あとは他の本で説明がなされているのかもしれないけど、莫言が中国における「マジック・リアリズム」の誤読から作風を築いたというのは納得しつつ、もう少し誤読できた理由を知りたかった。「魔法のようなことを現実的に」描いたラテンアメリカについて、「現実を魔法的に」描いたもの(ロマン主義のようだ)と誤解したという説明は理解できるけど、本当にその2つは誤読できるのだろうか。別物のだという著者の説明に納得するほど、それほど別物な概念を誤った理由が知りたくなるのである。
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そしてロシアフォルマリズムとソシュール、ヤコブソンから発したフランスの構造主義とがあわさり、ロシアフォルマリズムをフランスに紹介したトドロフにより「物語論=ナラトロジー(ただし物語とナラトロジーは相性が悪く、中華圏の「叙事学」のほうが適切とされる)」が名付けられた。物語とは「時間的な展開があるものを言葉で語ったもの。最小の物語は「王が死んだ」である。これらの精華としてナラトロジーで知らぬ者はいないジェラール・ジェネット『物語のディスクールがうまれる。本書ではこのジェネットの物語論を徹底的に解説しており、
「錯事法」「射程」「振幅」「第一次物語言説」「第二次物語言説」「省略」「黙説法」「括腹的後説法」「再説」「持続」(休止法、情景法、要約法、省略法)、頻度(単起法、反復的単起法、括腹法)「ディエゲーシス」と「ミメーシス」、内的焦点化(内的固定焦点化、内的不定焦点化、内的多元的焦点化)、変調、冗説法、語りの時間、語りの水準など多くの用語がでてくるがどれも漫画、小説から説明されており、非常によく解説されており、実に見通しがよくなった。ついで、分析哲学や認知言語学のナラトロジー本も紹介されていて役に立つ。