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兵農分離はあったのか (中世から近世へ)

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nizi
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中世日本に兵農分離はあったのか、政策としてはなかったけど、結果的にそうなったことはあったよ、ただし地域によって差があるよ、と説明した本。江戸時代には「武と農を分けると足腰が弱くなる」という論があったりして、昭和の「都会っ子は田舎の子に比べてひ弱」に近いものがある。そこから武士の家族は地元に返して空いた屋敷を潰して田んぼにしろという説まで登場していたのは面白い。
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momen
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兵農分離とはそもそも何か?戦闘員(武士、武家奉公人)と農民の職業内容や居住地域を分離させるための政策はあったのか?を解説する本。「兵農分離」の定義の整理から始まり、前半は徴兵制を軸に、後半は武士身分の居住区域と領国経営の変遷から、戦国から江戸にかけての実際を説明。先行研究の誤解や先入観を解き、大名達の政策の本来の意義や農民武士双方の実情を探る。専門的な内容が多く、他の研究や大名の残した資料を多数引用解説しており読み応えがある。主語や用語のごちゃついた記述もあるが各章最後にまとめがあるので内容把握しやすい。
momen

乃至政彦「戦国の陣形」でも似た内容が触れられていた。そもそも畑は常に管理し続けないと作物が実らないので農民はずっと畑にいなければいけない・農民と兵士を兼業させる兵農未分離のシステムだと、戦時には農民が徴兵されて畑の管理が行き届かず、結果作物が取れず軍は兵糧不足に陥る・なので昔から農民と武士は分業していた(しないと国が成り立たなかった)という旨が述べられている。兵の解説の中で少し触れられただけではあるが、本書とかなり似た内容であり、歴史研究の「兵農分離」をめぐる潮流が伺われ興味深い。

01/26 01:16
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浅香山三郎
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若手の中世・近世移行期の研究者による「中世から近世ヘ」のシリーズの一冊。本書は、「兵農分離」といふ近世社会の原理の中身を腑分けし、通説の再検討を行ふ。通説のやうに、刀狩令により村に武器が無くなつた訳ではなく、武士が城下町に集住した訳でもなく、実態はもつと複雑であつたといふ。かつての研究による概念としての兵農分離で、中世から近世ヘの理解が「分かりやすく」説明されてきた点を訂正し、一つの志向性をもつた政策であると諸事象をまとめることを否定する。概念に引きずられた歴史理解の克服を丁寧に論じた好著だと思ふ。
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Toska
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再読。最近読んだ本に、明治政府は徴兵制の導入を「兵農合一」と表現していたという面白い記述があったので、兵農分離についてももう一度振り返ってみる気になった。結局、律令期の国民皆兵を理想視した明治政府も、「信長の軍隊は兵農分離のおかげで強かった」と思い込みがちな現代の我々も、過去に対する特定のイメージに囚われてしまっていたということなのか。
Toska

一律に「兵」(武士)としてまとめられる階層の中にも、仔細に見れば「農」との関係が完全には断ち切れていない各種の奉公人が含まれており、彼らなくして戦国/江戸期の武士社会は成り立ち得なかった。兵農分離のみならず、当時の身分制度そのものに関する重要な指摘。城下町での生活は思った以上にコストが大きく、武士の窮乏化の元凶と見なされ、打開策として旧来の領主システムに戻す案があったという話も興味深い。

06/23 09:41
Toska

通説通りの「兵農分離政策」はなかったにせよ、武士階層の城下集住(ただし地方差あり)や身分の分離の厳格化といった現象が起きていたことは著者も否定していない。そして、その契機となったのは豊臣政権下での一連の施策だった。一方、この分野での信長の存在感は意外に薄い。「革新」のルーツを何でも彼に結びつけるのはやはり無理筋のようだ。

