#ほっこり満たされる 寺地はるな
『たいていの人生は、ドラマチックではない』という私たちの人生。そんな私たちに『ひとときの夢』を見せてくれる遊園地。この作品では、遊園地の舞台裏で今日も働き続けるスタッフの人生を見ることができました。『遊園地ってなんのためにあるんやと思う?』という問いの答えを求めながら今日も私達を笑顔で迎え入れてくれる遊園地のスタッフ。夢に遊ぶかのような遊園地を舞台に、その舞台を地道に作り上げていく人達の生き様を丁寧に描いたこの作品。美しく彩られた遊園地の世界観の中に人々のささやかな人生の営みを感じた素晴らしい作品でした。
ナイス ★636
星★★★★★ 遊園地で働いている従業員にスポットを当てた今作も、悪い人は出てこず安定の読後感でした😃 登場人物みんなどこか不器用で、人との接し方や仕事へのモチベーション等悩みを抱えているけど、どこか前向きになれるヒントは、ふとしたきっかけで見えるはず そんな事を教えられた気がします。 要所でグッと心を鷲掴みにされる言葉が出てくるので、また日を置いて再読したい1冊です。 特に定年退職の日(引退ライブ💦)にサイリウム持ってメリーゴーランドに乗ってる山田さんの奥さんは最高😃⤴️⤴️
ナイス ★512
もっとレビューを見る
#壮絶 読んで良かった 宇佐美まこと
宇佐美 まことは、新作中心に読んでいる作家です。タイトルから、ほんわかした三老女終活の旅物語かと思いきや、戦争悲劇ミステリの秀作・感動作でした。少し気が早いですが、今年のBEST20候補、本日第164回直木賞が発表されましたが、次回の第165回直木賞受賞作で良いかも知れません。
ナイス ★703
満州での悲惨な幼少期を逞しく生き抜いた2人の少女。互いに助け合いながら、あっちこっちで本当に地獄の様な苦労をした挙げ句、2人はようやくの思いで祖国に帰還。それぞれの人生を歩みはじめたのだが…それまではいい感じで進んで来たストーリーが突然、そう、あまりに突然【火曜サスペンス劇場】に変わってしまうのでびっくり仰天させられる。何が起きたのかすぐには把握出来ず、ははぁ、これはこういうネタ的狙いで書かれた本なのね、と納得する。にしては全体的にちと長すぎだろう。
ナイス ★605
もっとレビューを見る
#やさしい 泣ける 森沢明夫
森沢作品に はずれなし! 貧しい家庭の子どもに無料の食事を出す大衆食堂が舞台、となれば涙腺がゆるむ条件は十分。色々な伏線が解けて、最後の5ページ、温っかい気持ちがじわりと残った。「子ども食堂」の隠れメニューが「バター醤油の焼うどん」というのも、ニクイ。誰でも思い出の片隅にありそうな、匂いが立ってくる焼うどん。これが出されたら、私でもまさに「おいしくて泣く」、だろうな。感情は嗅覚によって倍増される。他にも読んでいてシーンが頭に浮かぶ場面満載で、この作品も映像化……。
ナイス ★674
安定で安心な利他的思い遣りをもらえた森沢作品。幾分構え読み始めたが、期待を裏切らない最終盤の感涙。子ども食堂を題材に、中学生たちに幸せの意味を探させる。「自分の意思で判断しながら生きる」こと。それが幸せだと登場人物に言わせる。この意思とは、自己ではない外向きベクトルをもち、決して功利を求めない。それが損得や善悪の論理を超え、知らず知らずに後世へ受け継がれていく。未熟な自己の中学生が、ゆらぐ自己形成の中、他者を突き放す批判による明確な区別より、他者に近づき無理ない甘受であいまいな境界を選択させる姿勢に感動。
ナイス ★605
もっとレビューを見る
#価値観がゆらぐ 衝撃的 丸山正樹
『読書メーター OF THE YEAR 2021』第一位ということで読みました。丸山 正樹、初読です。半分私小説的、ワンダフルというよりもテリブルな社会派小説、色々と考えさせられます。文句なしの1位ではありませんが、今年のBEST20候補です。「人命は地球より重い」と言いますが、財源は限られているので、重度の障害者を支援するよりも、死に直面している健常者の子供の支援を優先すべきだと考えます。 https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334913847
