形式:単行本
出版社:中央公論新社
オリノコ超重質油の開発が進んだのはチャベス政権前の90年代に外資の資金と技術力を遣ってオリノコ超重質油開発を進めようと優遇的条件で外資誘致を進めた結果である。166頁。国全体の産油量を維持して行くには超重質油の改質や希釈を安定的に継続できる事、つまり改質設備のメンテナンスや希釈用石油の輸入が条件となり、そのためには追加資金(特に外資)が必要になる。169頁。チャベス、マドゥロ両政権期の石油政策の背景には、根強いナショナリズムと反米主義がある。石油産業の経営は国家が支配し米国依存から脱却すべきという考え方だ
252頁。冷戦の終結、ソ連・東欧体制の崩壊、南米の権威主義体制の民主化達成などにより、20世紀の終わりには、資本主義と民主主義の勝利が確立したかのように思われたが、21世紀に入ると、世界各地で民主主義に影が差し始めた。選挙の実施はもはや民主主義のメルクマールにはならなくなった。政権奪取を担うクーデターではなく、選挙で国民の負託を受けた政権担当者(大統領)自らの手によって、民主主義が弱められている。それはベネズエラや南米諸国、途上国に限った話ではなく、米国や先進諸国でも兆候が見られる。日本はどうだろうか。
ただ、何故そのような異形の政権が実現したのか、という分析は物足りない。チャベス以前の二大政党による「成熟した」民主主義も、仔細に見るなら与党が肩入れした途端に大統領候補の人気が急落するほど不人気であったし、オイルマネーが外資に流出する経済構造も国民の不満を呼んでいた。こうした背景への深堀りがないと、単に狂人が天下を取って人々を苦しめました、というストーリーに読み替えられてしまうのではないか。
「資源ナショナリズム」という言葉は、それら資源国に対する外からのレッテル貼りでは?とも思うのだが、実際のところどうなんだろう…
ベネズエラの現状について、「混乱しているらしい」くらいの軽い認識でいたが、ここまで酷い状況だとは。もちろん、「チャベス・マドゥロが悪い」みたいな単純過ぎる理解は慎むべきだが。アメリカがバイデン政権となって、何か変わっていけるのだろうか。
不安定な政府と、ドゥダメルのような音楽家と。今一つ分からない国です。興味深い内容ですね。
ベネズエラは豊かな音楽を持った国(友人に現地ミュージシャンと交流しながらベネズエラ音楽をやっている者がいます)なんですが、その辺もう少し書いて欲しかったなとも思っています。また、オバマがチャベス以降のベネズエラと関係の深いキューバとの関係改善に向かったのに、トランプがそれを逆向きにしたことも触れられていませんでした。そういったところに何か意図を感じました。よく調べられた本なんですが。
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