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指の骨 (新潮文庫)

感想・レビュー
83

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おおかみ
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著者が本作でデビューしたのは34歳の時だったそうだ。「戦争を知らない世代による戦争文学」ともてはやされていた記憶がある。確かに『野火』を想起させるが、3年ほど後の「文春オンライン」のインタビューによれば、執筆以前に戦争文学をちゃんと読んだことはなかったそうだ。だとすると、戦場の死臭が立ちこめるような表現力や人間に対する洞察力は一体どこから来るのだろう。ただただ凄味に圧倒されながら読んだ。当時は戦後70年。直接体験がないからこそ生まれる新たなリアリティーが始まった年だった。
おおかみ

“中庭ではまだ幾人かの兵が身体を動かしていた。負傷した場所を気遣うように、ゆっくりと。日向ぼっこをする老人のように、ゆっくりと。眞田は火口の紙がちりちりと燃えていくのを眺めながら、「人間、生きているうちに吸える煙草の本数は、限られているね」短くなった煙草を、平地へ放った。―(本文より)”

01/28 22:08
0255文字
かみぶくろ
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4.1/5.0 戦争を知らない世代が描く戦争小説。淡々とした、どこか詩情も感じられる文章で綴られる凄惨な戦争の現実。生と死が隣り合わせの世界の、ぼんやりとした絶望と諦念。積み上げるのではなく切り出していくような、鋭い想像力による意義ある作品だと思う。
0255文字
Tαkαo Sαito
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高橋弘希さんの作品は好きで読んでいたがデビュー作?の本作はまだ読んでおらずでした。 素晴らしい作品でした。生々しく心が苦しくなるような描写ばかりでしたが、なぜか読むのを止められない、引き込まれる作品でした。薄くて読みやすくて心に残る作品でした
0255文字
そふぃあ
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もうすぐ終戦の日だと思い読み始め、昨日読み終わった。 著者は戦争を経験していないらしい。なぜ戦争文学を書こうと思ったのか気になり、文春オンラインのインタビュー(2018.7.18)を読んだ。記事によると、強い信念を持って書いたという想いはなくただ、戦争を忘れることへの抵抗はあるとのことだった。熱帯雨林の緻密な描写や、野戦病院で死を待つ兵士たちの穏やかな日々、人間性を狂わせる終わりのない行軍が、戦争が生む絶望や狂気を鮮烈に伝える。(続き→)
そふぃあ

戦争の記憶も、場所もだんだん失われていく中で、戦争を経験していない世代がその恐怖や悲しみを想像して、書いて伝える。そこに意義があるのだと、同じく戦争を経験していない私なりにそう思った。

08/09 20:31
0255文字
ライム
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どぎつい程の生命力溢れる南方の自然の中で、弱ってゆく野戦病院の負傷兵たち。亡くなった患者の指を、小刀でゴトリと落とす不気味な音も、度々繰り返されるうち、機械工作的な音色に変わり、極限状態で神経が鈍磨してゆく過程を体験したかのようだった。印象に残ったのは、現地人村で村人に囲まれながら絵を描くシーン。一心不乱に線を引き、憑かれたように豚を描き写す。最後の命を燃えつくして絵を仕上げる姿からは、故郷から遠く離れて死ぬ無念さが強く伝わった。
0255文字
まち
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久々に読んだ。前読んだ時は最後まで読まなかったのかな…めちゃめちゃ強烈だった。p.95で眞田が質問の意味をとり違えて会話する場面、「戦場にかける橋」のワンシーンを思い出したな。些末な、けれども人間同士の寛容さというか、気遣いとか優しさを感じるシーンなんだよな。
0255文字
スナイデル
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3.5
0255文字
無重力蜜柑
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ネタバレ第152回芥川賞候補作。芥川候補になった戦争文学ということで読んでみた。舞台は太平洋戦争中の南洋(ニューギニアかどこかだろうか?)。野戦病院で療養する負傷兵を語り手に、回想を交える形式で進む。現地民との交流、余暇、釣りといった前線とは思えない牧歌的な風景が描かれるが、それは病院が軍の情報網や指揮系統から孤立した陸の孤島と化してしまったから。戦場の流言飛語の類として語られる皇軍の大勝や、戦後も大日本帝国が存続しているだろうという未来像が、その後の歴史を知る読者をやるせない気分にさせる。
無重力蜜柑

また、牧歌的な風景とはいえ物資は欠乏しており、マラリヤに罹った兵隊たちが次々になす術もなく死んでいく。そうして風前の灯火となった正気や生命が次々にこと切れていく地獄の「転進」シーン。結末も含めて極めて真っ当で真っ直ぐな戦争文学という印象だった。ただ、文章力は高く構成も悪くないと思うものの、何か新しさのようなものがあるかと言われると微妙で、受賞できなかったのもやむなしという感じか?

