形式:単行本
出版社:早川書房
形式:Kindle版
そうか、彼の行った場所は桃源郷のような所なんだ…。穏やかな自然に恵まれ、若い男女がこういう選択を出来て、社会全体でこどもを見守り育てる。「挿し穂」(原題)が色んな所で育つといいな、と思える素敵なお話でした。
映画の好きな神父さんが出てきて、映画の話をするのですが、その映画がタルコフスキーやアントニオーニ、ベルイマンと何とも映画好きの気持ちをくすぐります。女の気持ちを知るにはアントニオーニというところは笑えました。ええ、そうかも。
女性が自由になると男も自由になれるのかもと思わせるところがある。聞くところによると、アイスランドの女性の社会的地位はずいぶん高いらしい。でもラグナル・ヨナソンのミステリーに出てくる女性警部フルダさんは、職場でも家庭でも、男にひどい目にあっていた。実際のところのアイスランドの人の生活、どんなものなのかしらと、思ったのでした。
子どもの名前「フロウラ・ソウル」自体にも何か象徴的な響きを感じる。アイスランドの国情にも疎かったのだが、本書の役者あとがきや巻末のアイスランド文学研究家の朱位昌併氏による解説もあって、良い読書体験になった。
女性への男性の構えに妙に納得。「思いがけない質問や、面倒そうな頼みごとをされたときは用心しないといけない。女性っていうのは、たいていこちらの知らぬ間に計画を立てたり、手はずを整えたりしているから」。そうそう!
ロッピが再生させていく薔薇園のイメージが素晴らしい。『秘密の花園』を思い出す。庭の再生が自分の再生になる。料理も印象に残った。肉三昧の下心込の宿屋の食事。父が不器用に作る亡き妻のレシピ。アンナと娘のために、ロッピが少しずつ身につけていく料理。娘フロウラによって村の人々もまた、なにかをよみがえらせていく。
溶岩土壌で植物を育てる大変さ。アイスランドに姓はなく父称(母称)。男はみんな〜ソンて、女はみんな〜ドッテイル。
トマス神父が紹介してくれる映画、ロミー・シュナイダーとか、懐かしい名前がいっぱい出てきて、神父の蘊蓄をもっと聞きたかった。さて、後半の舞台となった修道院はイタリアかなぁ。あぁ、行きたい‼️
八弁のバラ、あるべきところで咲いたんだ。
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