形式:単行本
出版社:草思社
個人的に特に面白かったのは、8章の移動しない生物の話。本書全体のテーマである移動を様々な生物種(特に自力で移動しないもの)に対して考察するものとなっている。いくらか知っている事例があり、比較的すんなり理解できた。 植物はなぜ移動しないのか、逆に動物はなぜ移動するのか、そして動物の中にも移動を放棄したように見えるものがいるのか。一見小学生のような問いだが、明確な答えを用意するのは難しい。
進化に対してのよくある誤解に気づけるというのも本書のメリットかも。 「四足歩行から二足歩行になればメリットがあるからそういう風に進化した」と単純化して考えられがちだが、少しずつの変異の積み重ねが生存・繁殖にとって有利でなければいけないと本書では繰り返し述べられている。四肢の生成や二足歩行の進化に関しても科学的に議論すると如何に複雑かと実感させられる。
生物の中で人間だけが、欲のために自らの生存空間を戦争を含む環境破壊にて、自らの生存すら脅かし、目的たる移動を制限する(赤潮青潮を発生させるプランクトンの例もあるが、これも人間の活動の結果ゆえ)。しかしこれも、強制的に宇宙空間へ向かう移動への、本能由来のモチベーションか。
https://honz.jp/articles/-/45123
(中略)まさに移動こそが本書のキーワード。ネタバレになるので詳細は書かないが、移動こそ、意識発生の端緒だった。既述したように、「ポピュラーサイエンス本として、今年度の中では、「カルロ・ロヴェッリの 科学とは何か」に匹敵する傑作。意識の発生論がテーマじゃないが、進化論に根差した説明は、類書には比較にならない意識理解に資する。」実に面白い本だった。
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます