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ベネズエラ-溶解する民主主義、破綻する経済 (中公選書 115)

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海が見える
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ベネズエラという国が経済的にも政治的にもここまで崩壊している国だとは知らなかった。民主主義が民主制を利用することにより独裁政治を許すという、民事主義の根本的な欠陥が表出した国がこのベネズエラなのかもしれない。貧困層を味方につけたチャベス政権が、いつからか利権を巡る争いに終始し、二つの国会が生まれ、二人の大統領が生まれ、政局は混乱を極めていく。そして、誕生した独裁政権下では、食糧も医療も全く足りない国家が誕生した。民主主義の是非が問われている現代において学ぶべきところが多い。
0255文字
穀雨
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1999年のチャベス大統領就任以前からベネズエラ地域研究に携わってきた著者が、チャベス・マドゥロ両政権下のベネズエラ事情を政治・経済・社会・石油・外交など多角的な観点から分析している。2013年にマドゥロ政権になってから国内情勢が急激に悪化したため、表面的にはマドゥロ大統領がその元凶のように映るが、著者はチャベス政権時代の放漫財政や無理な経済政策が原因で、そのタネはすでにまかれていたと繰り返し指摘する。本書刊行から4年が経過するが、なおマドゥロ政権がまかりなりにも存続できている理由を知りたくなった。
0255文字
人生ゴルディアス
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よかった。ありがちな時系列後追い本ではなく、政治、社会、経済それぞれについてなぜそうなったかの深掘りがなされていて満足。個人的に、破綻資源国家にありがちな「なぜ資源産出量が激減するのか?」に丁寧な説明が加えられていたことがよかった。国有化→人事介入→人材流出→技術・メンテの遅れという流れ。またベネズエラ原油特有の性質からくる問題などもあってよりわかりやすかった。今は皮肉なことにその性質のおかげで米国がどうしても欲しい軽油を量産できるため、ガイアナを襲ったりやりたい放題。
0255文字
coolflat
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244頁。マドゥロ大統領はチャベス大統領が成し遂げられなかった「ボリバル革命」を忠実に推進すべく、後継者として指名された。マドゥロの政治理念や政策には基本的には、チャベスの路線をほぼそのまま踏襲しており、厳しい状況下でそれを死守しようとするがゆえに、政治は権威主義化を深め、経済は破綻へと向かった。そのためマドゥロ期の諸政策を理解するにはチャベス期に立ち返る必要がある。またマドゥロ期に加速的に悪化したインフレ、モノ不足、外貨不足などの問題はマドゥロ期に始まったものではなく、チャベス期に既に顕著になっていた。
coolflat

オリノコ超重質油の開発が進んだのはチャベス政権前の90年代に外資の資金と技術力を遣ってオリノコ超重質油開発を進めようと優遇的条件で外資誘致を進めた結果である。166頁。国全体の産油量を維持して行くには超重質油の改質や希釈を安定的に継続できる事、つまり改質設備のメンテナンスや希釈用石油の輸入が条件となり、そのためには追加資金(特に外資)が必要になる。169頁。チャベス、マドゥロ両政権期の石油政策の背景には、根強いナショナリズムと反米主義がある。石油産業の経営は国家が支配し米国依存から脱却すべきという考え方だ

06/15 21:09
coolflat

252頁。冷戦の終結、ソ連・東欧体制の崩壊、南米の権威主義体制の民主化達成などにより、20世紀の終わりには、資本主義と民主主義の勝利が確立したかのように思われたが、21世紀に入ると、世界各地で民主主義に影が差し始めた。選挙の実施はもはや民主主義のメルクマールにはならなくなった。政権奪取を担うクーデターではなく、選挙で国民の負託を受けた政権担当者(大統領)自らの手によって、民主主義が弱められている。それはベネズエラや南米諸国、途上国に限った話ではなく、米国や先進諸国でも兆候が見られる。日本はどうだろうか。