06/23 09:46
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四不人
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書いてあることは正しいと思う。兵農分離を目指した政策は無かったんだろうな。しかし、そもそも「兵農分離」は目指すものなのか? 歴史学の本を読んでると時折思うけど、何かの制度が不徹底だったりすることは、悪いことなんだろうか。特に戦国期のような時代には、必要なことを必要なだけするのが最適解なんじゃないかあ。例えば、家臣を全て城下に集めるのが、戦乱の時代の「最適解」とは思えないのだが。まあ文書中心の研究なので仕方ないんだけど、どちらの方が進歩しているとかにこだわらない方がいいんじゃないかな。
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竹の子
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あくまで結果として兵農分離に向かっただけで個々の政策は兵農分離を意図していたわけではなさそうなのは目からウロコでした。かなり難しい内容をわかりやすく表してくれた著者に感謝。
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オルレアンの聖たぬき
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先日のシンポジウムで『兵農分離について』の言及があったので、少し詳しく見てみよう……的な感じで手に取った本だが、収穫は想像以上。衝撃的な『武士のサラリーマン化』『単身赴任』の例はストンと腑に落ちた。あくまでも結果でしかもその逆もあった。そして根本的に『兵農分離を目指した』大名は一人もいなかったということである。
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かんがく
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豊臣政権の検地・刀狩などの政策を経て「兵農分離」が完成したという通説に対して、先行研究と史料を丁寧に追うことで実情を明らかにしていくザ・歴史研究といった本。そもそも「兵」とは何かから話が始まっていき、「兵農分離が進むと軍が強い」「刀狩において武装解除が進んだ」といった一般的なイメージを一つ一つ分析していく様が鮮やかだった。江戸時代のゴールありきで織豊政権を捉えるのには慎重になった方が良いなと思った。
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wuhujiang
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非常に読みやすかった。理論検証とかだと、「この用語は通説がこの意味で本書だとこう使ってて……あれ?」となるところ、各章の最初最後でまとめがはいってて理解を追いつかせてくれた。「兵農分離は目指されたわけでなく、結果的にそうなった」という結論にも納得。今でも「100年後の未来を~」みたいな政策よりも、眼前にある課題への対処の積み重ねが社会を変えてので。兵農分離されていた、されていなかったといった二元論で考えていたが、もっと細分化することで実態が見えてくるのだなと感心。
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眉毛ごもら
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兵農分離。学校で習ったなと疎いのでアプデのために。結論としては法令としての兵農分離はなかったが結果論として適材適所と身分コードの確立という点。農民も戦いに出るの嫌がったし大名も部下が近所に住んでないと有事の時に困るからという点で城下町に住まわせた結果城下町に武士が集まるということに。それも藩によって対応は様々で四苦八苦した結果で場合によっては金のかかる城下町から村へ移住ということもあったし、知行地の維持ができないから俸給制へという転換などなど武士というものが織豊期から江戸期に状況で変化した結果だったのねと
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YONDA
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信長は兵農分離してたから強いとか言ってた頃が懐かしい。「政策としての兵農分離はなかった」、そして秀吉の人掃令も元を正せば奉公人確保のためとは勉強になりました。刀狩りや検地についても今までの単純な理解ではなく、さらに深く理解することができました。ただ、欲を言えば戦国時代辺りをもっと詳しく掘り下げてもらえれば良かったかと個人的には思いました。
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chang_ume
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現象として「兵農分離」を理解する。近年流行(?)の結果論的な時代理解です。全体としては、豊臣政権の朝鮮侵略に由来する兵営国家論(高木昭作氏)に立脚の印象。その上で兵農分離を、諸条件が重なった結果によって生じた、武士たちの「生活様式の変化」として捉えていく。これはラディカルな視点だろうと。一方で、本書でも注目された「武家奉公人」の動向に関連して、近世城下町の「足軽町」設置の意義を考えると、やはり統一政権による集権的な社会変革があったのではと思いたくなる。中近世移行期のダイナミズムをどのように評価するか。
chang_ume

“兵農分離という状態は、結果的に近世のかなりの地域で生じたが、兵農分離を目指す政策はなかった”

06/18 20:05
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ルヴナン
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兵農分離って兵制を指すものだと思ってたけど、この本では身分意識として語っている。なんか痒くないとこを掻いてもらった気分。
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L
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史学関係では大変評判が良い本。読みやすく、研究史も知ることが出来ます。 かっちりした専門書となってないのが良いところだと思います。
L

1970年代〜80年代に教育を受けた人なら、高校の授業と大分異なる事にも気付く筈です。2017年までの研究内容が反映されたものとなっています。

01/21 11:30
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青山尚之
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どうも「あった」「なかった」のひと言でスパッと答えられる問いではないようだけど、そうであるからこそ、兵農分離論が含む範囲を示し、そのそれぞれについての議論を概観させてくれる本書はとても面白かった。また、織豊期の兵農分離政策を問い直すことは時代区分論にもかかわってくるものであり、ますます興味を深められる議論でもあった。/個人的には、ここ数年で読んできた本で、兵士の専業化を信長・秀吉勢力の革新性ととらえる見方への疑問が生じていたのだけど、その他戦国大名の例をあげて否定する回答を得られたのが一番の収穫だった。
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曲月斎
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中世から近世へ移る特徴の一つとして「兵農分離」が挙げられてきた。だが本書ではそれは現象であって、意図的な政策ではなかったというのを挙証していく。概括的に結論付けるこの術語は万能ではないという証明でもある。近代的な兵科で言えば、騎兵、砲兵が支配層で、歩兵で武家奉公人、輜重兵が農民という構図の中で、兵農分離は土地との関係性が鍵になっているような。全て土地に結び付いていたものが、城下への集住、移封転封等の出来事で土地との関係が切れ、知行取りが蔵米取り、扶持米制に移行する社会の変化。言えばサラリーマン化の歴史。
曲月斎

