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聖伝 (ルリユール叢書)

感想・レビュー
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黒井
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24-132】良かった、とても良かった。ツヴァイクが描く、人間が正義を行使するにあたっての葛藤にはつくづく胸打たれる。おかげで峻厳な(見方によっては愚かな)選択ばかり選び取るヴィラータの生涯を描く『永遠の兄の目』はちょっと忘れられない作品になった(フィクションではないけどシモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』を読んだ時の感銘を彷彿とさせる)。こうやって心動かされても現実には人が人を裁く世界で他者と関わり合いながら明日からも生きていくのだけど、せめて妥協や迎合を前に立ち止まれる自分でいたい。鳩の羽ばたきを耳に。
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アシモ
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とてもよかった。第三の鳩の伝説。短いけど大河ドラマ。アニメで見たい気も。他の作品も主人公が悩みに悩み続けるところが人間らしい。バベルの塔は昨今の社会と重なる。プーチンは神の意地悪?
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星落秋風五丈原
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「永遠の兄の目Die Augen des ewigen Bruders」(籠碧 訳)はまるで中島敦の「名人伝」のような作品だ。「名人伝」は弓の名手が究極の名手を目指した所、何もかもそぎ落とした状態になる話だ。解説者が「ポジションの移動があるたびかっこいい異名を手に入れている」と称するヴィラ―タは、つまりは何をやっても優秀なのである。だから人の注目を集め、影響力も大きい。彼の行為の中には意図したわけでなくても悪い結果をもたらす事もある。そもそも社会で生きている限り誰にも影響を与えず生きていくことはできない。
0255文字
OHNO Hiroshi
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肉体である身体や物は、借りものであり、いずれは返すもの。聖なるものは時代を超えて、人々に受け継がれる。都市伝説かもしれないが、伝説は確かにある。
0255文字
刳森伸一
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ツヴァイクの諸作から聖伝に関するものを集めた短篇集。伝記小説や心理小説に定評のあるツヴァイクのさらなる一面を見せてくれる好著。各聖伝からはツヴァイクの思想が比較的分かりやすく表出されていると思う。曰く、「戦うな」、「隠れて生きろ」である。戦うたびに弾圧されてきたユダヤ人としての出自を慮れば、その思想にも説得力があるが、一方で根本的な解決を生み出さないものとして映り、アンビバレントな気持ちになるのも事実である。
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ますん
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ツヴァイクの新刊が出るなんてびっくり。相変わらず細やかな心理描写で読ませます。罪とは、神とは、宗教とは、信仰とは。困ったときの神頼みしかしない自分には、こういう神の文化はいつも不思議な世界に思えます。神は人々を幸せにしているの不幸にしているの?
0255文字
hisa
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ツヴァイクはほぼ初読。10年以上前に『人類の星の時間』を読みかけて、気分が乗らず積読に。訳が読みにくかった。ツヴァイクが有名な作家であることは知っていたが、自分にとってはリヒャルト・シュトラウスのオペラ『無口な女』の台本作者のイメージが強い。本書は旧約聖書とインドの聖典に題材を得た中短編4作が収録されている。全く無名な者(動物も!)に焦点を当て、生き生きとした物語が語られる。宗教的な話でありながら、時代を超えた視点を有するがゆえに古臭さは全くない。とても充実した読書時間でした。
hisa

ツヴァイクがユダヤ人であることから、神に対して敬虔な態度の持ち主かと勝手に思っていたが、短編『バベルの塔』で人類の探求心と連帯の精神を称揚しつつ、それを邪魔しようとする神との闘いも辞さない姿勢に意外性を感じた。

12/02 00:32
やいっち

そういえば、放送部に好きな子がいたんだが、我輩が懸命にやった競技なのに、名前を間違えやがって、くそ!

