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ギリシア哲学30講 人類の原初の思索から(上)――「存在の故郷」を求めて

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Utsuro
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ネタバレ ギリシア哲学の歴史を、存在と主観性との攻防で読み解く講座の上巻。  本来は集合的無意識というべき自然概念であった存在のみの世界に、主観性がどのように入っていったのかを、解説する内容となる。  この主観性に根差した世界が、「後の技術が人間を生産に駆り立て、その人間が自然を利用するというように、強制的な徴発性を根源に持つ体制こそが、技術の本質であるとする」ゲステル(コトバンクより引用)にまでつながるものだという。
Utsuro

ゼノンの一連のパラドックス(例えば、「もし多が存在するなら、それは有限であると共に無限でなければならないことになる」)は、そうした否定性に基づくものとなる。  一方で、存在と主観性の狭間で揺れ動く哲学者達も存在した。そのなかでデモクリトスの哲学を通して、「理念化の方向と深層への方向は同一の超越的構造内の両極」と指摘する。  その他の論考で興味深いのは、言語と構造にはその対応関係に差異があり、その差異を否定性とする表現。

03/16 09:06
Utsuro

そのため言語で実在を捉えようとする限り、必ず失敗するが、それでも永遠に走り続けなければならないとの指摘(p32)。さらに言えば、掴むものなき否定性や不安定さに耐え通す、本来はハデスの神々の仕事であること(p285)。  「魂の輪廻説は自我の自責意識と永生を希求する自我個体の欲求が裏で手を結んだ主観性の論路の極限形式」(p296)。  対象化できないもの(存在)と、あらゆるものを対象化しかつ操作まで持ち込もうとするもの(主観性)、それぞれとも思い当たるものは無数に散見される。下巻へ続く。

03/16 09:06
4件のコメントを全て見る
0255文字
Οὖτις
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ソクラテス以前の哲学に関して知りたかったのですが、哲学観が変わってしまいました。凄いです。先生の講義を受けてみたいと思いました。
0255文字
バナナ
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どてらい本。読むのに時間がかかったのは内容が難しいのもあるけど、一文一文が在り方を見直す機会な気がして中々読み進められなかったから。数ページ読んでは一旦置いて考える繰り返しの読書だった。
0255文字
Ex libris 毒餃子
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ソクラテス以前の哲学について詳細に論じた本。詳細過ぎて古代ギリシア人かなって思うほど。古代ギリシア哲学の研究者ニーチェやハイデガーを経由して、更に思考を進化させつつ、日下部理論をぶち上げる。うーん、太刀打ちできない。流石、クサカベクレス。『ギリシア哲学者列伝』よりも個人的にはお勧め。問題意識と彼らの思想のインパクト、古代ギリシアにおけるその意義をがっちり把握している。良書。
0255文字
rymuka
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p.30-38 言葉の本性は差異性・否定性。 → http://rymuka.blog136.fc2.com/blog-entry-96.html
0255文字
Gael
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ネタバレ端的に言えば、存在論vs主観主義を存在論の側から俯瞰した本。その対立構造と存在論の価値を味わいつつ、各ギリシア哲学者の主張も一通り知ることができて満足。
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Gokkey
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ディストピア…著者にとって今日の世界は全く魅力がないのであろうか。基本的な論理展開は読了済みのシリーズ・ギリシア哲学講義(晃洋書房)に沿ったものであるが、本書はより詳しく個々のソクラテス以前の哲学者にスポットライトが当てられ、二千数百年前に生きた人たちの人間性などにも考察が及び、読み物としては非常に完成度が高い。しかし冒頭の通り、時折覗く著者の現生否定の言葉が重く、本書の読後感を必ずしも快いものにしないのは大変残念だ。主観性に支配されない世界観は本当にユートピアなのであろうか?またそれは可能なのか?
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孤独な読書人
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ネタバレアリストテレス、プラトン以降の哲学を主観的哲学と見做して、かなり強い批判をしている。 本書ではこの主観的哲学というものについてのしつこく展開されているため、ギリシャ哲学全体を復習的に手に取ったのだが、ちょっと思っていた感じとは違った。
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