『小暮写眞館』の第一話を読み終えた感想は、良くも悪くも、懐かしい宮部みゆきさんの小説かな?というものだ。とても男子高校生とは思えない利発?で好奇心旺盛な花ちゃんが主人公で、彼の礼儀正しくも相手の急所を突くような立ち居振る舞いは、まるで杉村三郎さんの高校生時代が描かれているかのようだ。
約700ページ、電車の中だと「この人、何で辞書なんか読んでいるんだろう?」と思われているのではないか?と心配になるほど大きな本だ!読むのに約8日間かかったが、それは厚みのせいだけではない。宮部先生の作品だと知らなければ、ツマラナイと断罪しまいたくなるような物語りだったからだ。
先生は、誰に何を伝えたかったのか、それとも書きたいことを綴っただけなのか、一人のファンは説明的な会話と蛇足だと思われる描写の行間に、そしてこれから捲る頁の中に、自分の心を貫くような煌めきが潜んでいるはずだと信じて眼を凝らすのであった。
面白いか、面白くないか、と訊かれたら、面白くない、と応えてしまいそうだけど、自分自身を縛っている呪いを再確認する機会にはなると思った。人は、親や兄弟にすらも言えない壺の底に沈めてしまいたくなるような記憶や逃れたくても逃れられない柵に囚われていることがあるが、それを抑圧していては、絶対に解放されることはなくて、そういうものこそ白日の下にさらけ出して決着をつけなければならない。ということなのかもしれない。
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