2022年・上半期 第167回「芥川賞・直木賞」特集

2022年7月20日に発表された、芥川賞・直木賞の受賞作と候補作の特集です!
各作品のあらすじと感想・レビューを紹介。

  • 芥川賞・受賞
    おいしいごはんが食べられますように

    おいしいごはんが食べられますように

    「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。ままならない人間関係を、食べものを通して描く傑作。

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    レビュー

    • 美味しいものをみんなで食べるのが幸せという真っ当な思想に染まれず、食べ物への嫌悪感を露わにする登場人物に、不思議と感情移入してしまった。ものすごく面白いテーマだった。

    • 優しげな表紙とタイトルに反してヒリつくような現実感を持った文学作品である。巨大で複雑な社会システムにおいては、誰しもがエラーを内に秘めて押し隠してるからこそ全てが機能しているのだよ、という説得力のある作品だった。

    • なんでこんな、独特なのに、読んでる自分と確かに繋がっていると思える作品を作れるのか。こんな書き方ができるのか。

  • 家庭用安心坑夫

    家庭用安心坑夫

    日本橋三越の柱に、幼いころ実家に貼ったシールがあるのを見つけたところから物語は始まる。狂気と現実世界が互いに浸食し合い、新人らしからぬ圧倒的筆致とスピード感で我々を思わぬところへ運んでいく。

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    レビュー

    • 背筋がゾクゾクするような恐怖感。血が飛んだりするのではなくて人の内面を少しずつ抉り取っていくような、そんな怖さ。

    • コレは楽しかったー。文章から可笑しさがじわじわくる感じ、好きだー。主人公がわりとダメ人間なのも、好きだー。

    • 独特の表現だとか、言葉選びに物凄くハマった。作品は勿論だけど、作者に惹かれた。この作者の他の作品を読んでみたいと思ったのが読み終えて1番の感想かもしれない。

  • ギフテッド

    ギフテッド

    歓楽街の片隅のビルに暮らすホステスの「私」は、重い病に侵された母を引き取る。母はシングルのまま「私」を産み育てるかたわら数冊の詩集を出すが、成功を収めることはなかった。濃厚な死の匂いの立ち込める中、脳裏をよぎるのは、少し前に自ら命を絶った女友達のことだった。

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    レビュー

    • 日常の何気ないことを事細かに書き込む部分とあえて直接的な言葉を使わずに読者に委ねる部分。この使い分けが際立った。

    • イメージよりもっと静かにしっとり染みてくるような作品だった。じんわりと死に向かっていく母を見送ろうとする娘の、複雑ながらも人間らしいさまざまな感情の機微が、昔の確執やさまざまな周辺人物との絡みを交えながら、しっとりと描き出されていて、胸を打つ作品だった。

    • 夜の町に生きる女性の、母との死別までが詩的な文体で綴られる。境遇としてはかなり厳しいものではあるが、悲壮感はあまりない。文章の音楽的な美しさが魅力的な作品。

  • N/A

    N/A

    松井まどか、高校2年生。うみちゃんと付き合って3か月。体重計の目盛りはしばらく、40を超えていない。――「かけがえのない他人」はまだ、見つからない。優しさと気遣いの定型句に苛立ち、肉体から言葉を絞り出そうともがく魂を描く、圧巻のデビュー作。

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    レビュー

    • 割りと色々な要素が書かれているのに、詰め込まれているという印象が一切ないのは、作者が最後まで徹底した主題が小説を支えているからだろう。物語や会話も滑らかで面白い(ありがちな説教臭さも無い)。まさに新人離れした快作。多くの人に読んで欲しい。

    • ああそうだ、私も感じていたのはこれだと思った。みんな読めばいいのに。

    • 決して明るい作品ではない。だが、壁を乗り越えようとする一人の主人公の力強さが描かれており、読者を引き寄せる。デリケートなテーマを扱った作者は見事に描ききっている。秀逸な作品だと思う。

  • あくてえ

    あくてえ

    あたしの本当の人生はこれから始まる。小説家志望のゆめは90歳の憎たらしいばばあと母親と3人暮らし。ままならなさを悪態に変え奮い立つ、19歳のヘヴィな日常。

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    レビュー

    • 近しい家族ゆえの理不尽さに悪態をつくより他ない主人公を取り巻く環境がどこまでもリアルに語られ、物語的な救いに逃げず描き切ったところに凄みを感じた。

    • 「怒り」を十二分に感じられて気持ちいいくらいのスピード感で読み進められました。小説家を目指す二十歳になる主人公の九十歳の祖母を中心に周囲に対する怒りと悪態で綴られた文章は家族だからこそのしんどさや切なさや愛情もないまぜになって読んでいてめちゃめちゃ揺さぶられました。

過去の受賞作品はこちら

2021年下半期 第166回

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