形式:文庫
出版社:岩波書店
本書を読むまで北海道の開拓労働の過酷さがこれほど凄まじいものだとは思わず、人は人にここまで酷薄になれるのかという思いでページを捲りながら読了。特に日本人として心の底から申し訳ないと感じたのが、強制連行で連れてこられた中国・朝鮮人労働者に対する仕打ち。ページを捲る度に沈痛な思いがしました。あとは、著者と尼僧とのやり取りや囚人を戦地に送ることで獄死者ではなく、戦死者として扱われたこと。囚人を祀った石碑に「山神」と刻み、彼らを神としたエピソードの数々に死んだ人の供養や悼むことについて深く考えさせられました。
本書の最後あたりで人柱として常紋トンネルに埋められた人骨の話が出てきますが、著者である小池氏が朝日文庫で「常紋トンネル」なる本を執筆しているようなので、そちらも機会を見て、いずれ読んでみたいなと思った次第です。
AyumiさんとMasaさんのコメント興味深く拝読。博物館サイトも拝見しました。Ayumiさんの『鎖塚』の紹介を読み、大昔に読んだ『常紋トンネル』を思い出しました。同じ著者のようです。こちらは鉄道の話で、北見市近く石北本線のトンネル工事(大正3年完工)に纏わるタコ部屋労働者の悲惨な話でした。私も昭和52年(1977)に網走刑務所に行ったことがあります。(入れられたわけではありません)当時は博物館はもちろん何も無かったような…。意識低い系の若者だったので、歴史ついても何も読み取れなかったのかも知れませんが。
『常紋トンネル』。こういうことをいろいろにお調べになっている方のようですね。この本についても、もともとは秩父事件を調べていたことから派生したようです。東京でお生まれになったようですが、後に北海道に渡られて歴史に埋もれた人々を掘り起こされたとか。いろいろな方を訪ね歩いて関係者のお話も聞かれているようで、感嘆を禁じえません。
若い世代を中心に、暴力的な、あるいはそうでなくても他者に影響を与える抗議活動への嫌悪感が強まっているように感じる。ただ、当時のこれほどの圧倒的な暴力を前に人権擁護に立ち上がろうとしたら、僕自身でも暴力革命を指向したかもしれない(肯定ではなく、容認?)。圧倒的な暴力と無法状態と、警察も行政も味方になってくれない絶望はいかばかりのものだったか。見つかったら壮絶なリンチに遭うのがわかっているのに20%が逃走をはかったという事実の重さ。
衝撃のあまり、補節の前までの章を読んで考えていたことが全部ふっとんでしまった。時間のあるときに追加で感想を書こうと思います・・・
北海道の常紋トンネルを通るときは、この本の補節を読んだほうがいいんじゃないかと思う。供養のために。
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本書を読むまで北海道の開拓労働の過酷さがこれほど凄まじいものだとは思わず、人は人にここまで酷薄になれるのかという思いでページを捲りながら読了。特に日本人として心の底から申し訳ないと感じたのが、強制連行で連れてこられた中国・朝鮮人労働者に対する仕打ち。ページを捲る度に沈痛な思いがしました。あとは、著者と尼僧とのやり取りや囚人を戦地に送ることで獄死者ではなく、戦死者として扱われたこと。囚人を祀った石碑に「山神」と刻み、彼らを神としたエピソードの数々に死んだ人の供養や悼むことについて深く考えさせられました。
本書の最後あたりで人柱として常紋トンネルに埋められた人骨の話が出てきますが、著者である小池氏が朝日文庫で「常紋トンネル」なる本を執筆しているようなので、そちらも機会を見て、いずれ読んでみたいなと思った次第です。