えてくる構成。この突き放し方がシミタツらしくて良い。後ろめたい過去を背負って生きてきた男達を描かせたら抜群である。いつも読んでいて感じるのは藤沢周平に近い感覚。大げさでなく、【藤沢周平が書いた現代もの】ではないかと錯覚するような瞬間があったくらいだ。収められた8編が過去と向き合うものばかりなのはどうしたものかと思ったが、あとがきを読んで納得。タイトルの意味も含めて胸に落ちる気がした。
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カノープス
小池真理子が小池真理子に求められるものを書くとこうなる、という典型のような。要するに、オシャレな生活をしてちょっと難しい本を読んだり映画を観ていて、好きな音楽はジャズやクラシックでなければならない人々。そうした人達の周りに起こる恋愛模様である。決して西村賢太のように、赤貧洗うが如しの最底辺な人を描く事はない。そんなものは小池的世界に似合わないしファンも求めていない。ある意味で予定調和な短編集だが、【パロール】の居酒屋を営む夫婦のキャラクターは私に新鮮な驚きを与えた。この引き出しをもっと見せて欲しい。
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カノープス
初読み作家。昭和35年の作。戦争に狂わされた人生。貧民病院の風景。社会が許容する不合理とその象徴について。階級差別について。一つの不幸に囚われすべてのものを不幸な目で見る男と一つの幸福に囚われ他のことに目を向ける事を拒否した女。時代背景から知る風俗はとても興味深い。作品に登場する女達の哀しい人生…これを書かないで何を書くのか、という黒岩が自らに課した作家的使命のようなものを感じた。綺麗事の世界ではない。ドロドロとウス汚れて煤けた大阪の現実を紙に載せようとしたのだ。
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カノープス
桂望実の上手さは「書かない」ところにあり。本作でも多くの読者の興味は、愛という少女のその後についてだと思うが、そのポイントが進展しそうな気配を漂わせながら、最後まで引っぱった。章が進むごとに「えっ?」と思わせる展開を見るが、少々強引かも。特に失踪の真相については、悪い意味でびっくりしてしまった。この人の本で気になるのが、セリフの前に「私は尋ねた」等の一文が割と頻繁に入る事。もはや手クセなのだろうが、これは必要なのだろうか。読んでいれば誰が尋ねたかバカでもわかる。なにかリズムを崩すだけで邪魔に思うのだが。
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カノープス
初読み作家。言葉への怒り。欺瞞的な社会、軽々しい言葉への怒りに打ちのめされる。【日本では社会に障害者はいないことになっている】【その特権性に気づかない『本好き』たちの無知な傲慢さを憎んでいた】。この著者からの投げかけは読者の安易な言い逃れを許さない。決然とした態度とユーモア…というよりチャーミングな悪態と言いたくなるキレキレのテクスト。とにかく表現が巧みであり、次に何を書くのか非常に楽しみになる。個人的には原寮の引用をしている時点で、もうこの人を信用したくなる。これだけ強い小説は久しぶりだ。
山川欣伸(やまかわよしのぶ)
2024/05/14 13:55

この作品は言葉の力強さと切れ味の良さに惹かれますね。障害者の存在を無視する社会への批判は痛烈で、読む者の心に強く訴えかけてきます。ただし、その言葉の鋭さは決して単なる攻撃性ではありません。むしろ、作者の思慮深さとユーモアが作品全体に溶け込んでいる点が印象的でした。

