知人から薦められて読み始めた。3Dプリンタを宇宙船内外で使うというシーンが当たり前のように出てくるところは面白い。

圧倒されてイッキ読みだった。こういう多元生中継的なストーリー展開を終盤に結末に向けて収斂させていく手法は著者が得意にしているところだ。渡良瀬川流域にもうちょっと土地勘があったら、もっと楽しめたに違いないが。

いや～面白い。精神的に煮詰まっている時、ドクター伊良部を読むのはいい薬になるわ。

ものすごく長い作品だったけれど、いい作品だった。足利家臣団の個々の動静まで描かれているので、この時代を扱った他の作品を読むときの参考にもできる。また、足利直義と高師直にはありがちなステレオタイプ的な極端な人物描写ではなく、実務家としての有能なところが描かれ、読者的には新鮮でかつ受け容れやすい人物像だった。NHK大河ドラマで『太平記』が放送されてからもう32年経つが、また南北朝の時代が描かれることがあるなら、この作品は原作として相当有用だと思う。