06/15 21:10
9件のコメントを全て見る
0255文字
Megumi
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ベネズエラの現在について、チャベス前大統領の思想や政策に遡り、マドロ大統領にどうやって引き継がれていったのか、そして民主主義がどうやって崩壊し、経済が破綻していったのか。治安悪化や経済制裁、難民保護まで、データに基づきとてもわかりやすく論じられいる。ベネズエラを理解するために必読の良書と思います。
0255文字
ばろっさ
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仕事の絡みでベネズエラに興味が出たため。 チャベス、マドゥロ政権の政治情勢、国内情勢を詳述。
0255文字
yusaku hanada
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混乱の背景を直近で見えている範囲のみだけでなく、過去との繋がりで説明がされていて、非常に説得力があった。また、エピローグに記載されていたが、執筆の意図がハッキリしていてベネズエラへの愛情が伝わった。
0255文字
Toska
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「苛政は虎よりも猛し」とは21世紀においても真理なのだと思い知らされる。チャベスが高い理想とカリスマの持ち主であったことは著者も認めている通りだが、異論や抵抗の可能性を人為的に排除してしまったことが恐ろしい結果につながった。独裁国家のみならず、「力強いリーダーシップ」に幻想を抱きやすい全ての人々に対する警鐘であろう。治安悪化が経済不安だけに起因するとは限らず、政治的要因(対立の先鋭化など)も大きいという指摘は鋭い。
Toska

ただ、何故そのような異形の政権が実現したのか、という分析は物足りない。チャベス以前の二大政党による「成熟した」民主主義も、仔細に見るなら与党が肩入れした途端に大統領候補の人気が急落するほど不人気であったし、オイルマネーが外資に流出する経済構造も国民の不満を呼んでいた。こうした背景への深堀りがないと、単に狂人が天下を取って人々を苦しめました、というストーリーに読み替えられてしまうのではないか。