12/07 19:15
0255文字
涼
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最後、死ぬまでの意識の流れが描かれていて、自分も死ぬ直前はこんな意識なんだろうなと、実にリアルに感じた。
0255文字
柔
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南方戦線を描いた物語。ドンパチのシーンはなく静かに戦争の悲惨さを描く。野戦病院では簡素なベッドで人々は苦しみ、薬も十分にない。戦場には希望も光も一切ない。まさに死と隣り合わせ。戦死のうちでも最も多い原因が餓死、感染症であったというが徐々に弱り、亡くなっていく様がリアル。死んでいく人間は欲望を失い、話し声は穏やかになり瞳は透き通り、静かにゆっくりと死に入っていく。「死を覚悟したのではなく、忘れた」死というものが身近過ぎて怖くないという状況はとてつもなく恐ろしい。
0255文字
くるばび
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ネタバレ再読。感想は前に書いたのでそちらで。津軽のこけし職人だった兵士や、淡谷のり子の歌が登場したりと、その度に作者の出身地を思い出しながら読みました。
0255文字
すぴん
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南方戦線で散っていった兵士たちの物語 きらびやかな都会でも、ちょっとそこら辺の地面をめくってみるだけで、アスファルトの下から焼け焦げた土がきっと出てくる…今のこの平穏な生活は、先の大戦の大勢の方々の犠牲の上に成り立っているという事を忘れずにいたい。
0255文字
ω
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うん、好きω 今風の(と言っていいのか)純文らしさがあって好き。名作「野火」との比較は置いといて、文体も描写も展開も好み好み〜。芥川賞受賞作は未読、読むっきゃない(*´ω`*)♫
0255文字
桜もち 太郎
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南方戦線で負傷した主人公が野戦病院に収容される。死んでいく周りの兵士たち。救いようのない日々。どこまで読んでも救いようがない。戦争とはそういうものかもしれない。昭和54年生まれの作家が書いた作品だ。もちろん戦後生まれである。臨場感が全く感じられないのは仕方がないかもしれないし、それを求めてはいない。作者は何を思いこの作品を書いたのだろうか。あとがきを読んでも答えは見つからなかった。
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しんいち
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2020年8月15日付東京新聞の「記者の一冊」欄で紹介されたので、読んでみました。 2014年の新潮新人賞作品です。 以前に読んだ「日本人兵士ーアジア・太平洋戦争の現実」(吉田裕著)で述べられているが、日中戦争以降の軍人・軍属の戦没者数が約230万人の中で、栄養失調による餓死者と、栄養失調に伴う体力の消耗の結果としてマラリアなどに感染して病死した広義の餓死者の合計は約140万人と推定とあり、戦地に行った本当に多くの方が「指の骨」に出てくるような亡くなり方をされていると想像すると、やるせない気持ちになる。
0255文字
キビ
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絶望しかない。戦争が生むものは何なのか。私にできることは何か。涙が出てくる。今日、用事でちょっとだけ職場に行った。休日なのだが、丁度上司も来てて正午に1分間の黙祷をした。遠くからは野球の練習をしている子どもたちの声が聞こえていて…それがどうと言うことでは無く、読了後に何故だか思い出された光景。心にグサリと刺さる読書でした。
0255文字
ユウ
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再々読。戦争を感じるこの時期になると読みたくなります。戦争を経験していない世代によって書かれたフィクションなのに、まるで自分の目で戦地の光景を見たかのような錯覚に陥ってしまうほどのリアルさを感じる作品です。
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amuy
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リアリティのある戦争文学であった。舞台は赤道下に位置する南島、日本軍の野戦病院だ。風土病やマラリアにより、各々は確実に死に近づいているのだが、そのような状況でも木の根を加工して将棋盤を作り、絵才を持った清水が絵を描き場を和ませるなど、明るい希望も差し込んでいた。ただ、終始一貫して悲壮感は漂う物語。「私はその喝采の中、1人、掌を見つめてしまった。私が拍手をしても、右手は風を切るだけだった。——」
0255文字
OMO
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面白さ:○   興味:○   読みやすさ:○   新鮮さ:○   文学的云々:△
0255文字
とし
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新潮新人賞。簡素な戦争文学
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いっち
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戦争を体験していない著者が描く、想像力豊かな作品。舞台は赤道より南の半島。戦争で負傷した主人公は、野戦病院に送られる。そこにいるのは、片足のない兵士、マラリアで衰弱した兵士、顔中に包帯を巻いた兵士など。戦場から少し離れた場所で、兵士は飢餓やマラリア、風土病で死んでいく。死んだ兵士の指は切られ、焼かれ、指の骨だけが日本の遺族に送られる。悲壮感だけが漂うわけではない。原住民の暮らす村に行って交流したり、切り株を引っこ抜き将棋盤を作ったりと、ひと時のやすらぎを感じられる。だが死は徐々に、確かにやってくる。傑作。
100名山