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カノープス
心身に異常をきたして開店休業状態だった佐々涼子は本作で復活してみせた。【人は生きてきたようにしか死ぬ事ができない】。在宅医療の現場で多くの看取りを経験した医師や看護師が到達したこのテーゼの意味が、一冊を通じてくっきりと浮かび上がってくる。書けない時期を経た事が結果として内容の厚みとなっていると感じた。冒頭の食道がん患者のエピソードから涙腺は崩壊する。可哀想だからではなく、覚悟を持った人間の強さに胸を打たれる。病に襲われる不運に意味を求めない、という言葉にハッとした。私達はあらゆる事に意味を求めすぎている。
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カノープス
四天王プロレスとは川田利明である。川田の存在、テクニック、インテリジェンスが極限のスポーツライクなプロレスを作り上げたのだ。いくら三沢、小橋の評価が高くてもそれは自分の中で揺るぎない。そんな川田が飲食店を始めて10年以上。本書で包み隠さず明かされる経営の苦労は、川田らしさに溢れていた。頑固で意地っぱりでこだわりが強くて誤解されやすくてとことん一途で…。 三沢の死により川田はリングを降りた。彼のいないリングに熱は生まれない。私がプロレス観戦から離れたのは当然である。技を見せ合うだけのサーカスに興味はない。
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カノープス
西村にしては珍しい趣向の短編を含むが中心は秋恵もの。その中でも【昼寝る】が良い。断続的な暴風雨の中にいるような貫多と秋恵の生活にあって、ほんの一時だけ気まぐれに差し込んだひだまりのような暖かな光。この一篇が深く心に残る。病身の秋恵に辛く当たった事を反省し土下座する貫多の姿は何とも言えない感慨を抱かせ、なんだかグッときてしまった。人は分かり合えない哀しい生き物であり、延々と行き違う。それでも互いを労り、支え合えた宝石のように輝く時間が貫多と秋恵の間にもあったのだ。それを読めただけで十分。もう十分満足である。
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カノープス
面白い展開になりそうな感じのまま、結末まで行ってしまった。ある事をきっかけに流行作家となり、その後売れなくなり、起死回生の一発で再び上昇する。ありきたりの展開だが、一人の作家の浮沈を描くのだから、もっと読み手に興奮が訪れてもいいはず。だが、ここが面白かった!と思い返せる場面やセリフが浮かばないのである。小説家の日常がわかるわけでもなく…その辺はそれなりにキャリアのある書き手ならではの細かいディテールが読みたかったという思いがある。作中作の意味もそれなりに面白いのだろう。が、私には読み返すような気力は無い。
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カノープス
初読み作家。詐欺的行為で生き抜く女とそれに付き合わされた弁護士の半生。シスターフッドの変奏と言えばよいのか、不思議な読み心地がある。もう1人の主人公を関節的に描くのは『火車』以来いくつも例があるが、本作がそれほど成功しているかと言われると微妙に思う。夏子の可愛げがどこにあるか、そこが上手く書けたなら。それに比べてどんどん重要度を増す弁護士事務所の事務員みゆきの存在感。書いていくうちに作者も思い入れたっぷりになったのではと想像する。後半のキャラクターが歳を重ねてからのセリフが良かったところに力量を感じた。
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カノープス
何度目かわからない再読。フロストシリーズに懐かしい記憶の裏切りは存在しない。いつ読んでも圧倒的に面白いどころか、いつまで経ってもこれを超える警察小説に出会えない事に、ある種の寂しさを感じる。本当に唯一無二なのだ。例えば、フロストと強盗に入られた質屋の主人の会話の呼吸。芹澤恵の素晴らしい訳業に負うところ大とはいえ、これだけ諧謔に満ちながら哀歓も唄いあげる物語を他に知らない。シリーズ中でも屈指の出来である本作は、愛すべきフロストの流儀が炸裂していて、自分の中で不動の海外ミステリベストとして輝き続けるのである。
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カノープス
初読み作家。特殊工作員として人生の裏街道を歩く事を決めた男・中村泰の数奇な人生。捜査機関がオウム犯行説に傾倒する前段部分にジリジリするが、いよいよ【真犯人】による事件の真相が明らかになる第三章からは一気読み。中村の陰影に満ちた人生のなんたる哀しさ。50年以上戦争のない国の裏でこれほど焦燥に駆られた男がいたのだ。共感はしないけれど、この男が誰にもできるわけではない生き方をした胆力には恐れ入る。諜報活動の詳細など本物の迫力に満ちている。立花隆の解説は要らなかった。せめて江川紹子だったら。それだけが残念だ。
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カノープス
古典を巡る旅。スパイ・ユニバースの道徳的ジレンマ、それを探究する。モーム自身の体験がどれだけ反映されているかは知らないが、スパイの人生がどのようなものかを垣間見るに興味深い内容を持っている。洞察力と心理戦。各章のタイトルの多くが人物に関するものになっているのは偶然ではない。これはスパイの目を通した世界の観察記録だからだ。特に良かったのは【ミス・キング】と最終章。ハリントンの不条理な死を描く事で、戦争の不条理を映し出すことにモームは成功した。
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カノープス
まずタイトルが素晴らしい。老境にある覚悟と諦念を表して見事だ。内容も素晴らしい。山田風太郎とはこんなに面白かったのか、と驚いた。人体の全力運転 終身稼働に対する成果への問い。これは耳が痛い。食べて出して寝て…結局、自分は人類社会に何をもたらしているのか、というのは自分も抱える疑問である。巧みな筆致によるユーモアに隠れているが、鋭い批評性も見逃せない。特に、日本の繁栄期は黄粱一炊の夢と喝破し、その間の舵取りを誤れば三流国の鎖に縛られる、との見方は今の日本を予見したとしか思えない。山田の豊かな語彙力にも感服。
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ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2019/01/07(1979日経過)
記録初日
2019/01/02(1984日経過)
読んだ本
681冊(1日平均0.34冊)
読んだページ
224543ページ(1日平均113ページ)
感想・レビュー
674件(投稿率99.0%)
本棚
1棚
自己紹介

山本周五郎より優れた作家がいるなら
教えてほしい

※ポリシーはつまらない物も含めて何でも読む事
図書館本、古本の類いは読まない・買わない事
※作品を読み解く事など不可能
自分は自分が感じた事を書くのみ
※積ん読3000冊(推定)消化中
※伏線がどうの、回収がどうの、という事で小説を読むような人は軽蔑する

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