形式:単行本
出版社:明石書店
しかし現代日本に暮らす者として、前述のような「絶対神に全力で依存し、盲目的に付き従うことを諒とする」イスラーム教を肯定することは難しいというのが正直なところだ。それが単なるベクトルの違いであり、どちらが「正しい」とか「優れている」という類のものでないことを考慮しても、受け入れられないものは受け入れられない。筆者もこの点には思うところがあるようで、基本的にはイスラーム教を好意的に論じつつも、ジハードの法的解釈がいつまでも定まらないことや、科学的手法を軽視する現代イスラーム教への不満を本書に綴っている。
こうしてみると、我が国の儒教・仏教とイスラームは確かに類似しているところもあるのだが、厳格な一神教を信仰してきた人々と、歴史的に複数の宗教をごった煮にしてきた「宗教にルーズな日本人」の間には大きな思想的断絶があるように感じられる。イスラーム教自体と日本人の相性は悪くないが、外国の「一般的なイスラーム教解釈&実践」と日本人の相性は悪いと言えば伝わるだろうか。 兎にも角にも、ある宗教へ近づこうとすると、却ってそれとの断絶を感じてしまう、そんな宗教問題の本質を痛感させられる読書体験であった。
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しかし現代日本に暮らす者として、前述のような「絶対神に全力で依存し、盲目的に付き従うことを諒とする」イスラーム教を肯定することは難しいというのが正直なところだ。それが単なるベクトルの違いであり、どちらが「正しい」とか「優れている」という類のものでないことを考慮しても、受け入れられないものは受け入れられない。筆者もこの点には思うところがあるようで、基本的にはイスラーム教を好意的に論じつつも、ジハードの法的解釈がいつまでも定まらないことや、科学的手法を軽視する現代イスラーム教への不満を本書に綴っている。
こうしてみると、我が国の儒教・仏教とイスラームは確かに類似しているところもあるのだが、厳格な一神教を信仰してきた人々と、歴史的に複数の宗教をごった煮にしてきた「宗教にルーズな日本人」の間には大きな思想的断絶があるように感じられる。イスラーム教自体と日本人の相性は悪くないが、外国の「一般的なイスラーム教解釈&実践」と日本人の相性は悪いと言えば伝わるだろうか。 兎にも角にも、ある宗教へ近づこうとすると、却ってそれとの断絶を感じてしまう、そんな宗教問題の本質を痛感させられる読書体験であった。