形式:文庫
出版社:KADOKAWA
形式:Kindle版
フィクションでは冲方丁『マルドゥック・アノニマス』でも、跋扈する悪党共を文字通り「仕切り」、パワーゲームで勝つことではなくゲームマスターとして君臨するための手始めに選ばれたのがフェンス業者を乗っ取ることだった。現実ではお騒がせ大統領として歴史に名を残しそうなトランプもまた、大統領選の時から「壁」を建設することを公約としていた。「壁」は「こちら側」にいる人間の自由や利益を守ると同時に、「向こう側」にいる人間からそれを奪う。
戦争や民族対立、自然破壊等々、人類の黒歴史をうんざりするほど堪能した最後の章では、鉄条網によって隔離されたからこそ見えてきた希望(のようなもの)が紹介され、つくづく現実の複雑さにうなるしかない。アメリカやアフリカの先住民が長き苦難を経て解放された時には、侵略者の手によって故郷の地は跡形もなく蹂躙し尽くされていたのとは逆に、チェルノブイリ近郊や朝鮮半島のJSAは人が立ち入れなくなったことで驚くほど豊かな自然を取り戻しつつある。福島の復興はどこへ向かうのだろう。
追記>石先生はかなり昔に1度(正確には1泊二日)だけ打ち合わせでお会いし、1年ちょっとお仕事でご一緒させていただいた。すごくおしゃべり好きで、ごく短時間しかお会いしていないのに、たくさんのことを教えていただいた。また、氏が著された何冊もの環境史やレポートは、自分の「人と自然」、「人とエコロジー」に対する考え方のベースになった。思えば、自分の人生のなかで最も影響を受けた方のうちの一人。最近、「感染症の世界史」で脚光を浴び、お元気なのをみてうれしくなった。
今月のカドブンでは、こちらのレビューを書かせていただきました。https://kadobun.jp/reviews/581/cc764ebb
じゃがーさん、著者のみなさんには失礼かもしれませんが、「ニッチなジャンルで細々と」が私には合ってるんです。こっそり。
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