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虎落笛(もがりぶえ) (徳間文庫)(Kindle版)

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Schunag
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とにかく第一章の無実の罪で死刑となった男の「死刑執行の日」の描写に圧倒される。死刑の立ち合い人に指名された検事の視点を通じて、死刑囚が独房から引き出され、刑が執行されて死が確認されるまでのほんの数時間を描く濃密な描写があまりに壮絶で痛ましく、このパートは西村寿行の作品のなかでも屈指の名場面だし、「死刑文学」とでも呼ぶべきものの最高峰に位置するのではないか。ここを読むためだけでも本書を読む価値がある。以降はさすがにテンションは落ちるが、この著者の正統的な筆の確かさを再認識させられた。
Schunag

プロット自体は、西村寿行が一連のハードロマン期ののちに追究した「血の遡行」もののひとつ。ただし『血の翳り』などの生来犯罪者説系の作品ではなく、幕末から明治の激動を背景にする不幸な因果の連鎖ということで『修羅の峠』の系統。これがやがて、同時期を舞台とする叛乱の物語たる『虚空の影落つ』『牛馬解き放ち』などにつながってゆくことになる。その「不幸な因果」の軸には寿行的な性暴力があり、これをいつものパターンの繰り返しと見るか、この著者の揺るがぬ世界観・人間観と見るかが評価の分かれ目となるか。

10/01 01:47
Schunag

ただ本書には、男性が己の性欲をコントロールできないということが「原罪」なのだと言い切る箇所があり、そういえば寿行的な性暴力の描き方には、レイプを愛情だと読み替えるような寝言は一切なく、それを通じて描かれていることは、「すべての性行為はレイプである」とするラディカルなフェミニズムの立場とほとんど変わらなかったことに気づく。本書もまた然り。娼婦を乗せた瀬戸内での舟の挿話なども強烈に印象に残る。

10/01 01:49
0255文字
まんだよつお
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無実の罪で処刑された男の過去をさかのぼり、江戸時代から続く女たち6代にわたる暗い血の系譜を明らかにする。こんな話、よく思いつくよなぁ。作者の妄想、想像力にあらためて脱帽。「風が――、風が――、冬の風が――」。
0255文字
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虎落笛(もがりぶえ) (徳間文庫)評価100感想・レビュー2