形式:新書
出版社:中央公論新社
また上記のように、帝国大学そのものではない旧制高校等に大きく記述が割かれていることは、帝国大学の歴史みでは新書一冊文の分量にも届かないということを示しているのかもしれない。 しかしこれらの特権的地位と、第二次世界大戦に備えて急拡大された応用系の付属研究機関の存在が、現在でも日本国内において7つの旧帝大すべてが重要な地位を占めることに繋がっているように思われる。このことは、歴史ある欧米諸国の大学が高い地位を有していることと合わせると、初期投資の重要性を物語っているのではないだろうか。
現代においても高等教育や研究の資金不足が明白な中で、日本の近代化過程に連関している帝国大学史においても資金の問題が常に観察されることは、現代に対して示唆を与えてくれる。 本書では史料的制約やその歴史的経緯もあって、旧植民地下の京城・台北の両帝国大学に関する記述がほとんどなく、この点に関しては一読者としてやや残念であった。
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