形式:単行本
出版社:明石書店
著者のアリス・ロバーツは、「人類学者。バーミンガム大学教授(「科学への市民の関与」講座)。1973年イギリス生まれ。テレビ番組の司会者や著作家としても知られ、BBC2で人類進化をテーマとするいくつかのシリーズに出演」という方。『人類20万年 遙かなる旅路』は広く読まれたようだ。
本書は書店で発掘したのだが、訳者が斉藤 隆央という小生には何冊も手にしてきたということも、安心して選ぶ材料になった。
結局のところ、高い栄養価に目をつけて、長期的な視野に立っていたわけではなく、試行錯誤の結果で、ミルクでダメなら一度発酵させてチーズにして食っちまおうとか、いろいろやってるうちに「乳糖耐性」を身につけて生乳も楽に消化できるようになったんだから、どっちが飼いならしてるのかわかんない。それよりも、見るから手にとって食べて栽培したくなるリンゴと違って、なんで硬くて粒も小さな地味な草でしかない稲に目をつけ、土の中から毒も持つ塊茎を探して掘り出して食したものだと、われわれの祖先のやぶれかぶれの創意工夫に驚いてしまう。
ネアンデルタール人やデニソワ人との交雑もそうだけど、頭にあるのは性欲と食欲で、結局の所、一緒にダンスできる相手となら、どんな相手とも踊ってきたのであり、いま問題になっているのは、われわれが飼育栽培化できなかった、その他の種の今後の運命ということになる。野生種と言っても純粋で孤立した種などおらず、家畜化したものの交雑が見られ、相互に関係している。最後のヒトの自己家畜化の議論は一面的で、恐ろしいほどの悪意に満ちた能動的な攻撃性には触れず、寛容になったと語るだけで、ランガムの『善と悪のパラドックス』の方がいい。
イネでは、中国の遺伝学者が「ネイチャー」に発表した研究成果(ゲノムワイド解析)や、「サイエンス」に発表された考古学の論文(江西省仙人洞の土器片が約2万年前のもの)は普通に紹介されているので評価に値するものだったようです。でも中国はまだまだいろんなものが出てくるでしょうから、オープンにしてほしいという本音はあるはずですよね。
あぁ、ニワトリでも…。ありがとうございます。正直、学問の世界でデカップリングは願い下げなんですが、ルイセンコの前例などを見ても支配イデオロギーにすり寄ってしまうものなんですね、人間のやることですから。
次の病気や気候変動のショックに、人間が飼い慣らし多様性が減っている動植物や、それに飼い慣らされている人間自身は耐えられるのか
人間が自然を支配しコントロールしているというのは思い上がりで、実際には数えるほどの数種しか飼育栽培化できていないし、飼育栽培化された動植物との共依存の中で偶発的にすすんできたこと。遺伝子組み替えなどによって、短期的な視点で最適な種を生み出したとしても、遺伝的多様性が先細って環境の変化などに対応しにくくなってしまう。人間にできることは、遺伝的多様性を維持しながら、動植物と共依存していくという意識で長期的な持続可能性を探っていくこと。
⇒なぜどうやって飼いならしたかということ。ウマの章でヒトがはじめて飼いならす様を描いたシーンが印象的だった。最後の章でヒトはこれらの動植物を飼いならしていることで、ヒトは図らずも自分たちを家畜化してしまったという考えは刺激的である。
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