01/07 10:00
Toska

「資源ナショナリズム」という言葉は、それら資源国に対する外からのレッテル貼りでは?とも思うのだが、実際のところどうなんだろう…

01/07 10:03
0255文字
Aminadab
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著者はアジア経済研究所所属で、チャベス(1999~2013年)・マドゥロ(2013年~)両政権ができる前からベネズエラを専門にしてきた人。1959年の民主化以来安定した二大政党制の下で民主政治を続けてきたこの国が、1990年代に入って、産油国の潤沢な外貨収入があればキューバ式の社会主義ももしかしたらたちゆくのではないか、という国運を賭けた実験の誘惑に乗ってしまう。しかし、商品ブームの2000年代にもすでに破綻を生じ、2010年代には総人口の4分の1が出国するに至る。いま現在日本語で読める概説書ではベスト。
0255文字
Yuji
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地域で最も裕福で民主主義国家であったベネズエラがいかに経済破綻し独裁化したか 1999年就任チャベス大統領は憲法改正 司法をコントロールし国会を通さずに法案を通す 当初石油価格の高騰、経済成長 2007年電力、通信、石油、セメント、農地、土地不動産国有化→生産、投資が大幅に減少 選挙に指紋スキャナー 福祉も政権支持者のみに 軍人警察官政権への忠誠度問われ腐敗化 マドゥロ就任後食糧医薬品不足、ガソリンも輸入頼りに ハイパーインフレ、仮想通貨とドルに移行 難民多発 キューバがイデオロギー面で最大のパートナー
0255文字
ナン
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チャベス時代の政策やベネズエラの今の混迷について、わかりやすく書かれており良書。石油収入を背景とした社会開発などチャベス政権時代の政策については何となく肯定的に考えていたが、それらが今の混迷につながっていることがわかったのが一番の収穫。掲げていた理想がどんなに素晴らしくても、今のひどい状況を見るとハイエクの『隷従への道』を地で行くよう。経済左派的政策と参加民主主義は、今の日本にも必要ではないかと思ってはいるが、残念ながらこれは一つの失敗例として参考になるかもしれない。
0255文字
レフ
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良書。
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BLACK無糖好き
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混迷するベネズエラの内情をコンパクトに詳説。チャベス前大統領の政権運営に根本的要因があるという。注目したのは以下2点。①石油政策:ベネズエラ国営石油会社は投資よりも国庫への資金提供が優先され国の債務の肩代わりもさせられ、メンテナンス不足などによる稼働率の低下から産油量が大きく減少した。②軍の政治化:チャベス、マドゥロ両政権に忠誠を誓う軍人に経済的恩恵の大きいポストを割り当て、政権に批判的な軍高官は逮捕される。キューバの協力を得て軍内部へのインテリジェンス活動強化。◇ハイパーインフレの怖さも衝撃的。
0255文字
KappaKappaPog
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ベネズエラが好きなゲームの舞台のモデルになっていると小耳にはさんだのでこの本を読んでみた。 予想を遥かに上回る壮絶さであった。 始めは強権的な政治で良い面も見られたが、あとで出てくる綻びがとんでもない。国内産業はほとんど死ぬわ借金返済で首が回らないわ生活に必要な物資すら確保できなくなるわ治安がひどすぎて赤信号でも止まらないように勧められるわ… ゲームの描写よりもすごかった。
0255文字
zuisei
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民主主義の伝統があり、豊富な石油資源もある。そんな国があっという間に国家破産する。なぜだろう。この本はいろいろな資料から全体的な歴史的経過を描く。研究レポートのような内容で、鋭さや現場感はない。独裁権力は国民を不幸にする。最初は理想から出発しても、すぐに自分たちの利益に集中するようになる。経済の自由を失うと、国家は独裁化する。評価3。
0255文字
manatee
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この国の歯止めの効かない滑落に心を痛める一人。スペイン語を学び、ラテンアメリカを知り、エルシステマという教育に出会って、私の軸になったから余計に。生きているうちに行ってみたい、安全なベネズエラへ。
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やぶやぶ
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★4 よく分析されていて、その分析内容が素人の私にも分かりやすかった。
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スコットレック
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秋田魁新報の書評コーナーで紹介されていたのを見て興味を持ち購入。治安が良くない、優秀なキャッチャーを多く輩出している国(MLB)、という(個人的な感想です)漠然としたイメージしかなかったベネズエラ。かつては有数の産油国として裕福であった国が、チャベス→マドゥロというリーダーの下でどのように変わっていってしまったのか。著者の方(女性。最後に気づいた)が丁寧に解説されています。ベネズエラではビットコインの使われ方、捉え方が日本と異なる等、日本にいると中々知ることのできないベネズエラの事情を知る事ができます。
0255文字
ryo
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日本の真裏に位置するベネズエラ。私も本書を読むまで、チャベス大統領の名前ぐらいしかよぎらず、あまり我が国では話題に上がる国家ではないだろう。しかし、本書では今のベネズエラに何が起きているのかを理解することができるし、なおかつ民主主義が崩壊していく様が記述されていく。たとえ民主主義体制であったとしても、政治家が腐敗する、汚職が跋扈する様な国家であれば、「革命」が起きざるを負えないのかもしれない。それは、我が国でも例外ではない。
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Myrmidon
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面白い、というとベネズエラで苦しい状況に置かれている方たちに失礼なのだが、興味深い内容であるのは間違いない。法の支配など民主主義制度の破壊、インフレ率13万%・3年でGDPが半分になるなど経済の崩壊といった、現在のベネズエラの混乱の原因を、チャベス・マドゥロ政権の政策が主因であると指摘し、歴史的経緯、人物像、各種政策や外交など、かなり包括的に概説する。チャベス・マドゥロ政権に対してかなり批判的に書かれているが、内容を見れば「貧困・格差の縮小」以外はほぼ誉める点がないように見えるため、妥当な評価と思える。
Myrmidon

