形式:新書
出版社:岩波書店
形式:その他
出版社:Audible Studios
チャリティという賛否が分かれそうな主題に対し、素晴らしくバランスの取れた記述。ただ、全編を通して「イギリスのチャリティ」を追いかけてきたはずが、最後の最後でチャリティそのものの評価を問うようなまとめ方となってしまったのが遺憾ではある。いくらイギリスのチャリティに見どころがあろうとも、制度的に取り入れられるような性質のものではないと思うので。
「本書では、特別に説明の必要な人文社会科学の概念や理論をできるだけ用いないようにした。そのような概念と理論を参照していないわけでも否定しているわけでもない。むしろ、私の思考をいくつもの局面で導いてくれた。にもかかわらず、それらの使用を避けたのは、たいていの歴史事情はふつうの散文で表現できると信じているからである」(231頁)。その意気やよし。確かに読みやすいし分かりやすい。
武器商人や奴隷商人とされる人物が、片やチャリティに熱心だったという事例の小括が面白かった。 「完全無欠の聖人によってなされるような慈善こそ、歴史上、見つけるのが難しい。チャリティは、欠点のあるふつうの人間が行う営為である。」(176頁)
第一次大戦終結後の1919年に組織された民間の慈善団体は11,329団体に上る。 自国に留まらない、国際的人道支援は敗戦国の困窮した子供を対象とする「セーブ・ザ・チルドレン」基金(女性が中心になって始めた)が嚆矢となっている。
健全な市場経済と適正な財の再分配を実行し、社会正義を保障する行政の二重のセーフティネットの下で人々が自由であり続ける「完全」な福祉国家、あるいは完璧な計画経済と強力な行政の下で人々が平等であり続ける「完全」な社会主義国家、この二種類の政体だけがチャリティ的なものを不要にすることができるであろう(p.225)
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