形式:新書
出版社:NHK出版
ヴォルテール「カンディード」から深い言葉の引用/「個々の不幸は全体の善をつくりだす。よって、個々の不幸が多ければ多いほど、全体はより善になるということだ」。/「最善説ってなんなんです?」とカカンボが言った。「ああ、それはね、ひどい状態なのに、すべては善であると言い張る熱狂のことだよ」。/意味がよくわからないけど、深めだ。
鹿島さんの解説によると、『最善説』とは、哲学者ライプニッツが主張したもので、「世界の創造者が神である以上、この世界にどのような悪が存在していても、その悪は最終的には最善なるものの発現に奉仕する定めであるという思想」。
クで、言葉の由来である「マロニエの根」の実物にはじめて遭遇したことによって、言葉には無い実在の衝撃を受けたことが「嘔吐」として表現されていると解釈します。ロカンタンはサルトルであり、彼が本来的に有している気質は現実に対処する能力の欠けたものだったことを来日したエピソードやボ―ヴォワールの証言を交えて論じています。サルトルを従来の政治的な発言の目立つ人格者から、欠落の能力であるオタクへとイメージを変えることによって現代に生きるのではないかと提案します。なお全ての作品が翻訳されていて、容易に手に入る状態です。
竹中平蔵の「経済古典は役に立つ」ならぬフランス版ですかね。ころこさんのレビューは読みたい気持ちを掻き立てます。「嘔吐」も読みたいと思っていたので、これを機に読んでみたいです。
「個々の不幸は全体の善をつくりだす。よって、個々の不幸が多ければ多いほど、全体はより善になるということだ」という全体主義の論理(『カンディード』)、愛においてやってはいけない事の一つは「傷つきドーダ合戦」(『アドルフ』)、「階級移動のイデオロギー」に伴う愛情の抑圧(『子ども』)、「オム・ファタル小説」(『べラミ』)、いじめる側にとって、いじめられる側の示す反応こそが「生きる証」だという、いじめの普遍的構造(『にんじん』)。
オタクの「遠隔性欲動」(『シルヴィー』)、「収集」し「選ぶ」だけで、何一つ創造しようとはしない消費芸術家=オタク(『さかしま』)、ヴァーチャル・リアリティ依存症のオタク(『失われた時を求めて』)、「全員がオタクの独身者」からなる恐怖のアンチ・ユートピア世界(『嘔吐』)。……筆者がオタクを心底敵視しているのは相変わらずだが、「社会」というものを考えるならこの理由もまま理解できる。人間の、特にオタクの内在的論理を理解するにはもってこいの小説が目立つという印象。本書はkindleぐらいが読みやすい。
ラブレーのお下劣からプルーストの洗練まで間口が広いですね フランスは
本当に色々ありますよね(^^)
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