ナイス ★625
ドはまりしてほぼ一気読み。建築、障がい者福祉、そして映画。全て俺の人生の一部にかぶる物語群。ブラックな風味のエピソードが多いから、カジュアルに読みたい人には重いかも知れないけど、俺にはドストライクだった。見事なストーリーテリング、そして驚くほど緻密に計算され尽くした全体の構成。これは良かった。今まで読んで来た本の中でも間違いなくベスト10には入る。まさに「素晴らしき哉、人生!」いや、本当に「ワンダフル・ライフ」だ。俺も今、それを生きている。そしてあなたも。機会があったら、是非この本を読んでみて下さい。
ナイス ★611
もっとレビューを見る
#ほろ苦い 希望 小野寺史宜
2019年本屋大賞2位の『ひと』に続いて、小野寺 史宜、2作目です。著者の新境地でしょうか?初期のSEKAI NO OWARIの世界観、天使&悪魔DEATHファンタジーでした。著者は、本作のテイストよりも『ひと』のような人情ドラマが向いている気がします。 https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8008325.html
ナイス ★499
小説すばる2011年3月:天使と一宮定男、2011年8月:ほよん、2013年7月:レイトショーのケイト,ショウ、2014年9月:悪魔と園田深、ポプラ社asta* 2012年2月:LOOKER、書下ろし:今宵守宮くんと、カフェ霜島、おれ,降臨、宇宙人来訪、中津巧の余生、の連作短編。不思議な世界観で統一された霊と天使と悪魔が登場するファンタジー。インパクトありました。レイトショーのケイト,ショウでは、いったい何の話なんだと思わせながら、はっきりさせて行く展開が面白かったです。ラストには拍手喝采です。
ナイス ★350
もっとレビューを見る
#前向きになる ブラック企業 額賀澪
額賀 澪、3作目です。タイトルと表紙からもっとコミカルな内容かと思いきや、シリアスな転職エージェント連作短編集でした。私は、「気持ちの悪い社畜」ではないものの、新卒で就職した今の会社で定年(現状60歳)までは、働く予定ですが、61歳以降の雇用延長だと年収が大幅に下がるので、場合によっては転職も考えています。その際は、シェパード・キャリアにお世話になりたいと思います(笑) https://nukaga-mio.work/tenshoku
ナイス ★387
ブラック企業で、ボロボロになるまで働いた千晴は、転職の魔王様と呼ばれるキャリアアドバイザーの来栖と出会い、彼の部下として働く事になる。言葉に棘はあるが、人間としての優しさがにじみ出ている魔王様のキャラ立ちが弱い感じもした。少し前に読んだ滝羽麻子さんの転職エージェントのお仕事小説「あなたのご希望の条件は」と同じ設定、もし自分が転職するなら、こちらの主人公香澄さんにお願いするかなぁ。社畜のように自分を犠牲にして働く時代ではないのかもしれないけど、損得考えずに汗を流す人が評価される社会であってほしいと思った。
ナイス ★214
もっとレビューを見る
#怖くないミステリー 群像劇 下村敦史
下村 敦史は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。ホテルオークラと帝国ホテルをモチーフにしたような高級ホテルにおけるファンタジー群像劇ミステリ、もっと面白くなると思っていたのですが、ドラマが足りませんでした。 https://ananweb.jp/news/342130/
ナイス ★577
