『二重標的』『虚構の殺人者』でも、挑むような相楽警部補との対立などの困難はあったものの、安積係長が決断に苦しむようなピンチに見舞われることはなかった。しかし、この『硝子の殺人者』で、安積は、初めて苦しい決断を迫られる。今までは、ありふれた刑事ドラマのような筋書きだった物語りが、回を重ねることによって、今野敏さん独自の世界に姿を変えてゆく兆しが見える。安積のためにスープラのパトカーを猛然と発進させ「職務特権という言葉を知っているか」という速水に「職権濫用という言葉なら知っている」という安積の台詞も楽しい。
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