ファンタジー・ホラー・SF・コメディ・ブラックユーモア・ヒューマン・お伽噺パロと作品ごとに雰囲気こそ違うものの何となく根底に似通ったものを感じる短編集。表題作は映画も主題歌も大ヒットした『黄泉がえり』外伝、息子を事故で喪って離婚した元夫婦が黄泉がえりの噂に一縷の望みを託して愛知から熊本へと向かう話。今読むと熊本と地震という言葉の組み合わせにどきっとする。人類滅亡後の地球を訪れた宇宙人があるカップルの残留思念を発見する『接続された女』を筆頭に、諦めない、譲れない、強い思いがどの話にもある。共通項はそこか。
かぐや姫を恋い慕う粘着系貴公子の執念と冒険『六番目の貴公子』、バス事故に遭遇した板前が自慢の包丁捌きで重傷者に緊急手術を施す『奇跡の乗客たち』、目撃した人間たちの縁を結ぶ謎の生命体『魅の谷』、亡き母を模した格安レンタルロボット『小壺ちゃん』、この辺はシリアスどっか行っちゃってブラックな笑いが強め。特に板前の話は緊迫した非常事態であるはずなのに何だろうねこのすっとぼけたテンション好きだわ、その気になったら大門未知子と肩並べられんじゃねこの人。今やってる日曜劇場の脳腫瘍患者も彼に手術してもらっちゃえよもう。
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