いっちさんとの119冊同じ本を読んでいました。ただいっちさんは再読している本もあるようなのでもう少し少ないでしょうか。こんなことをやるのは初めてです。(笑)

06/13 12:41
いっち

100名山さん>コメントありがとうございます。119冊ですか!すごいです。好きな本の傾向が似てるんですかね。

06/13 19:18
3件のコメントを全て見る
0255文字
ボボボーボ・ボーボボ
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ネタバレタイトルにある「指の骨」が日本に帰る事ができない代わりに、 せめても指だけでもと指を切り落とすところが、切ないくそして気持ち悪い。 人が日常的に死んでいくのが当たり前の生活の一部になっていくような感じが切ない。 最後、起き上がれない主人には生きていて欲しいと願うばかりです。
0255文字
柊子
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南方へ出征した父から、タコ壺の話は何度も聴いた。すぐそばのタコ壺に爆弾が落ちて、仲間が死んだ話、いつも一番にタコ壺に飛び込み、何度も命拾いした話(俊足で機敏だったらしい)、もう大丈夫か?と恐る恐る顔を出す時の恐怖、等々。戦地での生々しい体験を、父から聴くことが出来て良かったと、改めて思う。
0255文字
いさおう
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☆☆ 暗い
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ユウ
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終戦記念日を前にして再読。再読した今回、戦時中の東南アジア諸国のことをもっと知りたいという気持ちに。
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fujitami
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太平洋戦争南方作戦にて設置された野戦病院を題材として書かれたフィクション小説 / 極限状態においても各々は日常的であろうとし、思いをもつ、だんだんわからなくなるのだと気が付いている状態、忘れてしまった状態、そのボーダーの可視範囲から離脱した状態、すべてに打ちひしがれる
0255文字
epitaph3
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高橋弘希「指の骨」 読み終えた。 夏。 暑くなると、戦争の話を読みたくなる。 作者は、戦争は体験していないが、しかし、まるで目の前に野戦病院、原住民、密林、そして亡くなった兵士の指の骨が見えるかのような、リアリティあふれる作品だった。
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犬丸#9
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★★★★★ 優れたイマジネーションと筆力があれば,直接の体験がなくとも我々の眼前にリアルな戦場を描き出してくれるのだと,あらためて実感。もっと評判になってもいいと強く思う。お勧めです。
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🌸さくら@
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野戦病院での様子、収容された兵士たちの心情が手に取るようにわかる。戦闘で死ぬ者も多いが、水、食糧欲しさに密林に入れば蔓植物の餌となり、蛆に食われ腐り果て、胃壁には羽虫が貼り付き腹を疼かせる…。日に日に衰弱して行く戦友を幾人も幾人も見続け、いつしか見慣れる。戦争は綺麗事ではない。経験した者にしかその恐怖はわからない。読書によって、そのわずかでも自分の生きる希望にして行きたい。
0255文字
takaichiro
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戦闘最前戦で戦いその後負傷し、野戦病院で過す男に纏わる心情譚。次々に死んでいく仲間たちとの限られた時間の心の交流や、現地民との繊細なやりとり、過去に戦い発砲した敵への想いが淡々と描かれている。「野火」ほどの緊迫感はなかったが、戦争という異常事態の中でうごめく人間の心理をうまく炙り出す様に描く。平成は戦争のない時代だった。保守主義が台頭し始めている昨今だが、令和も戦争のない時代であって欲しい。
0255文字
青美
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ネタバレ硝子風鈴が好きなので表紙に惹かれました。 戦争文学は重苦しい雰囲気に気分が圧迫されて頁を捲るのが辛いのですが、本作は静謐な文章によってそれ程抵抗なく読めました。 生き死にの境に立たされた壮絶なイメージとは違った、野戦病院で過ごす日常が描かれていました。 仲間達が死んでいく中、主人公の死の感覚が稀薄になっていく内面が不思議とリアルに感じられました。 自然の中で五感が研ぎ澄まされる状態は、戦争という危機とは対極的に感じられ哀感が漂っていました。 そして最後に行き着く先は死なのかと悲痛な気持ちになりました。
