東条英機内閣や戦後の鳩山一郎内閣で外相を務めた重光葵の『昭和の動乱』をいま読んでいます。さすがに経験豊かな外交官出身だけあり、読み応え十分な内容です。そのp216に近衛文麿のブレーン組織の昭和研究会などに言及し、以下の言葉が続きます。
これらの機関には、左翼方面の頭脳も参加し、軍の中堅分子の直接指導もあって、国家の秘密はこれを護るに由なく、政府の機密事項にわたって自由に討議が行われた。
当時はすでに近衛ブレーンの一員となっていたものに、共産党員にして、ソ連のスパイ尾崎秀美(ほつみ)なるものがいたことは、顕著なことであった。彼が、ソ連の共産党員ゾルゲとともに、諜報任務に従事し、日本の最高国家機密を、近衛公及びその周囲の人々から探知していたことは後で分った。彼らの政策的任務は、日本の進路を北方より南方に向け日本とソ連との衝突を避け、日本を米英との衝突に導くことであった。
引用は以上です。朝日新聞主筆であった緒方竹虎の側近に尾崎秀美がいたことは、重大な意味を持ちます。当時の朝日新聞であれば、こうした人物がいても不思議ではなかったのです。
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