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やすらかに今はねむり給え/道 (講談社文芸文庫 はA 7 スタンダード)

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格
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1945年8月9日という日付は、自分は勿論両親すらまだこの世に生を受けていない身としては、知らなければならない日であると頭ではわかってはいても肉体に結びついたものではない。しかし著者にとっては直接に結びついた"あの日"であって、その圧倒的な現実は直面した人間の記憶をもってしても(直面した人間の記憶ゆえに?)その正体をあらわにはしない。"あの日"とは一体なんだったのか、出来ることは、ただその正体を問い続けることだけではないのかと思う
0255文字
ライム
新着
長崎1945、粗末なトタン屋根の兵器工場にて。学徒動員で勤務する女学生達の日々が描かれ、今更ながらこんな事があったのかと驚く。仕事は、クズ同然の紙類を怪しげな機械に投入して粘土状にするという、単調かつ不衛生な顔をしかめたくなるもの。生徒達の様子を見て回る先生の苦労もしのばれる。こんな馬鹿げた状況が実際にあったのだぞ、と裏付けるかのように併記される当時の工場日誌、そして刻々とせまる8月9日。本書から何を学び、どう生きるか?をゆっくり考えるべき。
0255文字
モリータ
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◆「道」は'76年発表、'75年「祭りの場」と'77年~『ギヤマン ビードロ』連作の間。表題作は'90年発表(著者60歳)。◆二作とも「祭りの場」等にも登場する、被爆死した長崎高女の女性教師3名が中心となる。前者では、30年後に別の恩師を訪ね、最も慕わしかった(が無残に死んだ)1人の墓参りをする中で、曖昧だった彼女らの死に様が明らかになる。後者では1人の教師が遺した動員日誌を軸として、沖縄一中や七高の記録、友人の日記も織り込みながら、筆者ら女学生の労働や男子学生とのささやかな交流・青春を淡々と描く。
モリータ

◆「(注:動員が)〝解除された日〟も調べればわかる。ただ、「N高等女学校報国隊」への解除通達、あるいは解除式はあったのか。私が解除するという形式を知ったのは、報告書を読んでからである。それも十年前には、解除の意味すら理解していなかったような気がする。再読して居心地の悪さを覚えるなどとは、うかつもいいところである。私たち学徒は勅令によって、あるいは国によって、あるいは当時の文部大臣、文部次官、あるいは農林省や、厚生省、さらには地方長官などの名によって、工場や農村へ動員されたのである。(続)

11/10 21:35
モリータ

解除があって当り前である。しかし私は今日まで、解除、解散式の手続きを踏まずに生きてきた。いまだに動員学徒の身分を引きずって、生きている理屈になる。居心地が悪いのは、切れていない身分に気がついたからである。(表題作、pp.79-80)」◆国が戦争をすれば畢竟、個人が使い捨てとなり、誰にもわからない形で死なされる、その恐ろしさ、やるせなさ。◆しかし作品としては他と合わせてトータルの物語世界として見れば本二作や「祭りの場」もいいが、やはり一作の完成度としては『ギヤマン ビードロ』中の一篇がよいと思う。

11/10 21:43
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0255文字
市太郎
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長崎、昭和20年5月から原爆投下の8月9日までの記録を著者の体験を混じえて語られる。「道」では、恩師3人の最期を記録と証言から紐解き、著者自身の鎮魂の思いとおそらく決別の想いを込めて記される。「やすらかに今はねむり給え」では、事実が淡々と語られていく中で、友人たちを中心に女学徒の青春も語られる。短くまとめられているが、その無念さが伝わる。日本国民は戦争末期を感じながらも希望を持っていて、まさか今日死ぬとは思わなかったろう。あの光が人の手で落とされ何もかもが変わってしまったのだ。
ぼむ☆

タイムリーな読書をされてますね。 戦争で亡くなった方々に、心よりご冥福をお祈り申し上げます。またそのご遺族の方々にお悔やみを申し上げます。 市太郎さん、読書ペース早えーーー(笑)

08/16 09:14
市太郎

ぼむ☆さん、たまにはやってみようと思いまして。特に今月は読書以外はやることが無いはずだったのですが、犬だのなんだのとありました(*^^*)そのわりには読めてるのでとりあえず良い感じと思います。

08/16 09:44
0255文字
ましろ
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記録と記憶の折り重なる語りは、八月九日までの様子を鮮明に描き出している。長崎原爆の日を境に跡切れてしまった関係を蘇らせたい思いと、区切りをつけたい思いの狭間で、書かずにはいられない切なる熱き思いが伝わってくる。後世に残る死者の数はもちろん、不明と記す、その言葉の曖昧の始まりの生々しさ、学徒動員の疲労と精神状態、記される一人一人の生の重さがずしりと心に迫った。生き残った者が友に思う、許してくれ、という言葉。やすらかに今はねむり給え、という言葉に込められた思いは、それ以上言葉にならない感情も含んで心震わせる。
0255文字
ガーコ
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☆☆☆☆
0255文字
 
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記憶の零度。
0255文字
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