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鎖塚――自由民権と囚人労働の記録 (岩波現代文庫)

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青柳
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秩父事件の活動家が内地で捕縛され、重罪人として彼らが送り込まれた先は、当時の日本の最辺境である北海道。そこで彼らを待っていたのは、極限状態の環境下で道内の道路を開拓する過酷な囚人労働だった。また、北海道に集められたのは、自由民権の志士達だけでなく、足尾銅山の鉱毒から逃れてきた農民、悪質な斡旋業者に騙され炭鉱労働に従事することになった人々、強制連行で連れてこられた中国・朝鮮の人々らも、劣悪な労働に従事させられていた。労働中に死んだ囚人は鉄鎖を付けたまま埋められ、無名の彼らを埋めた塚を人々は「鎖塚」と呼んだ。
青柳

本書を読むまで北海道の開拓労働の過酷さがこれほど凄まじいものだとは思わず、人は人にここまで酷薄になれるのかという思いでページを捲りながら読了。特に日本人として心の底から申し訳ないと感じたのが、強制連行で連れてこられた中国・朝鮮人労働者に対する仕打ち。ページを捲る度に沈痛な思いがしました。あとは、著者と尼僧とのやり取りや囚人を戦地に送ることで獄死者ではなく、戦死者として扱われたこと。囚人を祀った石碑に「山神」と刻み、彼らを神としたエピソードの数々に死んだ人の供養や悼むことについて深く考えさせられました。

12/17 20:46
青柳

本書の最後あたりで人柱として常紋トンネルに埋められた人骨の話が出てきますが、著者である小池氏が朝日文庫で「常紋トンネル」なる本を執筆しているようなので、そちらも機会を見て、いずれ読んでみたいなと思った次第です。

12/17 20:50
0255文字
tegi
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ゴールデンカムイの副読本としてよさげだなと思って読んだらヒットであった。「囚人はこき使えばいいし死んだら財政負担が減っていいっしょ」という伊藤博文マジやばいなと思いました。坂本直寛らの活動をじっくり描く中盤がなければよりつかみやすい入門書になったと思うが、そうした個人についての記述は、著者本人が自身の差別感情への反省の視点(個人はいかにしてよく生きられるのか)を歴史上の人物にもあてはめていったゆえだろう。
0255文字
Ayumi Katayama
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明治二十四年、囚人千名余を動員し網走・旭川間の国道を開削した。五月着工十二月完成という突貫工事は囚人を酷使して成したものである。三〇〇名の死者は路傍に埋葬された。埋葬された地の上に遺されたのは囚人を繋いだ鎖。いつしかそこは「くさりづか」と呼ばれるようになった。このような歴史を何故知らずにきたのか。差別虐待は遠いことではなく我が身のすぐ足元にある。いったい何故このような非人道が可能であったのか。とりもなおさず、それは囚人を人とみなさない差別意識にある。
まーくん

AyumiさんとMasaさんのコメント興味深く拝読。博物館サイトも拝見しました。Ayumiさんの『鎖塚』の紹介を読み、大昔に読んだ『常紋トンネル』を思い出しました。同じ著者のようです。こちらは鉄道の話で、北見市近く石北本線のトンネル工事(大正3年完工)に纏わるタコ部屋労働者の悲惨な話でした。私も昭和52年(1977)に網走刑務所に行ったことがあります。(入れられたわけではありません)当時は博物館はもちろん何も無かったような…。意識低い系の若者だったので、歴史ついても何も読み取れなかったのかも知れませんが。

08/29 21:53
Ayumi Katayama

『常紋トンネル』。こういうことをいろいろにお調べになっている方のようですね。この本についても、もともとは秩父事件を調べていたことから派生したようです。東京でお生まれになったようですが、後に北海道に渡られて歴史に埋もれた人々を掘り起こされたとか。いろいろな方を訪ね歩いて関係者のお話も聞かれているようで、感嘆を禁じえません。

08/29 22:28
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0255文字
ドラマチックガス
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囚人道路について知りたくて手にとったら、秩父事件を始めとする明治期の大衆運動にタコ部屋労働、朝鮮人強制労働まで含む壮大な労作だった。まさにタイムリーな感覚で行けば、香港の活動家たちが送り込まれたようなものか。ふだんお世話になっている道路や地名が次々でてきて、これまでの無知を恥じる。近いうちに北見や網走へ行く用事があるので、この本を片手にブラックツーリズムしてきます。
ドラマチックガス

若い世代を中心に、暴力的な、あるいはそうでなくても他者に影響を与える抗議活動への嫌悪感が強まっているように感じる。ただ、当時のこれほどの圧倒的な暴力を前に人権擁護に立ち上がろうとしたら、僕自身でも暴力革命を指向したかもしれない(肯定ではなく、容認?)。圧倒的な暴力と無法状態と、警察も行政も味方になってくれない絶望はいかばかりのものだったか。見つかったら壮絶なリンチに遭うのがわかっているのに20%が逃走をはかったという事実の重さ。

08/14 17:00
0255文字
笛吹岬
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地域史掘り起こしの代表的な著作を手軽に読めるようになったのはうれしい。❝町ブラ❞も悪いとは言わないが、国家を相対化できるのは地域の視点であろう。
0255文字
マリーゴールド
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ネタバレ最大の衝撃は最後に置かれた補節にあった・・・前近代が明治と地続きどころじゃない、大正時代(昭和もかもしれない)においてさえ、どす黒く残っているのが我々の国の近代史なのだ。その前近代が剥き出しの資本主義と結びついたら如何なる惨状を呈すものか。悪寒と吐き気を感じつつ、それでも知らないより知ったほうがずっと良かったと思える。あれほど酷い目に遭った人々がただ忘れ去られるのなら、どのような開発も発展も文明も全て空しくなるだろう。
マリーゴールド

衝撃のあまり、補節の前までの章を読んで考えていたことが全部ふっとんでしまった。時間のあるときに追加で感想を書こうと思います・・・

01/05 20:52
マリーゴールド

北海道の常紋トンネルを通るときは、この本の補節を読んだほうがいいんじゃないかと思う。供養のために。

01/05 21:02
0255文字
YNR
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北海道における囚人労働の記録。貴重なフィールド資料である。
0255文字
Hiroki  Nishizumi
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良書だ。富国強兵政策に突き進む日本の陰を厳しいタッチで記録している。囚人労働とそれに続くタコ部屋について「監獄の本分は苦役にある」という言葉や民族差別を基調にした現実に正面から見据える必要を感じた。さらに、p.327「教育者は『ほまれ』を受けてはいけない。そして諸君の中の一人でも『恥』をかくとき、いっしょに『恥』をかかなければいけない。‥‥」の一文には感銘をうけた。
0255文字
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