0255文字
Willie the Wildcat
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証。生きた証、死んだ証、そしてヒトの証。問いかけるのが、2つの転機。理性、そして本能。前者は、被弾し意識を失った瞬間と、野戦病院の"匂い”が変わった瞬間。後者は、軍医の手が齎した歪んだ自分の顔と、指を焼き涙が欲望に変わる心。理性が「死」、本能が「生」を暗喩。 故のヒトの証である。そして、物理的な証が表題。同様の視点は、死の恐れ、死の覚悟が、目の前の現実に直面することで、死という概念が 消失する件でも感じた。最後に”通った”道の色。意味深。因みに、資生堂の練り歯磨粉ってイメージできないなぁ。
0255文字
十文字
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なるほど、大岡昇平の『野火』かもなぁ。
0255文字
ユウ
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太平洋戦争末期の異国の地での日本兵の日常が淡々と描かれています。 まるで自分が戦地で見ているかのように情景が浮かんできて、読み終わった後もしばらく心がざわついていました。
0255文字
へっけ
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ネタバレ凄惨を極める、南方の戦場。つい先刻まで話していた戦友が、刹那で命を落とす。斃れた戦友達の手の指を切断して、その骨を遺骨として預かる。戦争を知らない世代が書いている戦争文学だが、私にはリアルに南方の空気を感じられた。
0255文字
M.R
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デビュー作。第152回芥川賞候補作。戦争中負傷し病舎に担ぎ込まれた後、そこでの日常が淡々と描かれる。前半これ以上なく自然な日常が描かれる中、ふと戦争による傷痕が時折垣間見える。そして、後半「私」周りに襲い掛かる出来事が、一つまた一つと「私」を蝕んでいく様には心が締め付けられる思いであった。直接敵兵と戦闘するなど過激な事がなくとも、戦争下では多くの事が苦しみに繋がる。一方、そんな苦しみとは無縁かのような日常もある。直接的ではなく、間接的に戦争の悲惨さが日常の描写が相まって滲み出る様に伝わってくる作品だった。
0255文字
笠島
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戦争の中に日常があり、日常の中に戦争がある。日常にいつも死の影が見えているのがイヤだなと思う。静かだけど丁寧な戦争文学という印象。
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テディ
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これ程静寂で限定された描写場面の戦争小説は初めて読んだ。太平洋戦争末期の南方の島。戦争に駆り出された未だあどけなさが残る青年兵士たちの交流。やがて彼等の一人々が負傷し野戦病院に入院する。食料不足、熱病等により分隊長が亡くなり数々の友人達も命を落とす。静かに死体が朽ちていく様子が生々しく描かれており目を背けたくなるも戦争の残虐さ、哀しみと虚しさが伝わる。敵軍により軍事拠点が奪還し南方戦線が劣勢に転じる。死を目指す為の退却。遭遇する日本兵の死体。病死した戦友の指と自分の指を背嚢へ蔵う。静寂な死に向かう主人公。
0255文字
とら
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戦争を体験していない世代が描く戦争。中学時代に修学旅行で、学習だと言われ戦争を映像で”強制的に見せられた”ことはあるが、自分はやはり想像することしか出来ない。でも自分から戦争を勉強しようとは絶対にならないので、学校の義務教育には感謝している。戦争なんて無いほうが当然良いのだ。美談にはしてはいけない。戦争は全編を通して悲惨なものでしかなくて、自分たちが知るべきはその一点で良い。生まれるのは、ただ悲しい気持ち。この作品はその一点を描けていたので良かった。それにしても高橋さんは文章が上手い。描写が鮮明に浮かぶ。
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Seirēn
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第二次大戦という時代背景が、現代日本語散文の水準からして些か硬派な文体と強い共犯関係を結んでいる点では『日蝕』を連想する。何よりもよかったのは中盤、野戦病院での日常描写だ。語り手はそこに至るまで目にした同僚らの死を回想し、そして呑気に友軍の破竹の進撃を夢見ているあいだにも病気で死んでゆく同僚たちの死をも織り込みながら、それでも彼の意識の中では平穏であるかのようにゆったりした時間が流れている。死を織り込みながらの、何という生に充ちた時間だろう。良い小説の中には良い時間の流れがあることを再確認できた。
0255文字
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