形式:単行本
出版社:彩流社
本書は本当に「2004年」の本だよなぁ。復刊してほしいが(その先鋭さゆえに)時代を超えない議論という気がする。ただそれでも面白いけど。
普遍とは単に地域的であり、真実の普遍性とは意見の不一致の結果以外のものではない、我々が意見を異にすると説明するためにこそ普遍性概念を想起する必要があると明言しているのは良い。マイケルズの劣化コピーはこれも読み飛ばしている。柄谷さ~ん時差があるから同時革命は起きませんよーという中森明夫の指摘と同時に、肌の色が違うから同時革命は起きない。ドン・デリーロ『アンダーワールド』論はゴミ。冷戦後のアートプロジェクトがイデオロギー的な意見の不一致からアイデンティティ主義的差異への移行とか適当かましている。
アートに政治的・イデオロギー的含意を見なければ気が済まない観客や記者たちの描写も読めない適当野郎である。政治性を脱色されたかのように見えるクララのランドアートプロジェクトに、冷戦の継続と、軍産複合体とグローバル資本主義の結託を見たデリーロ研究の歴史に遠く及ばない。ドン・デリーロ『マオII』論もやはりダメ。レバノンがなぜ毛沢東主義テロリストと結びつくか、人質がなぜ国連職員でなく「フランス詩人」と紹介されるか、読解力なし。世界的議論以前の冷戦後イデオロギー予見、貧困に目を塞ぐリベラル批判、こうも読めないか。
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます
本書は本当に「2004年」の本だよなぁ。復刊してほしいが(その先鋭さゆえに)時代を超えない議論という気がする。ただそれでも面白いけど。