個人的な感想ですが、本書は終章の「兵農分離の捉え方」を先に読むことをお勧めする。というのは、各章がどの位置付けの話なのかが掴みやすいから。事象が多岐に亘る内容ゆえに。実は本書は一度頓挫して、本を紛れさせて、もう1冊買い直す仕儀に至った1冊だったので、強くお奨めしておきます。

11/03 13:25
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kawasaki
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中世と近世を分かつ特徴とされる「兵農分離」を因数分解して検討。意図して「兵農分離」を進める政策が行われたわけでなく、結果として「兵農分離」と言われる状況になって行った、ということを描きだす。むしろ「兵農分離」という、「便利に使われすぎた」用語がそのじつ曖昧きわまりない枠組で、用語に捕らわれることをやめた方が実情に接近できるという主張。本書はしっかりと研究史の整理がされていて、研究者としてこの時代と向き合うわけではない横着者にはありがたい限り。
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katashin86
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いずれも好評な平凡社「中世から近世へ」シリーズの1冊。兵農分離、大名家臣としての兵=武士階層と農=百姓階層が分離していく現象は、目指すべき理想というわけでなく、それを目指した政策があったわけでない、結果として起こった現象である、とする。その兵農分離が近世社会の特質のひとつであるなら、そのような結果をもたらした中世から近世への変化とは何か、という関心が高まる。
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Humbaba
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結果的には良い方向に転んだとしても、それが狙い通りのものなのか、それとも偶然の結果なのかには大きな違いがある。良い成果が出たのであれば元の目的が何であれ評価されるべきであると言うのは変わらない。それでも当時の人々が何を考えていたかをりかいするためにも結果だけでなくその意図を知っておくことは意味がある。
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うっかり呑兵衛
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斜め読み。図書館の本だったが、購入してしっかり読みたい。兵農分離が「政策として目指されたものではない」ということを、丹念に論証していく過程がわかりやすい。歴史学のアプローチ方法としても見倣いたい。
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Abercrombie
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中世から近世への社会転換を示す重要要素とされる「兵農分離」。しかし、兵農分離を目指した政策はなく、あくまでも様々な要因による結果・現象に過ぎなかったことを、豊富な資料により実証する。わかりやすく読みやすい。すぐに逃げちゃう武家奉公人♪に妙にハマった。
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Kenji  Suzuya
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いわゆる兵農分離について、統一的な目的を持った政策ではなく、①軍事力強化、②身分差別化、③城下集住、④俸禄制導入、の各点から実証的に考察し、世上言うような兵農分離政策はなく、他の政策の結果として、武士階級とその他階級との身分差が明確化されたという点において限定的に分離された、とする。「体系だった兵農分離政策がある」ことを前提とした史料解釈が、他の可能性を見えづらくし、他の解釈の可能性を狭めていた。
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電羊齋
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著者は、論点の整理、先行研究の再検討、そして史料の入念な読み込みと読み直しを行い、さらにその過程を読者にもわかりやすく提示。その結論は、兵農分離を目指した政策が最初からあったわけではなく、数々の要因がからみあい、あくまで結果的に兵農分離という状態が実現したというもの。丁寧な論証により、説得力ある内容となっている。
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サトシ@朝練ファイト
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メモ 士農工商という言葉は紀元前の中国で使われており、江戸時代にはそうした職に就いている人たちの総称であり、身分の序列を表したものではなかった
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樋口佳之
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結論を一般化して言えば、社会は政治家によってすべてが設計されるのではなく、人々の営みが形作っていく部分もまた大きい、ということである。英雄や悪者から社会像を語るのも一つのあり方ではあるが、彼らを万能の存在として描いてしまっては、現在の我々が社会を構成しているという意識すら薄くなってしまいかねない。/日本史の重要ターム(素養の無い自分にはその意識も希薄だった。残念。)である「兵農分離」をこの観点でとらえ直した本。/現代語訳、簡潔な図表、現代的な比喩と門外漢でもついていける内容でした。80年生まれの方。若い!
樋口佳之

