私、皆川桜は、幼なじみで親友の折口海と先日喧嘩をしたのだ。
彼女は何も悪くない。私の八つ当たりだった。
私の好きな男子と仲良くしていて、私にいつも彼との話をしてくる。
私が彼のことを好きだと知っているから、気をきかせて話をしてくれるのだろう。いわゆる嫉妬だ。
初めは、優しく"別に良いよ"と言う予定だった。なのに、話をしているうちに、自分の言いたいことが上手く言えなくなっていく。
いつの間にか、自分の気持ちと反対の言葉が口から零れていく。
"感情がなくなってしまえば"行きつけの本屋でかかった歌の歌詞。
店に行けば必ず聞いて、聞きなれているはずなのに、今この歌詞を聞いた瞬間、歩く足がピタリと止まった。
いつもならば何も気にせず聞き流すこのフレーズに引っ掛かるのは、きっと先日の出来事のせいだろう。
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レイはその日、とある遺跡を探索していた。
まあまあ有名な遺跡だ。
中に入り、歩き始めて数分後。異様な光を放つ、門のようなものを見つけた。
レイは好奇心旺盛な性格だ。
何の躊躇も無く、足を踏み入れた。
そこには白い扉が一つ、あるだけだった。
''3000年後の未来''
扉にはそう書いてあった。
レイはこの後、白い扉の向こうの最悪な未来を見た。
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その瞬間は、目を瞑っているだけだと思った。
黒い画面を見ているだけだと思った。
暗闇の中にいるだけだと思った。
でも、違う。
目蓋に指をかけ、目を開く。でも、視界は変わらず黒い。
目の真正面に手を伸ばす。でも、そこに障害物は無い。
壁を探して歩こうと足を前に出す。でも、そこに足の着地点は無かった。
ここは1000年後。何もない世界。
この現実を受け入れたくは無かった。
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