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森は考える――人間的なるものを超えた人類学

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内島菫
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「生命は、構成的に記号論的である。つまり、生命とは隅々まで、記号の過程の産物なのである。」と著者が述べる時、例えばコウロコフウチョウの求愛ダンスを思い出してみる。彼らのオスはちゃんと練習を重ね舞台を用意しメスのためにその動きを披露する。そもそもダンスをする資格のあるオスだけが真っ黒くなるという。だからダンスをしないオスは見た目はメスと同じように全体的に茶褐色である。これらにはすべてその指し示す意味内容があり、彼らはみなきちんとそれらを理解し利用し関係を取り結んで生きている。
内島菫

しかし著者はあえて、森が考えると我々が考えるのではなく、まさに森が考えると主張する。言語を地域化するということはつまり、人間の思考も地域化するということだ。実際、本書に書かれているアヴィラの人々と著者が非人間とかかわりながら過ごす中で、非人間とそれらの自己の複合である森とがやはり人間的なものからはみ出していることが体験されている以上、少なくとも森が考えるということにイメージを馳せなければ、生きるという今からはみ出す行為は続いていかないだろう。

11/29 23:08
内島菫

人間がマウントをとったり階層性を形成したり群れたりすることはあまりに人間的であると同時に、他の生物も(文化や道徳の色を抜いた形で)行う事柄であり、従って人間の外へも繋がっている。私とあなたは区別であると同時に、私と同等のあなたということでもある。区別でき同等でもある自己の座を、種を超え時には生死を超えて私とあなたはもっている。著者が違いから始めることの不毛さを説くのは、違いを強調することがかき消してしまう私とあなたの相似性と増幅の形式があるからだろう。おそらく形式だけが人間、非人間を超えることができる。

11/29 23:11
4件のコメントを全て見る
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#26 Kの字
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かなり難解に書かれているが、人間だけが考えるのは可笑しくて、自然も考えていると理解した方が良いよね、っていうアミュニズム的な筆者の体験談に基づく考察
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takeapple
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面白かった。久々に知的興奮を味わった。人類学や記号論の本を真面目に読んだのは学生時代以来かなあ。また学び直してみようかな。森は考えるというのは、「森が考えると人が思う」のではなく単に、木にも動物にも神が宿るとか言うのでもなく、森という世界の中にある人間も神も、死霊もジャガーもみんな考える=存在していて生きているということなのかなあ。近代ヨーロッパ的な近代科学による合理性以外の世界があると言うことは人新生を生きるためにとっても大切なことだねえ。縄文文化をそう言う意味で見直してみたいなあ。
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呑司 ゛クリケット“苅岡
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初めに言葉ありきで考える習慣は、人類全員の習慣ではない。アヴィラの人々が、森と対話して、ルナ プーマを恐れる時、会話に無い会話をしているだろう。それを記号での会話と考える方法は面白く読めた。
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らんぼ
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木が倒れる音を聞いた時、サルはそれを単なる音以上のもの──身に迫る危険を指し示すインデックス=記号──として解釈する。 森はあらゆる生命形態に満ち溢れており、複雑な相互作用を通して習慣を創発・増幅するプラットフォームだ。著者は、アマゾニアで暮らす先住民たちが、森の恵みを享受するために様々な生命形態の観点を移ろう営みに注目する。自己は記号解釈の座となり、"思考する森"の一部として浸透している。
らんぼ

レヴィ=ストロースは西洋/野生の対置から通底した構造を見出した。本書では、人間/実在の対置によって"人間的なるものを超えた人類学"への拡張を試みている。

06/13 13:48
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Angelita Misa Okamoto
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読書メーターに登録することが面倒だったけど、自粛時期にSNSでのバトン7日間ブックチャレンジでご紹介したおすすめ書を、ここにもアップ。7日間ブックチャレンジ初日。著者は人類学者エドゥアルド・コーン。彼は、人間は「言語」にとらわれていると言及。 森や山の有機体はそれぞれの記号論的なネットワークで思考しているんですね。この本はパースの記号論を理解していないと難解な部分も。また、バークリー音大出身の哲学者スタンリー・カヴェルの「魂-盲-」を採用した定義もあり、この辺りは少々難解だがこれは超おすすめ。
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ノルノル
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エクアドルのアマゾン河上流先住民コミュニティでの4年間のフィールドワークの成果。パースの記号論が主な分析軸。 エスノグラフィとしても少し異色のスタイル。生活の詳細な記述がほとんどない。人間から見た自然という見方とは違う自然・動植物・人間のあり様。そこに歴史、植民地の権力の交差。西洋中世史的に、聖人伝や贖罪規定書や異端審問テクスト使った歴史人類学的アプローチの見方に別視角のヒントが多数。
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スミレ雲
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【図書館本】分厚い本。パースを参照しながら、人類学的視点での考察。
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なぎこ
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解説にもあるとおり「革新的であると同時に民族誌的に緻密」な人類学者の著作で、最初に想像していた以上に面白い本だった。フィールドで生起する事象を理解する手がかりとしてパースの記号論を用い、さらにイコンとインデックスから創発する象徴というディーコンのアイデアを援用して、アヴィラ周辺の「あまりに人間的な歴史と森のとらえた生命とを絡みあわせながら、森を超えたところにある実在」を描いた本。特定の枠組でジャッジせず(できるかぎり)あるがままに受けとめたフィールドの事象についての思考の結果が書かれていて安心して読めた。
なぎこ

個人的には、第5章のアマゾニアの水系とゴム経済の関係にあらわれる河川の形式の話と、第6章の「ルナの自己は常に既にルナであり、プーマであり、とりわけ常に既に、主つまりアムである」という話がおもしろかった。

09/26 15:43
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西野西狸
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ネタバレ今まで思考するものは人間のみの特権的なものと考えていたが、その対象を広げ動物などからもまなざされるという視点に立ったのは興味深い。パースなどの言語理論は勉強不足でなかなか理解が出来なかった。これは何も特殊なことではなく、日本のアニミズムの事例などでも言えるのではないだろうか。
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生きることが苦手なフレンズ
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昨今人気の「文化」や「人類」でないものにも関心を払う系の文化人類学の本として、興味があるので読んでみましたが、そもそもの土台であるところのパースの記号論をよく理解していないので難解でした。まだまだ修行が足りません。
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はすのこ
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中沢新一臭が...
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☆☆☆☆☆☆☆
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日本語版が出たということでこちらも読了。まず翻訳は素晴らしい。リーダビリティは高いもののフラクタル的に入り組んだ原著の流れが、わかりやすい日本語に直されています。ナイーブながら美しいコーンの議論が改めて楽しめました。ただ、環境とのカップリングにおける余剰こそが思考であり心なのであって、記号過程がすべて思考であるというのは端的に誤りだと思う。なのに、創発という言葉を使うとすべてが説明できたようになってしまうんすよね。個人的には、生態学的な議論に記号という余分な層を加えただけではという気分がぬぐいきれない。
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9684
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見上げた夜の、既に亡き/未だ無き-光が紡ぐ星座を瞳に宿したとき、ルナ・プーマ、ジャガー人間に、なる。変身論。「形式《フォーム》とは上から押しつけられるものではない。それは、流出する」。来るべきは解釈無しに夢を見ること。仮面で秘めることのできるものは少ない。その口で物語る代わりに啼く。さらには、ナナフシがナナフシであるのとは別のやり方で。人類学の流れであえて呼ぶなら、拓かれた未開民族からの、みたいなイメージになるのかなぁ。
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