近年(二〇一六年)の一時期、インターネット上でこの士農工商について話題となっていたが、SNSなどでは「教師に噓を教えられていた」とか「騙されていた」などという書き込みも見られたため、少々驚いた。「自分は悪意を持った人に騙されているに違いない」というよくある思い込みが、研究成果による書き直しに対しても向けられていたのである。

12/05 09:30
樋口佳之

こうした感想は、ガンの治療法が研究で見つかったというニュースに「今までガンが治らないと言っていたのは、我々を騙していたのか」と怒るようなもので、生産的な思考とは言えない

12/05 09:30
4件のコメントを全て見る
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バルジ
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ネタバレ教科書レベルの「兵農分離」観しか抱いていなかった身としてはこの書物の内容には衝撃を受けた。従来兵農分離を目的としたと解釈されてきた政策が、実は他に目的があり「兵農分離」はその結果に過ぎないという指摘は、諸史料の再解釈や先行研究によって非常に説得力のあるものに仕上がっている。 筆者の先行研究の纒め方や史料解釈の視角は、史学専攻の学生や歴史に興味関心を抱く者にとって大いに参考になるものだと思う。
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鯖
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兵農分離に関する疑問を著者なりに考えてみた本とのこと。兵農分離は実現されたのではなく、生活様式の変化の結果としてそうなったという結論に至るまでの問いと答えが丁寧に積み重ねられていて読みやすかった。
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やま
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著名な合戦などに言及されることがほとんどなく、テーマも結論も地味。にもかかわらず考察過程が丁寧で楽しんで読める。良書。
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onepei
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奉公人の概念の説明をはじめ、丁寧な本。意図してなされたものではなかったとする。
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さとうしん
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兵農分離について、兵農分離をすれば本当に軍隊は強くなるのか?兵農分離以前は百姓が戦争に動員されていたのか?武士と百姓の間の身分の移動を禁じ、双方の居住区の分離を定める政策が行われたのか?等々様々な観点から史料を検討し、兵農分離の状態は複数の要因による結果として生じたものであって、それを目指す政策はなかったという結論を導き出す。本書の中身もさることながら、歴史学的な議論や研究へのアプローチのしかたを学ぶために読まれるべき本。
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ほうすう
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「おわりに」、では筆者自ら「兵農分離を分かりやすく解説する本ではなく、兵農分離に対する疑問を筆者なりに考えてみた本になった」と述べていますが、ものすごく丁寧に分かりやすく説明しようという筆者の意図が伝わってくる著作。一つ一つの根拠や論点をしっかり提示しながら論を展開しているため非常に説得力のある内容。結果としての兵農分離という結論も納得させられるものでした。
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スー
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兵農分離とは?農民兵から職業軍人になったと簡単に考えていました。しかし、この本で戦闘員と非戦闘員、階級、城下町と村住む場所の違いとある事を知りました。分かった事は戦国時代から農民と戦闘員は分かれていた。戦闘員は村で生活していて戦になると出かける。農民は基本荷物運びに駆り出されるだけで戦闘は領地に攻めこまれた時など。兵農分離を推進した政策は行われていない。結果的にそういう流れになった。刀狩りは文字通り刀と脇差しが主な対象で武士とその他を明確に分ける事が目的だった。鉄砲は城に有るより村の方が多く持っていた。
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ut_ken
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ネタバレ『兵農分離はあったのか』読了。まず非常に読みやすい構成だった。冒頭で、混乱している兵農分離の定義を軍の専門化、身分分離、居住地分離などに分類し、それぞれの項目ごとに章を設けて検討している。各章では結論をまとめ、終章でもわかりやすくまとめてる。 結論だけなら終章だけでもわかる。そして「あったかなかったか」については、軍の専門化は「ほぼなかった」。他の分は「社会状況の変化や個別の意図の副産物で結果的になった」
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MUNEKAZ
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「兵農分離」について、実証的に考察した一冊。そもそも「兵」とは何か、士農の身分区別はあったのか、城下町への集住は行われたのか、など先行研究や著者なりの考えを示しながらこのマジックワードを丁寧に解説している。挑戦的なタイトルだが、語り口はソフトであり、中世と近世の間で、為政者たちの思惑を超えて起きた「兵農分離」という現象(著者曰く、兵農分離を「目指した」政策は無い)についてよく知ることができる。また、何気なく使っている歴史用語について、深く考えるきっかけになるような本だとも思う。
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こずえ
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ここ最近、私が小学生だったころに教わった歴史が実は違ったのではないかとなっている。元寇や慶安のお触書、そしてこの兵農分離などである。史料をしっかりと分析していて読みごたえがある
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