グランドホテル方式は小説のみならず映画やドラマでもやり尽くされた手法なので、どんな新しさを見せてくれるかに興味があった。作者もその点を考慮し時間軸トリックを使ったようだが、最近のミステリでは採用例が多かったので正直またかと思ってしまった。むしろ親子二代にわたりホテルに勤めた岡野父子を主人公に様々なエピソードを描き、最後に閉館の場で全てがつながる連作に仕立てたら面白かったが。また先に文学賞受賞を果たした後輩の作品を執拗に批判する谷口は、ネットで著名人の炎上をあおる現代人を皮肉るようなキャラで笑ってしまった。
ナイス ★516
もっとレビューを見る
#救われる おいしそう 彩瀬まる
動物は生きていくために食べ物を摂取しないといけないが、人は誰と何を食べたかによって辛さを紛らわせたり、幸せな気持ちになったり、栄養を取る以上の意味がある。そんな食べ物にまつわるザラっとした読後感を残す6編の短編集。悩みや生き辛さを抱えた人々は、一皿の料理に救われる、それはきっと料理をする人の思いや願いが込められているから、そしてその料理を食べた思い出はいつまでも心に刻まれる。死期の近い父の友人がかつて自分を励ますために作ってくれた大鍋のシチューの事を思い出す「大きな鍋の歌」が心にしみました。
ナイス ★385
人生と食がテーマになった6つの短編。『ひと匙のはばたき』…ファンタジー要素ある温かい話で彩瀬さんらしい。『かなしい食べもの』…若い男女の関係が頷けるし、手作りパンに癒される。『ミックスミックスピザ』…主人公の不倫が女性らしい筆致で納得。『ポタージュスープの海を越えて』…育児に疲れる主人公の気持ちが手に取るように伝わる。『シュークリームタワーで待ち合わせ』…女性の友情が素敵に感じた。一番の収穫は『大きな鍋の歌』…中年男の悲哀を巧みに表現して更に腕を上げた印象。どれも単なる「食べ物小説」で終わらないのが流石。
ナイス ★299
もっとレビューを見る
#ホラー 人間が一番怖い 澤村伊智
この短編集が今まで読んだ作品の中で一番技巧的にも冴えていて、えげつなくおぞましい印象で読み返したい一冊でしたね。まあよくもこんな気色悪い読み手を徹底的に不安にさせる作品を書けるものだよなあと感心しますね。本当に迷宮に迷って抜け出せないような心地悪さにおぞけ立ちますね。『鏡』は成長した自分の娘の未来の醜い姿に戦慄する話。『赤い学生服の女子』は入院した病院で知り合った患者たちが次々に死んでいき・・・最後の一行に冷や汗が出ますよ。『ぜんしゅの跫』は気色悪いモンスターホラーですが本書で唯一後味の良い一編でしたね。
ナイス ★356
待望の比嘉姉妹シリーズ新作は5つの短編集…結婚式で未来が視える話、都市伝説に関する話、神隠しされた兄が帰ってくる話、学校の怪談風の話、そして姉妹が活躍する怪奇話。 前作『などらきの首』と同様に各々のテイストが違う楽しさがある。中でも『赤い学生服の女子』は「こういう再登場の形もあるんだ」と美晴に再会できたのが嬉しかったし、そこそこ怖くて好み。表題作は「待ってました!」の琴子と真琴の活躍で『ぼぎわん』の第3章に似た妖怪退治サスペンスにワクワク…姉妹愛も良かったし、野崎も含めた三人を中心に長編をお願いしたい♬
ナイス ★307
もっとレビューを見る
#読み応え抜群 一穂ミチ
一穂ミチは初読。6つの短篇から成る作品集。全体としては、フィクションを作りすぎている感が否めないが、そうした中にあって、巻頭の「ネオンテトラ」は最も自然体。これに続く「魔王の帰還」と「ピクニック」はは過剰フィクションの典型だが、読後感は悪くない。「花うた」はダニエル・キースの「アルジャーノンに花束を」を典拠とした一種の本歌取り。主題も自ずと似ている。1篇をとるなら「愛を適量」か。ただし、好みは分かれそうだ。最後の「式日」は、巻頭と呼応させているのだが、内容的にはやや空転気味か。
ナイス ★1360
面白かった。いろんな人生を垣間見た気持ちになった。1話目の「ネオンテトラ」を読んで心がドンヨリしたが、2話目の「魔王の帰還」で、暗い気持ちが吹っ飛んでいった!真央姉ちゃん最高(笑)。真央姉ちゃんでシリーズ化希望!!
ナイス ★1346
もっとレビューを見る











