形式:単行本(ソフトカバー)
出版社:平凡社
形式:Kindle版
形式:ペーパーバック
乃至政彦「戦国の陣形」でも似た内容が触れられていた。そもそも畑は常に管理し続けないと作物が実らないので農民はずっと畑にいなければいけない・農民と兵士を兼業させる兵農未分離のシステムだと、戦時には農民が徴兵されて畑の管理が行き届かず、結果作物が取れず軍は兵糧不足に陥る・なので昔から農民と武士は分業していた(しないと国が成り立たなかった)という旨が述べられている。兵の解説の中で少し触れられただけではあるが、本書とかなり似た内容であり、歴史研究の「兵農分離」をめぐる潮流が伺われ興味深い。
一律に「兵」(武士)としてまとめられる階層の中にも、仔細に見れば「農」との関係が完全には断ち切れていない各種の奉公人が含まれており、彼らなくして戦国/江戸期の武士社会は成り立ち得なかった。兵農分離のみならず、当時の身分制度そのものに関する重要な指摘。城下町での生活は思った以上にコストが大きく、武士の窮乏化の元凶と見なされ、打開策として旧来の領主システムに戻す案があったという話も興味深い。
通説通りの「兵農分離政策」はなかったにせよ、武士階層の城下集住(ただし地方差あり)や身分の分離の厳格化といった現象が起きていたことは著者も否定していない。そして、その契機となったのは豊臣政権下での一連の施策だった。一方、この分野での信長の存在感は意外に薄い。「革新」のルーツを何でも彼に結びつけるのはやはり無理筋のようだ。
“兵農分離という状態は、結果的に近世のかなりの地域で生じたが、兵農分離を目指す政策はなかった”
1970年代〜80年代に教育を受けた人なら、高校の授業と大分異なる事にも気付く筈です。2017年までの研究内容が反映されたものとなっています。
個人的な感想ですが、本書は終章の「兵農分離の捉え方」を先に読むことをお勧めする。というのは、各章がどの位置付けの話なのかが掴みやすいから。事象が多岐に亘る内容ゆえに。実は本書は一度頓挫して、本を紛れさせて、もう1冊買い直す仕儀に至った1冊だったので、強くお奨めしておきます。
近年(二〇一六年)の一時期、インターネット上でこの士農工商について話題となっていたが、SNSなどでは「教師に噓を教えられていた」とか「騙されていた」などという書き込みも見られたため、少々驚いた。「自分は悪意を持った人に騙されているに違いない」というよくある思い込みが、研究成果による書き直しに対しても向けられていたのである。
こうした感想は、ガンの治療法が研究で見つかったというニュースに「今までガンが治らないと言っていたのは、我々を騙していたのか」と怒るようなもので、生産的な思考とは言えない
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