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ジャッカ・ドフニ 上 海の記憶の物語 (集英社文庫)

感想・レビュー
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amanon
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二度目の再読。西欧列強への危機感というある意味、仕方がない事情があるにせよ、キリシタンや宣教者に対する執拗なまでの迫害には目を背けたくなる。それだけでなく、常に強者の論理が罷り通り、弱いもの、小さくされた者の声はないものと見做されてしまいがちという、いつの世も変わらない理不尽な状況に嘆息。その本編であるチカとジュリアンの物語でもそうだが、それと並行して語られる著者をモデルとしたシングルマザーのエピソードにおける少数民族への不当な仕打ちは、日本の陰の歴史として、決して忘れてはならない出来事だと思った。
0255文字
読書ノオト
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ネタバレ太宰治の次女、津島佑子の作品。灰色の現代を悲しみに押しつぶされそうになりながら生きる「わたし(あなた)」と、凍える「アキタ」の寒さから動けなくなるほど強烈な「バタビア」の暑さまでを、ハポ(母)の歌の記憶にすがりながら悲しみつつも強く生きるチカップ(鳥)と呼ばれる少女の人生の交錯。隠れキリシタンたちの言葉を失うような時間軸での信仰譚がからみながら、信じるとは?救いとは?人生とは?クニとは?戦争とは?憎しみとは?死別とは?天国とは?と、問いの牡丹雪が降る。なぜここまでも悲しいのにここまでも美しいのか。悲しい。
読書ノオト

※上下巻読んでの感想です

11/02 18:20
0255文字
fukufuku
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津島佑子を読むのは初めて。 最近、ギリヤークやその他少数民族に興味があるので、手に取った。 地名がことごとくカタカナなのが読みにくい。女満別はともかく網走や釧路はカタカナにする意味があるのか。 中浦ジュリアンがちらりと物語にでてきたのは少しだけ嬉しい。遣欧少年使節も興味の対象なので得した気分。
0255文字
amanon
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虐げられた者、阻害された者への眼差し。アイヌ、隠れキリシタン、朝鮮人…著者自身が人知れず苦悩を抱え、シングルマザーという危うい立場にいたということももちろん影響しているに違いない。ただ、それだけでは捉えきれない何かに駆り立てられながら、著者はこのような作品を紡ぎ続けて来たということに改めて思い当たる。キリシタン禁止令下の日本から抜け出し、マカオへと向かうジュリアンとチカ。色々な方言が入り混じる二人の会話には、まさに著者の複数の声が反映されているのでは?とふと思わされた。プロローグでの謎賭けが意味深…
0255文字
なかちぇ
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2つの時間軸が並行して紡がれる物語。一見して両者に直接的な関連性はないのだが、読み進めるうちに不思議と共振し始める。この作品は「疎外」が大きなテーマとなっており、自らの立地点をどのように求めていけばいいかを、文字通り旅しながら、探し求める。そこには1つの物語が必要だ。自己のアイデンティティを形作る物語。それは1つの信仰と言えるものかもしれない。宗教、時代、民族、フェミニズムと大きなモチーフを抱き込んで、津島の文体は冷静でありながら力強く、私を作品に没頭させた。タフな文体で描かれる、タフなストーリーである。
0255文字
ハッカ飴
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とても細い線で描かれた絵を見ているような気持ちになる。アイヌにおいて和人、沖縄においてヤマトンチュ…日本人はいったい何をしてきたのか、恥ずかしくもなる。マイノリティを踏み潰す…また、やろうとしていないだろうか、今の政権。
0255文字
±
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読みだしてすぐに、これは昨年網走に行く前に読んでおく本だった…!と後悔するが、現地の空気感を思い出しながら読めるのも悪くないと思い直し。息子を亡くしたシングルマザーの「わたし」、アイヌの子でありながら隠れキリシタンとして日本を脱出する少女チカップ、400年離れた物語をユカラとともに過ごす。…「あの」太宰の娘さん、という認識しかなかったのが悔やまれる津島佑子初読。文庫カバーの木彫海鳥の貌にカムイを見つつ(ゆえに鳥の物語に思えるのだが、副題では海だという)、下巻へ。
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