ベネズエラの現状について、「混乱しているらしい」くらいの軽い認識でいたが、ここまで酷い状況だとは。もちろん、「チャベス・マドゥロが悪い」みたいな単純過ぎる理解は慎むべきだが。アメリカがバイデン政権となって、何か変わっていけるのだろうか。

03/13 15:23
0255文字
Go Extreme
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チャベスと「ボリバル革命」:社会の二極化 チャベス大統領の復権 政権の地盤固め 垂れ込める暗雲 チャベスなきチャビスモ、マドゥロ政権:ふたりの大統領 実効支配をめぐる攻防 革命の主人公たち:チャベスの政治思想の源泉・人物像 ニコラス・マドゥロの人物像 ボリバル革命と民主主義:民主主義の変質と権威主義化 国家経済の衰亡:財政支出の際限なき拡大 経済活動への国家介入の拡大 石油大国の凋落:ベネズエラ石油産業の技術的特徴 社会開発の幻想:ミシオン 貧困・格差の解消と社会開発 治安 国際社会のなかのチャビスモ
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つまみ食い
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20世紀後半では世界で一二を争う石油輸出国であり、南米の中でも安定した民主体制と経済状況を誇ったベネズエラが2010年代では3年でGDPが半分になり国民は文字通り衣食住に苦しむ状況に陥ったかについて、チャベス政権とその後継のマドゥロ政権の政治・経済・社会状況を軸に論じている。エリート批判と中下流層の政治参加を謳い政権を取ったチャベス政権とそれを継いだマドゥロ政権が結果自らに忠誠を誓う軍人・政治家・企業家を重用しかつて自らが批判した社会以上に二極化し格差が開いた社会を生み出したというのはあまりにも悲惨な皮肉
0255文字
み
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地域研究の本にしては珍しく一気通貫で読むことができた。興味深い内容。「大統領とその周辺の政治エリートに権力が集中するチャベス、マドゥロ両政権期の政治のあり方が民主主義を溶解させたこと、そして意志決定が一元化し、大統領の周辺に苦言を呈したり多様な意見を進言する者がいなくなるなか、…」(247頁)
0255文字
ごはんたべたい
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すごくよく調べられているな、という印象。ただ、この地域の大きなプレイヤーであるアメリカとの関係や、それによる影響の部分があまり書かれていなくて、そこと経済破綻の関係が今ひとつわからなかった。
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skunk_c
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チャベス期から現在のマドゥロ政権下の混迷するベネズエラ情勢を分析した労作。現地滞在歴も豊富な専門家らしく、詳細なデータに基づく論考で、特に近年の困難な状態については胸を打たれる。が、敢えて複眼的に見れば、本書だけでこの国の置かれた立場が分かったと思うことの方が危険かもしれない。チャベスが高い支持によって政権を奪取し、「貧困の解消」という目標をある程度達成したここは本書にもある。しかし、なぜチャベスが政権を取れたかは前政権の状況如何だと思うが、その点の記述は薄い。むしろポピュリズム的手法の勝利という印象だ。
曲月斎

不安定な政府と、ドゥダメルのような音楽家と。今一つ分からない国です。興味深い内容ですね。

01/28 02:15
skunk_c

ベネズエラは豊かな音楽を持った国(友人に現地ミュージシャンと交流しながらベネズエラ音楽をやっている者がいます)なんですが、その辺もう少し書いて欲しかったなとも思っています。また、オバマがチャベス以降のベネズエラと関係の深いキューバとの関係改善に向かったのに、トランプがそれを逆向きにしたことも触れられていませんでした。そういったところに何か意図を感じました。よく調べられた本なんですが。

01/28 04:03
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ベネズエラ-溶解する民主主義、破綻する経済 (中公選書 115)評価89感想・レビュー26