12/02 00:55
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nightowl
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「ノアの箱舟」の鳩の行方から平和への祈りを物語る「第三の鳩の伝説」、兄を殺した男に心の平穏は齎されるのか「永遠の兄の目」、彷徨えるユダヤ人の聖具もまたあちこちを彷徨う「埋められた燭台」、人類と神の闘いは終わりないことを綴るショートショート風エッセイ「バベルの塔」を収録。「埋められた〜」は流浪人気質を持つ者にとってかなり響くものがある。哲学的境地に達した傑作。また、巻末解説を読むと「永遠〜」はたとえば政治的活動を避けることなど、ツヴァイクの無為の精神を表しているらしい。「朱雀家の滅亡」同様耳が痛い...
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まどの一哉
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「埋められた燭台」:ローマにひっそりと暮らすユダヤ人たち。侵略者に奪われた聖なる燭台の行方をこの目で確かめるため旅立つ7人の老人。そしてその記録を持ち帰るため同行する1人の少年。この魅力的な設定だけでもう物語の渦に巻き込まれてしまう。まさに作者ツヴァイクの人気作家としての腕だが、かと言って丁々発止の冒険が描かれるわけではなく、あくまで聖なるものと共にあろうとする信仰厚き人々の変転を追っていく。
まどの一哉

やがて同行した少年は老人となり、侵略者から戻されて祖国の権力者の手に渡った燭台を追いかけるが、「自分を生かしておいた神の意志がなにかあるはず」と信じて皇帝に立ち向かって行く。この老人の行動が実にスリリングで、エンターテイメント的なところはまったくないにもかかわらず、目を離すことができない。いや仕掛けは十分エンターテイメント的なのだが、それに気がつかないほど内容が迫真的。これが信仰だ。

11/04 21:06
まどの一哉

マイノリティとして生きる人々の心の支えとは言え、聖なる物にそこまでこだわることが正しいのかどうかは、考えてしまうところだが、理由を問いただすものではなく、どんな伝統社会にも大切なものはあるのだ。

11/04 21:06
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あさうみ
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とても良い…素晴らしい珠玉の短編集です。創世記をベースにし、おとぎ話のような楽しみのなかに「正しく生きるには」と問い続けて、読者の目を、心をひらかせる。戦争で苦難を強いられたユダヤの目線だからこそ。迫害の中で誰よりも平和を願い、生きるための希望を探し続けた…胸がいっぱいになります。解説まで逸品です。人生で出会えて幸せな一冊。
0255文字
青柳
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伝記作家ツヴァイクによる「宗教伝説」を題材にした作品集です。訳者の方針として「聖伝」の中でも、「戦争と平和」をテーマとした作品集になっています。どれも秀作揃いですが、個人的には「埋められた燭台」のストーリーに感動致しました。ディアスポラ(文学)を平和小説へと昇華させる話の巧みさはツヴァイクならではですね。ただ、一点悲しいのが現在、ツヴァイクが「埋められた燭台」に託した思いと裏腹にイスラエルのガザ攻撃が激化していることです。ユダヤ人のツヴァイクがもし生きていたら今のイスラエルについて何を思うのでしょうか…。
青柳

あと、本作は解説と訳者解題にもかなり力が入っていますね。ルリユール叢書の作品はネットのnoteという記事発表サイトにて無料公開されているので、購入を検討されている方は、まずそちらのnote記事を読んでみて判断されるのが良いかもしれません。こういった出版社の心遣いも含めて、やはり完成度の高いアンソロジーになっている気がしますね。全ての読書好きの方にお勧め出来る良い本だと思います。

12/16 19:43
青柳

最後に一点だけ補足事項を。解説にも書かれていますが、基本的に本書は大昔にツヴァイク全集などから出た作品を収録しており、今ではどれも読むのが困難になっています。ただし、「第三の鳩の伝説」のみポプラ社の百年文庫「罪」のアンソロジーに収録されており、ツヴァイクの短編の中では比較的手に取りやすい作品となっています。他三作はやはり大昔の全集を漁る必要があると思うので、そういった意味でも本書はツヴァイク作品に触れる良い機会となる作品集だと思います。

12/16 20:14
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